AMステレオ
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AMステレオ受信機 赤く描かれたAMステレオ対応を示すロゴタイプが見える(ソニーSRF-A300).mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}ポータル ラジオ

AMステレオ放送(エーエムステレオほうそう)の記事では、AMラジオ放送(AM方式による中波放送)のステレオ化に関するトピックについて述べる。研究自体は2波を利用するものまで含めればオーディオのステレオ化の初期からあったが、1波による実用的な方式の機材が一般的に利用可能になったのは1980年代以降であった。日本では1990年代に開始されたものの、10年程度で新規導入局や一般向けの対応受信機は発売されなくなるなど、中波ラジオ放送としては一過性のブームの域を出ない展開ではあったが、局あるいは中継機材のステレオ対応は、その後の中波ラジオ以外へのサイマル放送で活用されているものも見られる。
日本における概要

日本では1991年にC-QUAM方式(振幅変調#モトローラ方式を参照)を標準に採用しての実施が決定され、1992年3月15日東京放送(TBS)、文化放送(QR)、ニッポン放送(LF)、毎日放送(MBS)、朝日放送(ABC)の民放5局で開始した。ラジオ大阪(OBC)は新社屋完成を待って1993年から開始した。これらの当初実施局に続き、10局前後の地方民放局がステレオ化した。

当初は「AMラジオの最初で最後の進化」「AMラジオのFM化」と言われプロ野球中継にて臨場感を高めたことや音楽番組のステレオ放送目的、トーク番組などで流れる音楽が開始前と比べて多くなった。AMステレオ放送に関する放送局の設備は送信機・ステレオエキサイタ・AMステレオモニターなどで構成され、電波の送出においてモノラルとステレオをスイッチで切り替えることが可能な設備もある[1]

当初の盛り上がりの後、継続的な普及に入ることは無く、結果的に導入したのは大都市中波局と実施当時民放FM局がなかった岡山県山陽放送や和歌山県の和歌山放送など計16局に留まり、札幌テレビ放送STVラジオが1996年10月7日に開始したのが最後の新規採用事例となった。その後、音楽番組の聴取率不振やNHKが導入を見送った影響で多くの民放局で実施に至らず、すでにAMステレオを実施している民放局も一部を除いて親局のみで行う[注 1]

2000年代後半以降、モトローラ社がAMステレオ放送維持に必要な送信機(ラジオマスター)等を2000年代半ばまでに打ち切った事や、放送事業者の経営合理化、放送局の送信機更新の際にAMステレオ放送維持のための装置が2000年代半ばまでに生産終了になったこと、AMステレオ受信機は割高であったため普及しなかった[2]などの理由にてモノラル放送に戻す事例も続いており、九州朝日放送2007年4月1日に終了[2]熊本放送2008年9月28日に終了、毎日放送と北海道放送2010年2月28日に終了[3]、朝日放送が2010年3月14日に終了、STVラジオが2010年3月28日に終了、RKB毎日放送が2010年5月30日に終了、TBSラジオが2011年1月30日に終了[4]中国放送が2011年3月13日に終了、山陽放送が2011年3月27日に終了、文化放送が2012年2月5日に終了[5]東海ラジオが2012年5月13日にラジオマスター更新に際してAMステレオ放送を終了[6]CBCラジオ2021年1月10日に終了[7]、ニッポン放送が2024年3月31日に終了し[8]モノラル放送に戻した。2024年4月時点におけるAMステレオ放送実施局はラジオ大阪・和歌山放送の2局のみとなっている。

日本では放送開始より前の1991年10月にアイワが初の対応機を出しソニーがそれに続いた。その他のメーカーからも対応機は出たが、数年後にはアイワ以外からの新製品はほとんど無くなった。アイワはその後も継続していたが、2002年1月にソニーに吸収合併された後は対応した新機種は無くなった。2013年を以て既存対応機種も全て生産を終了し、同年末までに販売終了になった。

日本で普及・定着しなかった原因として、次の理由が挙げられている。

日本放送協会(NHK)がこの放送方式の導入を見送ったこと。

放送法においてNHKは「日本全国に均一な放送をする」義務が定められており、全国47都道府県全てにAMステレオ放送を導入すると莫大な経費がかかる(特にステレオ放送対応の送信機が高額とされている。中継回線使用料は仮に実施した場合でもほとんど影響しなかった[注 2])とされたため[注 3]

既にNHK-FMでステレオ放送を行っておりNHK中波放送の聴取者は高齢層が多かったためにAMステレオ放送を生かせる番組が少ないとされ[注 4]、中波でのステレオ放送は不要と判断したため[注 5]


全ての中継局をステレオ化すると回線使用料が割高になること[注 6]

AMステレオ放送を開始するとステレオ聴取可能エリアがモノラルに比べて狭まることで広告料金低下を嫌う営業部門からの反発があること[9]

放送設備のステレオ化対応やメンテナンスに多額の費用がかかること[注 7]

普通のモノラル受信機に対して、AMステレオ受信機は値段が割高なこと[2][注 8]や受信するためのICチップを生産しているメーカーが少ないこと[10]

AMステレオでは安定して受信できない場合があること。夜間、韓国や北朝鮮などの近隣諸国の局との混信の影響やAM受信環境全般が年々悪化傾向であること[11]など。

以上のような理由で日本ではAMステレオ放送は定着しなかったが、以下のような手段でAM放送の番組をステレオで聴取可能である。

radikoインターネットストリーミングを利用したサイマル配信[注 9]。2010年に試験配信から実用化(実際にAMラジオの番組がradikoで高音質のステレオ音声で聴けるようになっている)。

FM補完中継局(ワイドFM)によるAMとのサイマル放送。

ワンセグ2サービスによるAMのサイマル放送[注 10]

かつては地上デジタルラジオ[注 11]によるAMラジオのサイマル放送の実用化が控えていた。

沿革「振幅変調#AMステレオの方式」も参照

1926年11月 - アメリカ電信電話会社(現:AT&T)のP.K.ポッターが、直交変調方式の特許を取得。

1958年から1959年頃 - アメリカでWABC、WCBS、WNBC、KDKAの計4局がAMステレオの実験放送を行う[12]

1959年1月 - 全米ステレオ委員会(NSRC)設置。

1960年頃 - アメリカFCC(連邦通信委員会)、AMステレオ放送の申請を却下。

1962年7月21日 - 日本のTBSラジオがJO2KRのコールサインで番組終了後の深夜にAM-FM方式による、ステレオ実験放送を行い[12]以後、1964年まで実施した。

1970年5月 - メキシコXETRA局がカーン方式(ISB方式)で、実験放送を約3年間実施した。

1975年9月 - AMステレオ放送の実施に向け、全米AMステレオ委員会(NAMSRC)が設置される。その後、NAMSRCにより実験放送が行われ討議される。実験放送を行ったのは加盟する放送局の一部の局である。

1977年12月 - NAMSRCが、アメリカFCCに、報告書を提出する。

1978年 - NAMSRCの報告を受け、アメリカFCCはAMステレオの標準方式としてモトローラ、カーン、マグナボックス、ベラー、ハリスの全5方式を選定する。このアメリカFCCの選定を受け、これらの5方式によって再度、NAMSRCにより実験放送が行われ討議される。実験放送は翌年まで行われた。この時も実験放送を行ったのは、それに加盟している放送局の一部の局である。

1979年

NAMSRC、AMステレオ方式の標準方式として、マグナボックス方式を選定。アメリカFCCに報告書を提出。

メキシコで、カーン方式による、AMステレオの実用化試験放送が始まる。


1980年4月 - アメリカFCC、AMステレオ方式の標準方式としてマグナボックス方式を仮決定する。

1981年 - アメリカFCC、方式決定に際して放送局の技術者や他のメーカの反発が強かったため、マグナボックス方式採用の仮決定を撤回して再度選定を行う。

1982年

3月 - アメリカFCC、AMステレオの標準方式として選定した5方式全部を全て認可して自由競争に任せる決定をした。

7月 - アメリカのKDKA、KTSAの2局がカーン方式による全米初のAMステレオ放送を開始。

アメリカ大手カーラジオメーカーであるデルコ社が、搭載するAMステレオチューナーの方式にモトローラ方式を採用。この決定が、アメリカでのモトローラ方式の大幅な普及と他の国への標準化に大きな影響を及ぼすこととなる。


