C・J・チェリイ
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しかし他にはもっと懐疑的、あるいは魔法が全く存在しないロー・ファンタジーとして The Paladin なども書いている。実際チェリイの Russian シリーズは歴史ファンタジーとでも言うべきもので、魔法的な力の危険についての教訓話として読むことができる。1996年の作品 Lois & Clark: A Superman Novel はテレビシリーズとのタイアップであり、スーパーヒーローものと恋愛ファンタジーの融合である。

短編集 Sunfall は終末ものである。シェアード・ワールドのシリーズ Merovingen Nights は、「剣と惑星」もの(異星人の住む惑星で地球人の主人公が活躍するファンタジー)の伝統的スタイルを踏襲している。1981年の Wave Without a Shore はテクノロジーよりも哲学的な関心が高い、いわゆるソフトSFの一種である。2004年の Forge of Heaven はポストサイバーパンクから多くの影響を受けている。また、ホラー小説の要素を取り入れた作品も多く、Voyager in Night、Finisterre シリーズ、Russian 三部作などがある。
世界構築

チェリイは、言語学歴史考古学心理学といった知識を背景として、極めて写実的に架空世界を描く。チェリイの処女作の序文でアンドレ・ノートンJ・R・R・トールキンと比較し、「この Gate of Ivrel のように物語にのめり込んでしまったのは『指輪物語』を読んで以来だ」と書いている。また、「彼女の科学と民話の混合は、トールキンジーン・ウルフに匹敵する知的な深さを小説に与えている」という書評もあった[5]。チェリイはもっともらしい地球外生命の文化、種属、予想を生み出し、読者に改めて人間の本質を考えさせる。チェリイは構築した世界を説明せずに暗黙のうちに示すため、複雑さと写実さが際立ち、賞賛されることになる。また、異なる言語間で概念を翻訳したり説明することの難しさを描いている。その最たる例は、Chanur シリーズと Foreigner シリーズである。

チェリイは小説の中の異星人社会を生み出すプロセスを、その社会について色々な質問を考え、その答えが異星人の文化の様々なパラメータを反映するように考えることだと述べている。チェリイによれば、「文化とは、生物が環境に反応し、暮らしをよりよくすること」である。知的異星人種を詳細に描くにあたって、チェリイは以下のことが重要だとしている[6]

その種が住んでいる物理的な環境

その種の家屋の位置や性質。家屋同士の空間的関係。

その種の食べ物、食べ物を得る方法と食べ方、食事にまつわる習慣。

その種が知識を共有する際のプロセス。

に関する習慣と考え方、同属の死の扱い方、来世をどう捉えているか。

「自己」および彼らの住む「宇宙」をどう捉えているかという形而上学的問題。

作風

チェリイの描く主人公は既存の社会の構造や基準を守ろうとし、敵は利己的な目的で既存の社会秩序を利用したり、破壊しようとしたり、大きく変えようとすることが多い。また、アウトサイダーが社会での居場所を探し、個人が互いにどのように関わっていくかをテーマとすることもある。軍事や政治をテーマとする作品もある。多くの作品の底流にあるのは、性的役割の探求である。チェリイの描くキャラクターは性別に関わらず長所も短所もさらけ出すが、女性主人公は特に有能で決断力があることが多い。

さらに、チェリイの描く男性は肉体的または精神的なトラウマを抱えており、精神、そして記憶になんらかの障害があることが多い。『ダウンビロウ・ステーション』のジョッシュ・タリー、Merchanter's Luck の Sandor、『リムランナーズ』のNGことラミー、Tripoint のThomas、『サイティーン』のジャスティン・ウァリックなどが例として挙げられる。Heavy Time の男性主人公は親友である女性が殺される現場を目撃して発狂する。
日本語訳作品一覧と受賞歴

《色褪せた太陽 (The Faded Sun)》三部作

ケスリス(1982年) Kesrith (1978)

ションジル(1982年) Shon'jir (1978)

クタス(1982年) Kutath (1979)


ダウンビロウ・ステーション(1985年) Downbelow Station (1981)
ヒューゴー賞 長編小説部門(1982年)[7]

サイティーン(1993年) Cyteen (1988) ヒューゴー賞 長編小説部門(1989年)[8]ローカス賞 SF長篇部門(1989年)[8]

リムランナーズ(1993年) Rimrunners (1989)

短編

カッサンドラ(1980年) Cassandra (1978) ヒューゴー賞 短編小説部門(1979年)

作品賞以外の受賞・表彰歴

ジョン・W・キャンベル新人賞 ? 1977年

ニューイングランドSF協会

E・E・スミス記念賞(スカイラーク賞) 1988年


Oklahoma Book Award

Arrell Gibson Lifetime Achievement Award 2005年


小惑星 (77185) チェリイ - 2001年3月20日に発見され、チェリイの栄誉を称えて名づけられた。

1998年ボルチモアで開催されたワールドコンに主賓として招待された。

参考文献

The Cherryh Odyssey (2004,
ISBN 0-8095-1070-7; ISBN 0-8095-1071-5), (編)Edward Carmien。チェリイの作品や作風に関する学術論文を集めたもの。書誌情報を含む。

東ニューメキシコ大学の Jack Williamson Science Fiction Library には、チェリイの原稿や研究ノートのコレクションがある[9]


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