AKIRA_(漫画)
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

物語のラストも、子供の頃の思い出話の中でエンディングを迎える予定だったという『Fire-ball』の構想を踏襲している[18]。また大友は、本作を直前に連載していた『童夢』よりもう少し自由に作ろうと考えていた[18]。『童夢』では、1本の映画のように描こうとして最初に構成をしっかり固めたせいでそれを守るために苦しむことになったので、登場人物たちが勝手に動いてどんどんストーリーを展開させていくという、白土三平の「カムイ伝」や手塚治虫の「火の鳥」や「ジャングル大帝」のようなある種の古い長編漫画の描き方を実践した[18]

東京(実際は復興したネオ東京)を舞台にしたことについて、大友はインタビューで「東京が好きで、別の形で東京を語り直してみたい欲望があった」「戦後の復興期から東京オリンピックの頃の様な混沌を構築したかった。(東京の様に)こんなに無思想で歪んでめまぐるしく変化していく都市は魅力的」と述べている[20]。また、「『昭和の自分の記録』として、廃墟からオリンピックまでの昭和の東京を描こうとした」という事も語っている[21][22]。漫画の『AKIRA』は、自分の中では、世界観として「昭和の自分の記録」といいますか。戦争があって、敗戦をして。政治や国際的ないろいろな動きがあり、安保反対運動があり、そして東京オリンピックがあり……東京というのは昭和のイメージがものすごく大きいんですよね。 ? 大友克洋

ただし、「大友は失われつつある過去の東京を惜しむというよりは変化し続ける混沌の方をこそ愛している様だ」と雑誌ライターの近藤正高は評している[20][21]。また、偶然にも現実の東京オリンピックが作中と同じ2020年に開催されたことについては、単純に現実世界で連載が開始された1982年が第2次世界大戦終結から37年後だったので、そのまま(作中の第3次世界大戦から同じ37年後の2020年に)当てはめたのだろうと述べている[20][21][注 6]

バイクの暴走族の不良少年を主人公とした事については以下の様に述べている[22]。登場人物たちはみんな若者にしました。……ただ単に暴走して、つまんない世界にいる人間たちを主人公にして、東京の中のいろんな政治や、大きな秘密の中に触れながら、どうしようもない若者たちが少しは成長していくという話を作ったんです。話はSFなんですけど、少しずつ自分たちで何かを見つけるんだよというメッセージは描きたいなと思っていました。それは、社会に参加して、または世界に参加して、自分たちで自分たちの道を発見する話なんです。…(中略)…いろんなことがあるんですけど、自分たちが見つけたもの、そして、自分たちがこれからなんかやってくんだよというメッセージは込めました。 ? 大友克洋
受賞

1984年 - 第8回
講談社漫画賞一般部門

1992年 - アイズナー賞(アメリカ)最優秀彩色部門(『国際版AKIRA』)

2002年 - アイズナー賞(アメリカ)最優秀アーカイブプロジェクト部門および最優秀国際作品部門(『国際版AKIRA』)

ストーリー

1982年12月6日午後2時17分[21][注 7]関東地方で「新型爆弾」が炸裂し、東京は崩壊。これが引き金となり起こった第三次世界大戦から、世界は再建の途上にあった。
1巻(PART1 鉄雄)

2019年東京湾には超高層建築物が林立する新首都「ネオ東京」が建設され、その繁栄は爛熟の極に達していた。しかし、その足元では反政府デモ隊と警察が衝突する騒然とした状態が続いていた。崩壊ののち放置されていた「旧市街」(かつての東京)でも、2020年の東京オリンピック開催を機に、都市再開発が進められようとしていた。

主人公である職業訓練校生・金田率いるバイクチームの少年たちは、旧市街へと続く遺棄されたハイウェイに入り込んでバイクを走らせていたところ、「爆心地」付近で白髪の少年と遭遇する。彼はアーミー(軍)の研究機関「ラボ」から、反政府ゲリラによって連れ出された実験体・タカシ(26号)であった。