1984年

10月 - オーストラリアでAMステレオの標準方式として、モトローラ方式が採用される。

12月 - ハリス社が、モトローラ方式の放送システムを製造販売するライセンス契約をモトローラ社と締結。これによりハリス方式は事実上、市場から撤退することとなった。


1986年1月 - 日本で中波ステレオ放送の方式決定、実用化に当り中波ステレオ放送の地上波実験を開始して1991年頃まで継続した。

1991年

4月 - 郵政省の電気通信技術審議委員会が日本での中波ステレオ放送の標準方式をモトローラ方式とする決定を下し、郵政大臣に報告する。これを受けてその後、電波法省令の改正、中波ステレオ放送に関する技術基準の策定が行われ1992年1月16日に施行された。

10月 - 日本国内向け初のAMステレオ受信機、高級CDラジカセのアイワCSD-SR80が発売される。


1992年

3月15日 - 9時、TBSラジオ、文化放送、ニッポン放送、毎日放送朝日放送が一斉にAMステレオ放送の本放送を開始する。

4月1日 - 福岡県のRKB毎日放送九州朝日放送がAMステレオ放送を開始。

4月4日 - 愛知県(中京広域圏)のCBCラジオ(当時はテレビ・ラジオ兼営局の中部日本放送)、東海ラジオがAMステレオ放送を開始。

8月1日 - 北海道放送が、AMステレオ放送を開始(札幌放送局のみ)。

10月1日 - 広島県の中国放送が、AMステレオ放送を開始。

10月5日 - 岡山県の山陽放送(現・RSK山陽放送)が、AMステレオ放送を開始。


1993年

3月29日 - ラジオ大阪が新社屋移転にあわせて、AMステレオ放送を開始。

10月1日 - 熊本放送が、AMステレオ放送を開始。

アメリカFCC、自由競争の結果、モトローラ方式をAMステレオの標準方式とする決定を下す。


1996年

7月14日 - 和歌山放送が、AMステレオ放送を開始。

10月7日 - STVラジオ(当時はテレビ・ラジオ兼営局の札幌テレビ放送)が、AMステレオ放送開始(札幌局のみ。2024年時点で、日本国内最後のAMステレオ化実施)。


1999年5月20日 - パイオニアコンポーネントステレオ向けのAMステレオ放送対応チューナーF-D3を発売開始[13]

2007年4月1日 - 九州朝日放送が日本国内で初めてAMステレオ放送の実施を終了し、翌4月2日より従前のモノラルに戻した。

2008年9月28日 - 熊本放送が、AMステレオ放送を終了。

2010年

2月28日 - 毎日放送、北海道放送がAMステレオ放送を終了[3]

3月14日 - 朝日放送が、AMステレオ放送を終了。在阪局で実施しているのはラジオ大阪のみになる。

3月28日 - STVラジオが、AMステレオ放送を終了。

5月30日 - RKB毎日放送が、AMステレオ放送を終了。


2011年

1月30日 - TBSラジオが、AMステレオ放送を終了[4][注 12]

3月13日 - 中国放送広島本局が、AMステレオ放送を終了[14]

3月20日 - 山陽放送高梁局が、AMステレオ放送を終了[15]

3月27日 - 山陽放送岡山本局が、AMステレオ放送を終了[15]


2012年

2月5日 - 文化放送が、AMステレオ放送を終了[5]

5月13日 - 東海ラジオが、AMステレオ放送を終了[6]


2021年1月10日 ‐ CBCラジオが、AMステレオ放送を終了[7]

2024年3月31日 - ニッポン放送が、AMステレオ放送を終了[8][注 13][注 14]


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