BiCMOS
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汎用ロジックIC(はんようロジックアイシー)とは、様々な論理回路に共通して必要とされる個々の機能を1つの小型パッケージにまとめた小規模な集積回路である。

ANDゲートORゲートNOTゲートNANDゲートNORゲートExORゲートといったゲート回路や、フリップフロップカウンタレジスタシフトレジスタラッチエンコーダ/デコーダマルチプレクサ/デマルチプレクサ、加算器コンパレータといった簡単な論理機能ブロックなどのデジタル回路が主体であるが、そういった論理回路だけでなく、バッファインバータといった論理というよりは駆動電流を増強するアンプの役割をする回路も含まれている。

また、場合によっては、電気的なスイッチであるアナログスイッチや、アナログマルチプレクサ、発振器あるいは位相同期回路(PLL)など、ほとんどロジック(論理)と呼べないアナログ回路に属するものも含める場合もある。74シリーズのTTL IC及び互換CMOS ICの例。手前よりテキサスインスツルメンツ製74LS00、日立製74S138、東芝製74HC163。
シリーズ

汎用ロジックICは、電源電圧や入出力インターフェースを統一した製品群として開発されている。この製品群は「シリーズ」もしくは「ファミリー」と呼ばれることが多い。

汎用ロジックICのシリーズは、米テキサス・インスツルメンツ社が開発したTTLの7400シリーズ(英語版)と米RCA社(当時)が開発したCMOS4000シリーズおよび米モトローラ社(現・オン・セミコンダクター社)が4000シリーズを独自に拡張した14500シリーズ(英語版)が有名である。これらは、事実上の業界標準(デファクトスタンダード)である事から、「標準ロジックIC」と呼ばれることが多い。

こういった各製品シリーズは機能毎に部品番号が付けられており、動作条件の差異は数字に付加する記号で表している。すなわち、番号を特定すれば論理的な仕様が特定されて、各端子に対する機能割り当てであるピン配置も定まる。

ただし、基本的に番号に規則性はなく、例外的なピン配置のICも多数あるため、機能を参照したい場合は規格表やメーカーが提供するデータシートを見る必要がある。規格表は、CQ出版社より『汎用ロジック・デバイス規格表』[1]として出版されているものが広く用いられている[注 1]

1990年代以降は、汎用ロジックICが使われる場面は少なくなっている。これは、安価なワンチップマイコンASICやユーザが自由に書換え可能なプログラマブルロジックデバイス(PLD、FPGA)の普及、基板実装の高密度化、信号の高速化などによる。その一方で、近年は1つまたは2つなどの少数の論理回路をパッケージングしたシリーズや、小型化・高速化・低電圧駆動・低消費電力などの機能強化を進めたメーカー独自の汎用ロジックICのシリーズの開発が進んでいる。また、パッケージも従来のDIPからSOP、SSOPなどの表面実装型へと主流が移り変わっている。
飽和形

ON状態のときトランジスタを飽和領域で使用するものである。
TTL以前

RTL(
Resistor-transistor logic)最初期の論理回路。入力ネットワークとして抵抗器を使い、スイッチングデバイスとしてバイポーラトランジスタを使った。後にDTLに取って代わられた。


DTL(Diode-transistor logic)論理機能をダイオードを用いて構成し、インバータ・バッファにトランジスタを用いたもの。

SN15830(SN151830)シリーズ (動作温度 0℃ to 75℃)

SN15930(SN151930)シリーズ (動作温度 -55℃ to 125℃)



DCTL(Direct-coupled transistor logic)DTLの論理機能もトランジスタを用いて構成したもの。

それぞれ、抵抗ダイオードトランジスタで構成された論理回路で、デジタルIC開発初期に作られたが、ノイズに弱く、消費電力が多い、高速化が難しいなどの理由から1980年代以降はほとんど使用されない。簡単な回路では、RTLやDTLの考え方に基づいて個別部品を使って論理回路を組むことで部品数が削減できることがある。

この他にHTL(High Threshold Logic(英語版); DTLのダイオードにツェナーダイオードを用いたもの)も存在した。HTLはDTLのダイオードの部分にツェナーダイオードを用いたもので、ノイズマージンが非常に広いため一部計装用に用いられた。
TTL

TTL(Transistor Transistor Logic)汎用ロジックICシリーズは、単電源[注 2]でTTLレベルの入出力インターフェースに統一されたものである。1962年テキサス・インスツルメンツ社が製造をはじめた。74で始まる4桁または5桁の型番が付いているため74シリーズと呼ばれる。番号別に機能とピン配置が統一され、セカンドソースも豊富にあったため広く使われた。通常、単一電源でありモノリシック集積回路として作られている。3ステートバスなどの標準入出力インターフェースを持つ。軍用規格で規定された使用可能温度範囲の広いICは、主に軍での使用を想定して、民生用の74シリーズに対して54シリーズが作られた。54シリーズは74シリーズと下位の番号に互換性があり、74xxの軍用規格が54xxとされ、ピン配置も一部を除き同一である。軍用ICという名称であっても、軍事使用だけに限定されず、自動車電装用部品など高温・多湿の環境下での民生用途にも使用されており、汎用品より高価格となるが民間でも購入・使用されている。

TTL標準シリーズから、高速版、低消費電力版、高速・低消費電力版などのバリエーションを広げ、初期のマイクロプロセッサの応用の広がりとともにさらに普及した。

TTL(Standard TTL or N-TTL):標準型のTTL。

S-TTL(Schottky TTL):ショットキーバリアダイオードを利用し高速化[注 3]したもの。

LS-TTL(Low power Schottky TTL):S-TTLから、さらに低消費電力化したもの。比較的普及した。

L-TTL(Low power TTL):TTL標準シリーズの改良品として、同一の基本回路のまま内部の抵抗などの値を調整して低電力化を行なったもの。

H-TTL(Highspeed TTL):TTL標準シリーズの改良品として、高速動作を図ったもの。

L-TTLとH-TTLは、それほど普及しないまま、後に登場したS-TTLやLS-TTLに取って代わられた。

ALS-TTL(Advanced Low power Schottky TTL):TTLの改良世代ファミリーの中では最後でもあり、比較的普及した。

AS-TTL(Advanced Schottky TTL):S-TTLの改良型であり、高速動作が求められる箇所に使用された。

F-TTL(Fairchild advanced schottky TTL、FAST TTL):フェアチャイルド社の開発したS-TTLの改良型である。

これらの規格は「74」とそれに続く番号の間に1-3文字のアルファベットを含めることにより示される。例えば、Low power Schottkyの6回路Inverter回路であれば、「74LS04」となる。後述のCMOSタイプの74HCシリーズ等も同様である。

稀に上記のタイプによっては、高速化のために、独自のピン配置としているものもあるが、一般的に入手可能なLSタイプやHCタイプでは、このような例外はない。[注 4][2]
CMOS

CMOS汎用ロジックICシリーズは、単電源でCMOSレベルの入出力インターフェースに統一されたものである。CMOS汎用ロジックICは、1968年に米RCA社が開発した4000シリーズが当初、標準であったが、先に普及したTTLとは互換性が無かった。後にTTLの74シリーズと機能・ピン配置互換[注 5]で、動作速度も同等でありながら消費電力の少ないシリーズが登場したため、TTLを置換え普及した[注 6]

4000B/UBシリーズ

4500B/UBシリーズ

74C/40H[注 7]

74HC/HCU/HCTシリーズ(High-speed CMOS)

74AC/ACTシリーズ(Advanced CMOS)

74AHC/AHCTシリーズ(Advanced High-speed CMOS)

74VHC/VHCTシリーズ(Very High-speed CMOS)

74FCTシリーズ

74LV/LVX/LVQシリーズ

74LCX/LVCシリーズ

74ALVC/VCXシリーズ(Advanced Low-Voltage CMOS / Very low-voltage)

4000シリーズは電源電圧範囲が3-18V、米モトローラ社(当時)が開発した4500シリーズは3-15Vと広く、それぞれ出力部にバッファ回路を設けデジタル回路としての動作を確実にしたBシリーズとバッファ回路を省略して高速動作を可能にしたUBシリーズに分かれる。本来の使用法ではないが、UBシリーズは入力と出力を抵抗器で接続することで増幅動作をするなど、アナログ回路のような動作も可能である。電源電圧範囲が3-15Vの74Cシリーズを元に74HCシリーズが登場した。電源電圧範囲が2-8Vの40Hシリーズは、名称こそ4000シリーズと似ているが、実際には74系のロジックである。

74HC/74ACシリーズは電源電圧範囲が2-6VでTTLの74シリーズと機能・ピン配置互換にしたもの。74HCTや74ACT、74AHCTなど型番にTが入ったシリーズは、出力レベルはCMOSだが入力レベルをTTLと同一にしたものである。電源電圧範囲が4.5-5.5Vで、この範囲を外れるとTTLレベル入力が保障されなくなる。

74AHC/AHCT/VHC/VHCTシリーズは74HC/ACを高速・低消費にして、さらに入力を5Vトレラント[注 8]にしたものである。AHC/AHCTとVHC/VHCTはほぼ同種であり、基本的にメーカーの呼び方の違いである。

1990年代中頃登場した74FCTまでは5V動作を主体としてきたが、その後、1990年代中頃から2000年代初頭にかけて現れた74LV/LVX/LVQシリーズは3.3Vや2.5V程度の電源動作を主体としている。74LV/LVX/LVQシリーズは、中低速のCMOSによる汎用ロジックICとして入手し易い代表的なものである。電源は3.3V系であるが、5Vトレラントである。LV/LVX/LVQの3つのシリーズは、それぞれメーカーによって特性が少しずつ異なる。74LCX/LVCシリーズは3.3V高速CMOSであり74VCXシリーズは2.5V高速CMOSである[2]


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