Amazon_Web_Services
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最高レベルのセキュリティとなるよう設計され、軍隊や国際的な銀行、その他の高い機密性が求められる組織のセキュリティ要件をも満たすように構築されている。データを保管する全てのAWS サービスでデータの暗号化機能を提供。責任共有モデルによって AWS と顧客がぞれぞれ管理するレイヤーが定義されており[17]、例えば AWS の社員であっても顧客が保管するデータを閲覧することなどできない[18][※ 8]。また、セキュリティ、コンプライアンス、ガバナンス用のサービスと機能として300種類以上を提供する[19]。加えて、セキュリティに限らず多数のコンプライアンス認定を受けている[20]
価格

すべてのサービスや機能の価格が Web 上で公開されており、無料利用枠もある[21]。システム構成を元にした価格を AWS Pricing Calculator を用いて試算することが可能[22]。一般的には、EC2 や RDS といったサービスで必要となるコンピューティング(CPU、メモリを必要とするもの)の料金と、S3 などのサービスでデータ保管にかかる料金が大半を締め、ロードバランサーなどネットワーク周りの料金は全体のごく一部になる[※ 9]。EC2 や RDS はオンデマンドではなく1年もしくは3年の期間契約にすることで、最大75%の割引を受けることができる(リザーブドインスタンス[23][24]、Savings Plans[25])。サービスの利用開始後は、AWS の管理画面にサービスごとの内訳や利用時間帯など詳細が掲載される。

Amazon では利益を顧客に還元するという考え方があり、AWS はサービスを開始してから129回以上もの値下げを実施している(2023年2月現在)[13]。値下げ幅の例としては EC2 では2008年から2017年の9年間で最大50%の値下げがあり、S3 については2008年から2016年の8年間で最大86%の値下げが実施された。IT 業界でありがちな保守費用の値上げが発生せず、利用期間中に発生する IT コスト単価が低減し続ける。AWS がハードウェアを大量に手配し、効率的に調達や構築を行うことなどによって実現されている。

なおクラウドサービスであるため、サーバーラックの費用や電気代、インフラ保守員の人件費など、あらゆる費用が価格に含まれる。よってオンプレミスとは異なったコスト計算を行う必要がある。即時の利用開始や利用開始後の即時終了も可能で、短期間の利用でもペナルティなど無い。そのため、短期間しか利用しないシステムや、試験環境/開発環境の準備にも適している。また、オートスケーリングやサーバーレスアーキテクチャといった技術を用いれば、自動的なサーバー台数の増減や自動的なリソース増減を行い、需要に基づいた無駄のないリソース提供を行うことができる[※ 10]。同様に中長期的なサーバーリソースの追加/削減についても簡単に対応可能。そのため、リソースの観点では事前に必要なリソース量を正確に見積る必要が無く[※ 11]、ワークロードに応じてコストを最適化できる。また先述の通りハードウェアメンテナンスが AWS によって自動的に実施されるため、一般的にオンプレミスでは4?5年程度の頻度で実施しなければならないハードウェアリプレースや移行の費用も不要である。
歴史

2003年の終わりごろ、クリス・ピンカムとベンジャミン・ブラックは Amazon のサーバーインフラストラクチャの将来の展望についての論文を発表した。その論文では新たなサーバーインフラストラクチャは完全に標準化、自動化され、ストレージやネットワークが最終的にはウェブサービスに依存することになると書かれている。またその論文の終わりでは、企業の新たな IT インフラストラクチャとして、仮想上のサーバーサービスが普及する可能性に対して言及している。

2004年の11月に AWS が Simple Queue Service としてスタート。EC2 は南アフリカケープタウンでピンカムと開発のリードであるクリス・ブラウンによって設計された。元々は、Amazon がコスト削減のために実施した高価な Sun サーバーから安価な HP/Linux へのリプレースが完了したタイミングで、「小売業の繁忙期以外ではサーバーリソースが余剰となるため、空いているサーバーリソースを他社に貸し出せば良い」というジェフ・ベゾスのアイデアが生まれたことから、サービス提供の構想が始まった[26]

2006年、AWS が公開。3月13日に Amazon Simple Storage Service(S3)[27]、8月23日に Amazon Elastic Compute Cloud (EC2)[27]をリリース。

2009年10月22日、マネージド型 RDBMS サービスである Amazon Relational Database Service(RDS)をリリース[27]

2010年11月、Amazon.com が小売ウェブ関連のサービス全てを AWS 上に移行。

2011年3月2日、世界5番目のリージョン、日本で初めてのリージョンとして、東京リージョンを開設。日本語の24時間サポートサービスを提供開始。

2012年1月18日、キーバリューストアデータベースである Amazon DynamoDB をリリース[27]

2014年、AWS Lambda と、コンテナ管理サービスである Ealstic Container Service(ECS)をリリース。

2018年、AWS 自社設計の Arm CPU である Graviton (グラビトン) を提供開始[28]

2018年2月、日本国内2拠点目となる大阪ローカルリージョンを開設[※ 12]。大阪ローカルリージョンは、東京リージョンで稼働させているシステムやデータのバックアップと DR 用途としての利用を前提にしていた。

2019年8月23日、東京リージョンで冷却システムの不具合による障害が発生し、日本国内の多くの Web サービスやスマートフォンアプリが影響を受けた[29]

2020年10月8日、日本政府総務省の第二期政府共通プラットフォームを AWS を用いた情報システム基盤で運用開始[30][31]

2020年10月26日、デジタル庁が日本政府用の共通クラウド基盤であるガバメントクラウドとして、3社の応募があったうち、AWS と Google Cloud Platform (GCP) をセキュリティや業務継続性で観点で選定[32]

2021年3月2日、大阪リージョンを開設。2018年から一部ユーザー向けに提供していた AWS 大阪ローカルリージョンを拡張し、3つの AZ を備えるリージョンである。日本国内では東京に続いて2番目のリージョンにあたり、東京リージョンの開設からちょうど10年後にリリースされた[33]

2021年9月2日、東京リージョンでハードウェア障害によるネットワークの接続不良が発生。証券会社気象庁でデータ更新に通常よりも時間がかかったり、NTT ドコモではポータルサイトのアプリが開かないなどの不具合が生じた。航空会社でもチェックインシステムなどで障害が発生し、日本国内の広範囲に影響を及ぼした[34][35]

2022年4月、アマゾンウェブサービスジャパン合同会社がホワイト企業ランキングで13,000社中の3位にランクイン[36]

2022年8月15日、日本全国でテレビ CM が放映開始。同年12月上旬まで。ANA出前館星野リゾートDisney+といった実際に AWS 上で稼働するシステムを題材にした内容で作成された[37]

2022年10月、Google が2024年までに日本へ1,000億円を投資する計画を明らかにしたこと[38]を受け、AWS も日本への投資額を公表。本年だけで3,480億円、東京リージョンが開始した2011年からの12年間合計で1兆3,510億円であったことが判明[39]

2022年11月、ABEMA が行った FIFA ワールドカップ カタール 2022の映像配信において、AWS の CloudFront と AkamaiCDN が採用された[40]FIFAワールドカップ カタール2022 (ABEMA))。日本代表戦では2,000万人以上が視聴し、韓国のリージョンの CloudFront が併用された[41]

2023年4月、AWS Summit Tokyo が幕張メッセで4年ぶりに物理開催された。

2023年10月、生成 AI サービスである Amazon Bedrock をリリース。テキストの生成やテキストの要約、チャットボット、画像生成、検索、パーソナライズなどの機能を構築できる。基盤モデルは「Amazon Titan」「Jurassic-2」「Claude 2」「Stable Diffusion」「Cohere」などから選択可能で、基盤モデルごとの得意な分野を踏まえて基盤モデルを選択し、利用することが可能。[42]

2024年1月、日本での生成AIの活用などでデータ利用が増加していることにより、データセンターの建設や運用、セキュリティー対策などの需要が増大すると見込んで2023年からの5年間で日本に2兆2600億円を投資する計画を発表した。[43]
障害

障害が発生した場合は AWS Health Dashboard に内容が掲載される[44]

大規模障害は稀ではあるが、1つ以上のデータセンターで構成されるアベイラビリティゾーン (AZ) の単位で発生することが一般的である。そのため、マルチ AZ 構成の設定にしておくことで大抵の場合は障害が発生したとしても影響を軽微にすることが可能[45]。リージョンレベルでは耐障害性の観点から各リージョンが疎結合となるように設計されており、理論上は複数リージョンで同時に障害が起こるようなことは有り得ない。しかし、前述の通り利用顧客数が非常に多く、企業システムや行政システム、様々な Web サイト、モバイルアプリケーション、通信会社のネットワーク処理、オンラインゲームなど多様な形で利用されており、AZ レベルの障害でも社会的な影響が発生することがある。

クラウドとはいえ物理的なハードウェア上で仮想サーバーが動作していることは変わりなく、ハードウェア障害等によって仮想サーバーが停止するケースはあるが、自動的に新しいサーバーが起動して復旧する仕組みになっている。当然、その際にデータが新しいサーバーに引き継がれる。自動復旧にあたって AWS が確保している予備のハードウェアが用いられるため、利用者側で個別に予備のハードウェアを確保しておく必要は無い。なお、自動復旧された際にメール通知を受ける設定なども可能。

自動復旧されないような障害が発生した際も、利用者が復旧対応などを行う必要はなく、AWS のスペシャリストによって復旧作業が実施される。


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