BILLY_BAT
[Wikipedia|▼Menu]

BILLY BAT
ジャンル
ミステリーサイエンス・ファンタジー青年漫画
漫画
作者浦沢直樹
出版社講談社
掲載誌モーニング
レーベルモーニングKC
発表号2008年46号 - 2016年38号
巻数全20巻
テンプレート - ノート

『BILLY BAT』(ビリーバット)は、浦沢直樹による漫画。『モーニング』(講談社)において、2008年46号から2016年38号まで[1] 連載された。ストーリー共同制作は長崎尚志

連載中は幾度も長期休載が行われ、単行本一巻分の内容ごとに細切れで連載していくという方式がとられていた。
概要

歴史の改竄と人類史の闇に踏み込んだ壮大なミステリー。善と悪、陰謀や裏切りといったことをテーマにして紀元前から2001年という長い期間を不規則にジャンプしながら語られる。時系列シャッフルやオマージュ的表現が取り入られている。
受賞

ルッカ・コミックフェスティバル2012 ベストコミックシリーズ賞

グラン・グイニーシ国際コミック賞 ベスト作品賞 [伊]

エトナン・ヴォワイヤジュール文学際 想像賞 [仏]

マックスアンドモリッツ賞 最優秀賞 [独]

ストーリー
第一部 ケヴィン・ヤマガタ編(第1巻-第11巻)
第二次世界大戦終結から4年が経過した1949年アメリカ合衆国ソヴィエト連邦との冷戦が始まり、「赤狩り」の嵐が吹き荒れていた。人気アメリカン・コミック「BILLY BAT」を執筆中の日系人漫画家ケヴィン・ヤマガタの仕事場に、張り込みのための協力を求める二人の刑事がやって来る。断ろうとした矢先、刑事の一人がBILLYを日本で見たことがあると言いだす。ケヴィンは真相を確認するべく、戦後の復興間もない日本へと渡る。復興途上の日本では国鉄の人員削減を巡って、下山総裁が難しい舵取りを迫られていた。GHQを訪ねたケヴィンは旧友のチャーリー・イシヅカと再会。彼と飲みに出かけたものの酔い潰れ、ケヴィンが意識を取り戻したときチャーリーは胸を刺され事切れていた。事件の発覚が闇市の住人たちの迷惑になると脅されたケヴィンは来栖 清志という謎の人物の提案でチャーリーの遺体を線路上に放置した。良心の呵責から自暴自棄になったケヴィンはシズの導きにより、自らが探していたコウモリの絵との再会を果たす。チャーリーが轢断死体となって発見された数日後、全く同じ形で下山事件が発生。ケヴィンは自らが陰謀の渦中に投げ出されたことを知ることになる。そこからケヴィン・ヤマガタの運命は大きく歪みだす。ヤマガタが盗作してしまったコウモリの真の作者である唐麻 雑風と知り合ったヤマガタは雑風に弟子入りし、原稿を託される。だが原稿を読んだことがもとでシズは死亡。失意のうちに米国に帰国したヤマガタは「BILLY BAT」を元アシスタントのチャック・カルキンに奪われたことを知り、コウモリの囁きに恐れおののくことになる。1960年代に入り、ヤマガタの熱烈なファンでもあるスミスは帰国後に消息を絶ったヤマガタを探し求め、中部の田舎町に隠遁し酒浸りのヤマガタを発見し、再起を促す。街に出てTVを目にしたヤマガタは彼が全く知らない男がチャック・カルキンを名乗っていることを知る。更にコウモリが「JFK暗殺」を予言。大統領暗殺のスケープゴートとして用意されたオズワルドという青年と接触。オズワルドは来栖の指示通りに行動することで着実に疑いがかかるように仕向けられていた。ヤマガタは深入りしないよう警告する。スミスが身内であるCIAに銃撃され、事件を阻止しようとダラスに向かったヤマガタは暗殺を目撃。その際に流れ弾から赤ん坊の命を救う。男の子の赤ん坊こそがヤマガタの後継者ケヴィン・グッドマンだった。彼を救ったことでゴールデンコーラ支社長である父親のトニーから日本旅行をプレゼントされたヤマガタは機内でモモチ親娘と知り合う。娘のジャッキー・モモチは教科書ビルでオズワルドと共に大統領暗殺の真犯人である来栖らを目撃。オズワルドが身を挺したことで命を取り留めていた。そして、コウモリの指示で和歌山県にある光森村を訪ねるようヤマガタに求める。モモチ親娘と共に光森村に向かったヤマガタはヘンリー・チャールズ・デュヴィヴィエに襲撃され穴だらけの異様な光景となった村に驚愕。雑風が村に匿われていた。雑風は“師匠”の歴史介入でデュヴィヴィエに母親の真意を伝えることで自身やヤマガタの殺害を思いとどまらせる。だが、ヤマガタはフィニーの指示で狙撃された。
