AV女優の性行為は売春ではないかとの批判もあるが、売春法で問題になるのは提供された側から金銭を得ることであり、女優・男優共にメーカーから出演料をもらう形のAV撮影は売春には当たらないとされている。また、出演料であるので管理売春にも当たらないとされる。さらに、弁護士・奥村徹は、不特定の相手との性交が売春と規定されているため、事前に相手の素性がわかっているAVでは該当しないと見解を明かしている[17]。弁護士の小倉秀夫も「AV撮影の過程で本番をやっても通常これに含まれない」と指摘。2022年に成立したAV出演被害防止・救済法では「出演契約は、性行為映像制作物ごとに締結しなければならない」と契約における「不特定」性を排除している[18]。 大半のAV女優はAV事務所(AVプロダクション)に所属しており[19]、マネージメントされる立場にある。 AV女優は労働者派遣法の有害業務にあたることから、労働者ではなく個人事業主として扱われる。 一般的にAVメーカー(制作会社)からの出演依頼を取り付け、初めて撮影となり収入が得られる。 新人のAV女優は仕事を得るためにマネージャーと共にメーカー回りをして、ようやく仕事(収入)が得られる[20]。 このメーカー回りのことを、AV業界用語では「面接回り」と言うが、一般的の「オーディション」と同義である。つまり、メーカーの存在無くしては存在しえない職業であり、この部分で労働者的な側面のある職業となっている[21]。また、プロダクションはマネージメントだけでなく、撮影現場でのトラブルの解決も重要な仕事の一つである[22]。 マネージメント料は高額で、村西(2011)は折半としているが[23]、いのうえ(2002)では事務所7、女優3が多く、中には折半も見られるとしている[24]。中村(2012)は折半は良心的な方であり、60 - 70%はプロダクションに流れるとしている[20]。プロダクションから独立して独自にAVメーカーと契約することも可能だが、適切な出演料を提示できなかったり叩かれてしまうなど困難が多い[25]。ただし、企画女優においては長期間、成功しているケースもみられる[25]。桃宮ももは事務所の許可を得てフリーとして活動しており、「自分で営業して取った仕事のギャラは100対0で入るが、中々仕事がないのでバイトしている」と語っている。 門倉貴史による「風俗産業で働く女性の時給ランキング(2006年版)」によると、風俗産業の中でもAV女優の時間あたりの給料が最も高い。トップは「単体もの」のAV出演で時給3万1000円 - で、「単体もの」は1回のビデオ出演毎に80万円 - 150万円程度のギャラを受け取ることが出来ると言う。撮影現場で拘束される時間は2日程度になるから、時給に換算すると1万7000円 - 3万1000円程度。ただし、AV業界には、「出れば出るだけ価値が下がる」と言う法則があると言われる[26]。峰なゆか、小室友里も同様の指摘をしている[27][28]。 「職業としてのAV女優」の著者・中村淳彦によると、志望者数の増加などで競争率が上がっており、供給は高い状態だが容姿の採用条件は厳しくなる。 一方で、学歴や教養、資格が不要[注 1]で健康保険や厚生年金、労災保険がない個人契約のため、その待遇は悪化傾向であり、企画女優では複数回の本番を行う場合でも、プロダクションの取り分を引いた手取りが時給換算で2000円といった例も見られるようになった[29]。 前述の峰によれば、一時期と比べAV1作品あたりの売上本数が減り、制作費と同様にAV女優の出演料も低下している。また、進行形で出演料は下がり続けているという。 AV女優人口が増え、1人あたりの仕事量が減ったことも背景として挙げている[27]。中村(2012)によれば出演料は辛うじて横ばいであるものの、長引く不景気により作品のクオリティや内容の過激さが要求されるため、AV女優の仕事内容も以前より過酷となってきている[30]。年々悪化しており、バイトしながら続ける者や自主制作する者もいる。 個人事業主であることから、確定申告など税金周りは一部を除き各個人で行う[31]。事務所には必ず税理士がついており、事務所の紹介を通して申告するケースが多いので、有名女優になればなるほど納税を怠る率は著しく低い[31]。 元AV女優の神野藍は確定申告は女優業として提出していたという[32]。 東京都に所在地を置く製作会社「ミルキーキャットドットコム」[33]の出演女優の募集案内文を見ると、1作品の撮影に対する報酬として8万円 - 10万円現金を支払うと紹介している[34]。 中村淳彦は著書の中で、以下のように言説している。かつては社会の底辺と言った扱いで、女性にとって最後の手段とも取られていたこのAV女優と言う職業[35]は、近年そのネガティブイメージは薄まってきており、業界も近年は法的に健全化してきている[36]。また、それに伴いAV女優志願者も増え、AV女優の質は概して向上してきている[37]。 それに伴い競争率も高くなり、かつてままみられた精神疾患・人格障害、あるいは幼少期の(性的)虐待経験などを持つAV女優[38]を起用する例は少なくなってきているという[39]。ただし、自身および家族の生活費[注 2]、学資等を稼ぐためにAV女優となる者は存在する。競争過多から、その裏稼ぎは、単体女優でも、マスク、パーツ、美形など選ばれた一部の者に限られている。ほとんどの者は不採用になるため、普通のバイトで学費などを稼ぐ。 プロダクションはかつてに比べれば健全化し、ギャラなどもある程度は明らかにされるようになってきている[40]。しかし、学歴や教養を求められることはなく、また法的知識も求められることもないため、それを逆手にとってギャラの持ち逃げ[41]や、AV女優に偽って劣悪な撮影現場に送り出すなど[42]といった例もある。また、過度のSMプレイにより刑事事件となった事案(バッキー事件)もある[43]。 AV女優になる理由は様々であるが、AV人権倫理機構が行なった2021年のアンケートデータによれば、自分から応募が68.4%、スカウトが8.4%、関係者に知り合いがいた・知人に勧められたなどが8.4%となっている[8]。 アダルトビデオに出演契約を意に反して結ばれ、拒否したとされる女性が、契約違反の違約金として2460万円請求された訴訟の判決が2015年9月に確定した。東京地裁によると女性は高校生の時、タレントとしてスカウトされ「営業委託契約」を原告の会社と結んだ。しかし、意に反して露出度の高いグラビア撮影をされ、20歳の時会社が無断でAV出演を決定。出演後、さらに出演契約を結ばされた。それによる精神的なショックもあって女性の体調が悪化。AVの出演を拒否したところ「違約金が1千万円かかる」と言われた。契約解除を会社に告知したところ本件訴訟が提起された。 被告の担当弁護士は「高額の違約金で脅され、AV出演を強要される事例は多い。重大な人権侵害だ」と述べている[44]。また、判決で裁判官は「(AV女優は)本人の意に反して強要できない性質の仕事だ」として原告の請求を棄却した。 これらの事件を踏まえ、日本では2017年にAV人権倫理機構が設立された。 AV女優という職業名からしてAV出演が本業となる業種であるが、表立ってヌードを生業とする職種が少ないことから、黎明期よりアダルトモデル、ヌードモデルとしても活動する人物が多い。1990年代前半に起こったヘアヌードブームの中心こそ一般女優やアイドルタレントであったものの、当時から桜樹ルイ、憂木瞳などが写真集を出版していた[45]。しかし、インターネットでいくらでもヌード画像が見られるようになると、AV女優の写真集は姿を消していった。
報酬と待遇
待遇
出演強要と高額違約金訴訟
アダルトモデルとしての活動
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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