B-29_(航空機)
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またその計測データは偏流計のデータと合わされて、対地速度と針路を計算するのにも使用された[22]
武装

B-29では与圧室の採用により通常の爆撃機のように人が乗り込んで直接操作する方式の銃座は設置できないため、射手が集中火器管制を行って機銃を遠隔操作する方式をとった。B-29は5ヵ所(胴体上面の前後部、下面の前後部、尾部)に火器を備え、上部および下部銃塔には連装のAN-M2 12.7ミリ機関銃、尾部には同様のAN-M2 12.7ミリ連装機関銃に加えてM1 20ミリ機関砲 1門が装備された。ただし、20ミリ機関砲は作動不良や給弾不良などの不具合が多く、また、12.7ミリ機銃とは弾道特性や有効射程が異なるために照準上の問題があり、実戦投入後に撤去している機体が多い。現地改造で20mm機関砲を12.7ミリ機銃に換装した機体もあり、尾部銃座が12.7ミリ機銃3連装となっている機体が存在する。

機体各所の連装12.7ミリ機銃の銃塔はそれまでの有人型と異なり中に人が入らなくてもよいため、高さの低い半球形となり、空気抵抗を小さくして速度性能を高めることに貢献した。ただし、小型で全高の低い銃塔は仰角はともかく俯角がほとんど取れないという難点もあり、全高を多少増したものが開発されている。また、機体前上方の防御に関して「連装機銃では火力が不足しており、有効な弾幕が張れない」という要望が出たために、B-29A-BNからはコクピット後方の機体前部上部に装備される銃塔は機銃を4連装として直径を増したものに変更された。多少大型になったとはいえ小型の銃塔に機銃を4基も詰め込んだため、連装のものに比べて旋回速度が遅い、射撃時の衝撃で故障が多発するなどの問題が生じ、B-29A-BN block 40 A後期型からは内部構造や機構を強化した大型の流線型のものへと変更されている。

このようにB-29の防御火器は試作機が完成して実戦投入された後も改良が繰り返され、機首や機体側面に機銃を増備した機体や、銃塔を20ミリと12.7ミリの混載として大型化したものなども開発された。しかし、最終的にはいずれも採用されなかった。さらに実戦投入後、日本側の夜間の迎撃体制が予想外に貧弱なことや、1945年に入って硫黄島が攻略され、昼間任務での戦闘機による護衛が可能となったことによって、B-29の主任務が夜間低空侵入による都市無差別爆撃となった時期からは、爆弾と燃料の搭載量を増大させるために尾部の12.7ミリ連装銃座を除いて武装は撤去されるようになった。そして、製造当初から尾部銃座以外の武装を省いた型(B-29B)が生産されるようになった。

銃塔を制御する照準装置は5ヵ所に設置され、4ヵ所は専任の射手が、もう1ヵ所は機体前方に配置されている爆撃手が兼任で担当した。こうしたB-29の射撃システムにはアナログ・コンピューターを使用した火器管制装置ゼネラル・エレクトリック社製)が取り入れられており[7]、機体後部の半透明の円蓋下に取り付けられた別名「床屋の椅子」に座った1人が射撃指揮官として上部射撃手を兼用して対空戦闘を指揮したほか、左側射撃手と右側射撃手の計3人が尾部と前部上部銃塔を除く残りの銃塔を照準器を使用して操作した。さらに戦闘の状況に応じて、銃塔の操作の担当を他の射撃手に切り替えることも可能であった[23]。照準器には、弾着点とそれを囲むオレンジ色の円で示されたレチクル(英語版)が写しだされており、射手は敵機の翼幅を照準器で手動でその数字に設定し、敵機が見えると右手にある距離ノブによって照準器を始動させ、照準器内で敵機を弾着点とそれを囲むレチクルの丸い円に入れるように操作する。このレチクルは距離ノブの操作により丸い円の直径が変化して距離が測れるようになっており、敵機が近づくと距離と同時に弾着点を捉え続けているので、敵が射程に入り次第親指で発射ボタンを押して射撃するだけでよかった[24]。ただし、激戦の中では護衛のアメリカ軍戦闘機と日本軍戦闘機との識別は困難で、射手はB-29以外の機影に対し反射的に引き金を引く習慣がついていたという[25]。なお、各銃塔にはガンカメラが備えられており、戦果の確認等に活用された。

照準器と銃塔の動きを同期させるための制御はセルシンを使用するが、目標への方位角や仰角などの機銃の発射する弾の弾道計算を含むすべての計算は、機体後方下部の”ブラックボックス”に収められ装甲で保護された重量57kgのアナログ・コンピュータ5台によって行なわれるため[26][注 1]、それまでは非常に高い練度を必要とした見越し射撃が誰にでも可能となり、従来の爆撃機搭載防御火器よりも命中率が驚異的に向上、これによって敵機はうかつに接近できなくなった。このアナログ・コンピュータは当初生産が少なく、急遽ゼネラル・エレクトリック社に大量生産の指示がなされた。技術者も総動員され、昼夜を問わず寒風の中、露天に並べられたB-29の機内での設置作業に従事している[27]

B-29のコックピット。機長席および副操縦士席の前(画像奥側)、ガラス張りの機首の最先端部が爆撃手席。

B-29の航空機関士席。軍用機としては初めて航空機関士が搭乗し機上作業が分業化された。

B-29の後部爆弾倉内から後部与圧室を望む。半球状の圧力隔壁を隔て、与圧区画と非与圧区画が分けられる。上部のドラム缶のように見える物が、操縦室と胴体後部を繋ぐ交通パイプ。乗員はこの中を這って移動した。

機体前部と後部を繋ぐ交通パイプを這って移動するB-29クルー。内張りや、機体の前後を結ぶ配線も写っている

B-29機体前方下部の銃塔と、その後ろの爆弾倉。銃塔は集中火器管制射手が遠隔操作した。

エンジン整備中のB-29 エンジン本体と排気タービンの位置関係がわかる。

B-29に搭載されているR-3350エンジンの排気タービン部 写真の機体の排気口は蓋で覆われている。

R-3350の交換作業

B-29機体下部銃塔。連装機銃の銃身の間に見える孔は、記録用のガンカメラである。

B-29尾部の銃座。20ミリ機関砲 1門と12.7ミリ連装機銃を装備したオリジナルの状態。

B-29尾部の銃座。20ミリ機関砲を撤去し12.7ミリ連装機銃のみとしたB-29Bのもの。

B-29の尾部銃手搭乗口から身を乗り出しているケネス・W・ロバーツ(Kenneth W. Roberts)尾部銃手。この機体は中央の20ミリ機関砲を12.7ミリ機銃に換装している。

コクピット後方の銃塔を4連装としたB-29A 75-BW(S/N 44-70070)"The 8 Ball"号。


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