第二部 ケヴィン・グッドマン編(第12巻-第17巻)
1980年代、大学生になったケヴィン・グッドマンは寄宿舎を抜け出してはストリートアートを「作品」として残していた。だが、彼の才能に目をつけたオードリー・カルキンと黒人カメラマンだけでなく、別の何者かが彼の所行を監視していた。グッドマンを追っていたカメラマンが警察官に射殺され、犯人に仕立て上げられそうになったグッドマンはスミスという隻眼の老人に助けられる。彼から護身術を学んだケヴィンは明智小太郎ことコニー・アケチからアポロ計画に隠された陰謀を知ってしまう。オードリーの招きで彼女の父チャック・カルキンの邸宅を訪れたグッドマンはそこでゴーストライターとして酷使されてきた本物のチャック・カルキンと出会う。グッドマン、オードリー、カルキンの三人はBILLY BAT奪還計画を企てる。新作として発表されたグッドマンの手による「BILLY BAT」はヤマガタ版に近いもので広くアメリカ国民に受け入れられたことで、偽チャック・カルキンは追い詰められる。一方、歴史の暗部で悪行を重ねて来た来栖清志にも死期が迫っていた。戦国時代、フランシスコ・ザビエルによってスペインの洞窟から持ち出されて海を越えてアジアに運ばれたコウモリの巻物は、耳須 弥次郎の手を経て百地丹波に渡り、運び人となった勘兵衛は巻物の危険性を知ってこれを隠した。戦後、国鉄の保有地に存在した巻物を確保するため来栖は下山を脅迫し、殺害した。更に来栖とデュヴィヴィエは「ビリーランド・ジャパン」の建設による用地買収で巻物を入手しようと画策するも失敗。来栖が敢えて泳がせていたヤマガタはCIAに銃撃される。焦る来栖は月面到達を計画し、来栖による人類滅亡のシナリオが密かに進行していた。だが、グッドマンがBILLY BATの最終回を書き換えたことで来栖清志という男の人生はすべて書き換えられた。来栖は漫画家として日本で生涯を閉じたことになる。また、偽チャック・カルキンは病に没する。1990年代に入り、グッドマンは予言者として注目され、本人は辟易していた。一方、来栖のためにグッドマンが好き勝手に書き換えを行ったことで、彼のコウモリとの交信能力は喪失しつつあった。そんな中、グッドマンとオードリーはダウンタウンで日系人の少年から弟子入りをせがまれる。グッドマンは彼こそが後継者だと確信する。一方、スミスは命を狙われるがデュヴィヴィエに救われる。グッドマンも実家に帰省した帰りを狙われるが自身の予言に沿って行動し、デュヴィヴィエに救われていた。カリフォルニアの「ビリーランド」地下施設でフィニーらによって続けられていた巻物の研究はモアハウスたちに乗っ取られ、フィニーも命を落とす。2001年、グッドマンは「二つの塔」についてのインスピレーションを得ながらも酷いスランプに陥っていた。そんな彼のもとを訪れたのは成長した日系人の少年ティミー・サナダだった。グッドマンはティミーを後継者とするかについて、カルキン、デュヴィヴィエと協議するがデュヴィヴィエは「態度保留」のまま銃撃を受けて行方不明となる。一方、ティミーはグッドマンの言う「二つの塔」があるのはニューヨークだと指摘する。昏睡状態でコウモリと邂逅したデュヴィヴィエはグッドマンの命を救うことが自身の役目だと悟る。グッドマンはティミーの助言で作品作りに没頭し、「二つの塔」が示すのはニューヨークにある世界貿易センタービルだと確信。これを衆知させて人命を救おうと奔走。ビデオメッセージでの啓発やBILLY BAT作中での言及などを画策する。グッドマンが奔走しているのをよそに、バツイチで一人娘マギー・モモチの母親となっていたジャッキーの許にコウモリからのメッセージが届く。他方、雑風のファンで協力者だった山下はアルバイトから身を立てて経営不振に陥っていた「ビリーランド・ジャパン」の経営再建に成功し、社長にまで出世したものの本社の意向で突然首を切られる憂き目に遭っていた。雑風の墓参りをした山下はコウモリの影が東に飛び立つのを見て渡米。偶然にも数十年ぶりにジャッキーと再会する。そして、山下の食い意地が偶然にもグッドマンとジャッキーを引き合わせる。コウモリがジャッキーに託したメッセージは「ティミーにはコウモリが見えていない。アイツは大嘘つきだ」というものだった。オードリーはグッドマンの奇行ぶりに見切りをつけ、原稿の差し替えやビデオメッセージの放映中止を画策。ジャッキーからの伝言で何を信じるべきか見失ったグッドマンのもとにデュヴィヴィエが現れ、予言された地はシカゴだと助言する。その後、デュヴィヴィエは自らの半生への贖罪のため世界貿易センタービルに入り、人々に避難を呼びかけた。そして、シカゴに移動しようとしたグッドマンが目撃したのは旅客機がビルに突入する様だった。アメリカ同時多発テロは起きてしまった。グラウンドゼロでグッドマンはデュヴィヴィエを探し求める。ジャッキーはまたしてもアメリカを襲う悲劇の現場に居合わせたことに煩悶。二人はヤマガタ版BILLY BATを扱うコミック専門店で偶然にも再会する。名場面を互いに再現しあううち、ビリーが小悪党を更生させるために言った「師匠を捜し求めろ」という台詞を思い出す。ジャッキーは危篤状態のヤマガタに付き添っていたが帰国を余儀なくされてしまう。そして、ヤマガタと共にスペインのバスク地方にある洞窟に向かう約束をしていたことをグッドマンに打ち明ける。一方、デュヴィヴィエの死でグッドマンがもう戻らないとカルキンも確信していた。そして、ティミーから路線変更を切り出される。「テロとの戦いに傷ついた人々をコミカルなBILLY BATで励ましたい」というティミーの申し出にカルキンも応じる。だが、ティミーの実の父親は偽カルキンだった。アドルフ・ヒトラー総統の命令を忠実に実行した男は「BILLY BAT」という作品で「世界に幸福をもたらした」。だが、病死直前に彼が願ったのは「BILLY BAT」で「世界を不幸にすること」だった。ティミーは父の遺命を遂げようとしていた。
第三部 二人のケヴィン編(第18巻-第20巻)
2015年北京モスクワに「ビリーランド」がオープン。ティミー・サナダは「BILLY BAT」の作者として衆知され、経営権を巡るオードリーとの法廷闘争にも勝利。追い出されるオードリーは捨て台詞として「ティミーの描くビリーにはときめかない」と言い放ち、紙媒体のBILLY BATの出版権だけを手に去って行く。その頃、グッドマンはヤマガタの消息を求めて中東に居た。2002年にスペインに向かったグッドマン、山下、ジャッキーとマギーは“その時は近い、急がば回れ”という日本語のメッセージとビリーのイラストでその地をヤマガタが訪れたことを確信する。そして、スミスの終焉の地に辿り着いたグッドマンは彼の遺書を読んで涙する。その少し後、モアハウスらコウモリ研究チームは洞窟奥に辿り着くが落盤事故でモアハウス一人を残して死亡。生き残ったモアハウスも13年間寝たきりの状態に陥っていた。彼の病室を見舞ったティミーはコウモリにまったく興味がないことを告げ、ビリーバット歴史研究所を受け継ぐと宣言し、「カルキンエンタープライズ」の力で中国やロシアを打倒すると宣言する。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:94 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef