AKIRA_(漫画)
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さらに、アメリカのストリートウェアブランド「シュプリームは、2017年秋に『AKIRA』とコラボしたコレクション「AKIRA/Supreme」を発表し[13]ファレル・ウィリアムスはコラボしたシャネルのコレクションで『AKIRA』にインスパイアされたビジュアルを発表するなど、ファッション業界にまでも影響を及ぼしている[12]。ヨーロッパでもその評価は高く、フランスバンド・デシネ作家バスティアン・ヴィヴェスは、『AKIRA』に受けた衝撃について「若者がヒーローで、暴力、薬物、性といったタブーや大人の問題に対峙するストーリーにショックを受けた」と語っている[14]

作品には、大友が尊敬する漫画家の一人、横山光輝の漫画『鉄人28号』へのオマージュがこめられている[15]。アキラのナンバーが28号となっているのは鉄人の28号をそのまま使っているためであり、金田や鉄雄、大佐などのキャラクターの名前も同作からの引用である[15]。また「大戦中に開発された究極の兵器が平和な時代に発見され、それを巡って物語が展開する」という全体の筋書きは『鉄人28号』とほぼ同じである[15]

漫画(コミックス第4巻以降[注 5])やアニメに使用された題字は平田弘史が手掛けたもの[16]

2000年代に入ってから米ハリウッドでの実写映画化が何度も報じられ、2019年には日本のアニメスタジオによる新アニメ化プロジェクトも発表されている[17]
制作の背景

『AKIRA』の企画は、『ヤングマガジン』が創刊されてから間もない時期にスタートした[15]。大友は講談社の人間に何度も繰り返し「何か描いて欲しい」と頼まれ、短編の『武器よさらば』と『彼女の想いで…』を掲載した後、連載を開始した[15]。最初の打ち合わせでは「エピソードが10話ほどとかなり短く、(連載は)すぐに終わるだろう」と言われたので、大友自身はヒットするとは全く思わなかったという[15]

本作の原型は、双葉社の漫画雑誌『アクションデラックス』(1979年1月27日号)に掲載された中編『Fire-ball』[18][19]。大友は未完だった同作をいつか描き足して完結させたいと思っていたが、自身の絵柄が大きく変化していった時期であったので、再び同じところへ戻るのは嫌だった[18]。また、やるなら全部やり直さなければならないと考えていたため、同じものをやるくらいなら新しい作品の中に組み込もうということで『AKIRA』を始めた[19]。そのため、超能力を題材に、力のある2人の葛藤・対決を描くという作品の構成は『Fire-ball』から変わっておらず、政府の超能力研究、反政府ゲリラ、都市の破壊等の要素も引き継がれている[18][19]。物語のラストも、子供の頃の思い出話の中でエンディングを迎える予定だったという『Fire-ball』の構想を踏襲している[18]。また大友は、本作を直前に連載していた『童夢』よりもう少し自由に作ろうと考えていた[18]。『童夢』では、1本の映画のように描こうとして最初に構成をしっかり固めたせいでそれを守るために苦しむことになったので、登場人物たちが勝手に動いてどんどんストーリーを展開させていくという、白土三平の「カムイ伝」や手塚治虫の「火の鳥」や「ジャングル大帝」のようなある種の古い長編漫画の描き方を実践した[18]

東京(実際は復興したネオ東京)を舞台にしたことについて、大友はインタビューで「東京が好きで、別の形で東京を語り直してみたい欲望があった」「戦後の復興期から東京オリンピックの頃の様な混沌を構築したかった。(東京の様に)こんなに無思想で歪んでめまぐるしく変化していく都市は魅力的」と述べている[20]。また、「『昭和の自分の記録』として、廃墟からオリンピックまでの昭和の東京を描こうとした」という事も語っている[21][22]。漫画の『AKIRA』は、自分の中では、世界観として「昭和の自分の記録」といいますか。戦争があって、敗戦をして。政治や国際的ないろいろな動きがあり、安保反対運動があり、そして東京オリンピックがあり……東京というのは昭和のイメージがものすごく大きいんですよね。 ? 大友克洋

ただし、「大友は失われつつある過去の東京を惜しむというよりは変化し続ける混沌の方をこそ愛している様だ」と雑誌ライターの近藤正高は評している[20][21]。また、偶然にも現実の東京オリンピックが作中と同じ2020年に開催されたことについては、単純に現実世界で連載が開始された1982年が第2次世界大戦終結から37年後だったので、そのまま(作中の第3次世界大戦から同じ37年後の2020年に)当てはめたのだろうと述べている[20][21][注 6]

バイクの暴走族の不良少年を主人公とした事については以下の様に述べている[22]。登場人物たちはみんな若者にしました。……ただ単に暴走して、つまんない世界にいる人間たちを主人公にして、東京の中のいろんな政治や、大きな秘密の中に触れながら、どうしようもない若者たちが少しは成長していくという話を作ったんです。話はSFなんですけど、少しずつ自分たちで何かを見つけるんだよというメッセージは描きたいなと思っていました。それは、社会に参加して、または世界に参加して、自分たちで自分たちの道を発見する話なんです。…(中略)…いろんなことがあるんですけど、自分たちが見つけたもの、そして、自分たちがこれからなんかやってくんだよというメッセージは込めました。 ? 大友克洋
受賞

1984年 - 第8回
講談社漫画賞一般部門

1992年 - アイズナー賞(アメリカ)最優秀彩色部門(『国際版AKIRA』)

2002年 - アイズナー賞(アメリカ)最優秀アーカイブプロジェクト部門および最優秀国際作品部門(『国際版AKIRA』)

ストーリー

1982年12月6日午後2時17分[21][注 7]関東地方で「新型爆弾」が炸裂し、東京は崩壊。これが引き金となり起こった第三次世界大戦から、世界は再建の途上にあった。
1巻(PART1 鉄雄)

2019年東京湾には超高層建築物が林立する新首都「ネオ東京」が建設され、その繁栄は爛熟の極に達していた。しかし、その足元では反政府デモ隊と警察が衝突する騒然とした状態が続いていた。崩壊ののち放置されていた「旧市街」(かつての東京)でも、2020年の東京オリンピック開催を機に、都市再開発が進められようとしていた。

主人公である職業訓練校生・金田率いるバイクチームの少年たちは、旧市街へと続く遺棄されたハイウェイに入り込んでバイクを走らせていたところ、「爆心地」付近で白髪の少年と遭遇する。彼はアーミー(軍)の研究機関「ラボ」から、反政府ゲリラによって連れ出された実験体・タカシ(26号)であった。

バイクチームのメンバー・鉄雄は、突然現れたタカシを避けきれず事故を起こし負傷する。鉄雄は治療のためタカシと共にラボに連れ去られるが、タカシとの接触をきっかけに鉄雄の中に能力が目覚め始める。

金田たちは連れ去られた鉄雄を探すなかで、能力研究の秘密を追う反政府ゲリラのメンバーである竜、ケイの二人と出会い、大佐率いるアーミーやマサル(27号)とのタカシ争奪戦に巻き込まれる。退院し学校に戻ってきた鉄雄は、以前のようなおとなしく気の弱い少年ではなく、敵対する暴走族・クラウンのメンバーを殺しかけ、止めに入った金田に反抗する。

ラボの病院を脱走した鉄雄はクラウンのアジトに乗り込み、能力を使いメンバーを殺害し、リーダーのジョーカーを屈服させて新たなリーダーの座に納まると、他の暴走族への攻撃を開始した。金田はクラウンに対して、他の暴走族と糾合して反撃を試みる。

ネオ東京の路上を舞台にバイクチーム同士の大規模な抗争が起こるが、金田たちは能力を使う鉄雄ひとりの前になすすべなく敗れる。鉄雄はかつての仲間であった山形を金田の目前で惨殺し、金田に拳銃で撃たれる。

そこへアーミーの部隊が到着する。能力発現にともなう頭痛に苦しむ鉄雄に対し、大佐は研究機関への帰還を促し、彼に「41号」と呼びかける。
2巻(PART2 アキラ)

バイクチームの抗争はアーミーにより制圧され、鉄雄、金田、ケイらは大佐によってラボが入る超高層ビルに連行される。


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