B級映画
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収益は低いが予算も十分低かったので利益は保証されており、観客の入場者数はさほど重要性を持たなかった[12]

しかし別の側面では、新しい監督や脚本家、そしてプロデューサーらの若く有能な才能のテスト場として使われ、その限られた条件をうまく使って斬新な編集や即興的な演出、単純で単調さを逆に全面に打ち出すなど新しい映画の方向を模索する場となり、やがて彼らの何人かがここから巣立ち、1950?1960年代にアメリカの映画史を彩ることになった。これは後に1960年代にテレビ映画の製作に携わって、1970年代に映画の世界に進出して活躍したケースと同じであった。
B級映画の終り

戦後反トラスト法の成立によって、1948年に「パラマウント訴訟」の同意判決が進みメジャー会社のそれまで強固であった製作ー配給ー興行の垂直統合のシステムが崩れて、手持ちの劇場チェーンを切り離すと、メジャー各社のB級映画の製作は中止された。そしてマイナー会社はリパブリック、アライド(モノグラムの後身)、AIP[13]などがまだ製作を続けたが、しかし、この時期になるともはや純B級ではなくて、普通の長編フィーチャーの長さの映画で二本立て興行を維持するために製作していた。しかしそれも1950年代に入ってからテレビ映画の興隆で各プロダクションもテレビ映画の製作にシフトし、ハリウッドが大作主義に移行するなかでB級映画は無くなった。

この1950年代にリパブリックやアライド、AIPなどのもともとのB級製作会社が自由になった配給状況でB級ではないフィーチャー映画を製作したことは、この時点でもはやA級・B級の区別が無くなったと考えられるが、別の観点から低予算で製作された映画だとしてB級映画と見る見方もある[1]。この期間のB級映画にはA級映画よりもはるかに自由な創造を可能にして映画製作者の「創意と創造性の試金石」となり、今日ではそれぞれのジャンルでの古典として認められて「現代の映画製作者のインスピレーションの源泉となっている」とされている[12]。それは結果として新たな才能の実務的な訓練の場を提供して積極的な役割を果たしたと言える[1]
B級映画のエピソード

B級西部劇のスターで日本でも有名であった
ランドルフ・スコットは常にB級スターのイメージがつきまとうが、増渕健は彼がB級スターなら、ジョン・ウェインもB級スターと呼ばなければならないとしている。事実ジョン・ウェインは「駅馬車」に出演するまでにB級映画に56本出演している。スコットは終始メジャー会社に属した俳優であり、A級映画にもよく出演したが、ウェインは「駅馬車」までの10年間、B級専門のマイナー会社を渡り歩いている[14]

後にアメリカ合衆国大統領となったロナルド・レーガンもB級映画出身の俳優であったし、他にもジャック・ニコルソンなど多くの名優や名監督を輩出している。

今日のB級映画

現在でも限られた期間で撮り経済的にも限られた条件で製作された映画を「B級映画」と呼ぶ場合がある。そして第1作はB級映画と言われながら高い評価を得たり、あるいは大ヒットして、続編が超大作映画となってシリーズ化するケースもある。

007シリーズ』は第1作『ドクター・ノオ』が低予算で製作されたがヒットしたため、第2作『ロシアより愛をこめて』、第3作『ゴールドフィンガー』と進むにつれて制作費も大幅に多くなり、豪華なアクション大作シリーズへと成長、世界的に大ヒットした。

ターミネーターシリーズ』は、第1作『ターミネーター』では制作費が600万ドルだったのに対し、第3作『ターミネーター3』で制作費は1億6千万ドルに跳ね上がっている。同時に、シリーズを追うごとに主演のアーノルド・シュワルツェネッガーの出演費も高額になっていった。

プラトーン』は、制作費600万ドルだったが、興行ではアメリカ合衆国で制作費の20倍である、1億3,800万ドルの興行収入を記録する大ヒット映画となった。

現在でも低予算と言われる映画でも、7,000ドルで制作された『エル・マリアッチ』や、30,000ドルで制作された『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』など興行的に大ヒット作となった作品もある。

単に映画を批評する場合にもっぱらランクを指し示すものとしてB級映画が使われる場合がある。B級映画よりも質の良いものを「A級映画」、さらに質の落ちるものを「C級映画」、出来の悪さにつれてD級やZ級と進んでいく[15]

アサイラム社のように人気作に便乗したモックバスターを制作するスタジオの作品もB級映画と呼ばれる。

B級映画をひたすら撮り続けた「B級映画の帝王」と呼ばれるロジャー・コーマンは、映画界に多大な影響を与えており、彼の下で映画を学んだ映画関係者は数多い。しかし、コーマン本人は「B級映画の帝王」と呼ばれることを好んでいない。その理由は、自身の「B級映画」の定義は前述した二本立て映画の前座低予算映画であり、自身が作っている作品はそれとは違うエクスプロイテーション映画や前座ではない単独の低予算映画であるからだと説明している。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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