バイクチームのメンバー・鉄雄は、突然現れたタカシを避けきれず事故を起こし負傷する。鉄雄は治療のためタカシと共にラボに連れ去られるが、タカシとの接触をきっかけに鉄雄の中に能力が目覚め始める。

金田たちは連れ去られた鉄雄を探すなかで、能力研究の秘密を追う反政府ゲリラのメンバーである竜、ケイの二人と出会い、大佐率いるアーミーやマサル(27号)とのタカシ争奪戦に巻き込まれる。退院し学校に戻ってきた鉄雄は、以前のようなおとなしく気の弱い少年ではなく、敵対する暴走族・クラウンのメンバーを殺しかけ、止めに入った金田に反抗する。

ラボの病院を脱走した鉄雄はクラウンのアジトに乗り込み、能力を使いメンバーを殺害し、リーダーのジョーカーを屈服させて新たなリーダーの座に納まると、他の暴走族への攻撃を開始した。金田はクラウンに対して、他の暴走族と糾合して反撃を試みる。

ネオ東京の路上を舞台にバイクチーム同士の大規模な抗争が起こるが、金田たちは能力を使う鉄雄ひとりの前になすすべなく敗れる。鉄雄はかつての仲間であった山形を金田の目前で惨殺し、金田に拳銃で撃たれる。

そこへアーミーの部隊が到着する。能力発現にともなう頭痛に苦しむ鉄雄に対し、大佐は研究機関への帰還を促し、彼に「41号」と呼びかける。
2巻(PART2 アキラ)

バイクチームの抗争はアーミーにより制圧され、鉄雄、金田、ケイらは大佐によってラボが入る超高層ビルに連行される。そこにはタカシ、キヨコ(25号)、マサルという、先の世界大戦以前の極秘研究プロジェクトで能力を開発された、老人のような顔をした子供たち「ナンバーズ」も住まわされていた。薬物を投与されながら能力を開花させつつあった鉄雄は、研究の核心にある「アキラ(28号)」に強い関心を持つ。

かつてナンバーズの子供たちの仲間であったアキラは、30年近くに渡って政府が巨費を投じ封印し続けている、謎の存在だった。一方、ラボを訪れた大佐に対して、予知能力を持つキヨコは、アキラの目覚めとネオ東京の崩壊が間もなく起こることを告げる。

キヨコはケイを能力で操り、アキラを探る鉄雄を止めようとするが、鉄雄はラボを逃げ出して旧市街に向かい、爆心地に建設中のオリンピックスタジアムの地下に隠されたアーミーの極秘施設を襲撃する。追ってきた大佐らの説得に耳を貸さず、鉄雄は絶対零度で冷凍封印されていたアキラを目覚めさせ、連れ出してしまう。

アキラが外へ出たことを知った大佐は非常事態宣言を発令させ、軍事衛星「SOL」(軌道レーザー衛星兵器)によるレーザー照射を使ってアキラと鉄雄の殺害を試みる。鉄雄は攻撃を受けて右腕を失い生死不明となり、アキラは混乱の中でラボを脱出し追ってきたケイと金田によって保護される。
3巻(PART3 アキラ II)

連れ出されたアキラを巡って、アキラを特別な存在と考えるミヤコの教団と、アキラを取り返そうとするアーミーとの争奪戦が始まる。ケイたちからアキラを預かった野党党首の根津は、支持母体の長であるミヤコを裏切り、部下であるゲリラも切り捨て、自らの政治的野望のためにアキラを利用しようとするが、ケイや竜、チヨコ、金田らは根津の手先から逃げ延び、アキラを連れ去る。

一方、アキラ争奪戦における非常事態宣言発令の混乱の責を政府に問われた大佐は、アキラ行方不明という非常事態に際しても与野党の醜い政争が続く状況に業を煮やし、クーデターを決行。ネオ東京に戒厳令を敷いてアーミーの大部隊を出動させ、アキラを捜索する。

根津の私兵、ミヤコの教団が独自に育成した能力者、大佐率いるクーデター部隊、金田たちによるアキラ争奪戦は、早朝の運河で金田らがアーミーに追い詰められたことで幕を閉じる。大佐の連れてきたナンバーズの子供たちがアキラの元に集まるが、アキラを射殺しようとした根津の弾丸がタカシの頭に当たってしまう。ナンバーズやアキラたちの脳内に衝撃が走り、それを引き金にアキラは37年前に東京を壊滅させた能力を再び解放した。

アキラを中心に現れた光が爆発的に拡大してビル群を飲み込み、ネオ東京のあらゆる建物が崩壊し地盤とともに海へと崩れ落ちる。ケイや大佐らはナンバーズの子供たちによる瞬間移動で難を逃れたものの、金田は光に飲み込まれ行方不明になる。

ネオ東京の崩壊後、ひとり爆心地にいたアキラの前に、SOLによる攻撃を生き延びていた鉄雄が現れる。
4巻(PART4 ケイ)

廃墟となったネオ東京は政府やアーミーによるコントロールを失い、完全な無政府状態と化していた。鉄雄はアキラを「大覚」に祭り上げ、被災者を集めて「大東京帝国」という勢力を築き上げる。

外部からの接触を拒み、孤立した集団の支配者となった鉄雄は、被災者への食料に薬物を混ぜ、帝国の構成員にも薬物を投与して能力者を育てようとしていた。一方、ミヤコの教団は被災者に食糧や能力による治癒を与えてもう一つの勢力を築いており、ケイらゲリラの生き残りも、薬物欠乏に苦しむナンバーズらと共に教団へと身を寄せる。鉄雄はやがて、薬物でも自らの力を抑えられないようになっていく。

ネオ東京の廃墟では、切り札であるSOLの発射ボタンを持って単身で鉄雄に挑む大佐、ジョージ山田率いるアメリカ海兵隊特殊部隊、ゲリラの生き残りである竜のグループが、それぞれ大東京帝国へと迫る。

鉄雄は「隊長」が集めてきた少女たちに致死量の薬物を与え、破滅的なセックスに耽溺する。一人の少女が薬物を家族に持ち帰ろうとして飲まなかったため生き残ると、鉄雄はその少女・カオリを侍女として仕えさせるが、次第に彼女に依存していく。

鉄雄は、一言も発さず感情を表さないアキラをいぶかしみ、アキラの心の中を覗いて激しいショックを受ける。アキラとは何なのかを問うため、鉄雄はひそかにミヤコの下を訪れる。自らもナンバーズ(19号)であるミヤコはプロジェクトの全容を語り、アキラに近づくことができるのは鉄雄しかいないと説く。

ナンバーズとミヤコの教団のつながりを掴んだ隊長は鉄雄に指示を請うが相手にされず、独断で兵を率いてミヤコの教団と激しい戦闘となる。その最中、薬物の摂取を止めて苦しみに耐える鉄雄は、大佐が再び放ったSOLのレーザーに刺激され、能力の爆発的覚醒を起こして空中へと飛翔し、光を集める。

その光の中から、ネオ東京崩壊時にアキラの球体に飲みこまれたビルの残骸が出現して地上へ落下し、その中に金田の姿もあった。
5巻(PART5 ケイ II)

ケイや甲斐、ジョーカーらと再会した金田がようやくネオ東京崩壊以後の状況を理解した頃、大東京帝国はミヤコ教の勢力に被災者を奪われている状況に危機感を持ち、構成員の士気を高めるためにオリンピックスタジアムで大集会を開くことを計画する。一方、ネオ東京沖合のアメリカ海軍艦隊の空母では、アキラを巡る現象を調査する米・ソ共同の「ジュヴィナイルA」計画に参加する軍人や科学者たちがアキラや鉄雄による力の発動を観測していた。鉄雄の能力の膨張は留まることを知らず、沖合の空母を急襲して自分を観測する科学者たちの前に姿を現し、研究者たちを嘲笑する。

ジョージ山田としばらく行動を共にしていた竜は、山田がBC兵器でアキラと鉄雄を抹殺しようとしていることを知る。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:150 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef