AKB48
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

しかし同時に、前述の競争原理の導入によって、空気系にありがちな予定調和を効果的に破壊している面もあると指摘している[538][539][540]
キャラクター消費

宇野や斎藤環は、AKB48のメンバーのキャラ(キャラクター)がファンから消費されていて、それが運営戦略と密接にかかわっているとの見解を述べている。各メンバーのキャラは必ずしも固定的ではないものの、おおむね役割分担がなされており、メンバーが人気を維持できるか否かは容姿やスタイル、歌唱力といった要素よりもキャラの確立の成否に依存している面があるという[541]

斎藤は、チーム別のサブグループ編成や選抜総選挙という序列付けによって、メンバーのキャラが固定されやすく認識されやすいシステムになっており、さらに握手会をはじめとするふれあいを重視したコンセプトによりファンはメンバーのキャラ形成に直接的に関与できるという幻想にかきたてられるようになっていると述べている。

このように小集団内部で(人気の度合いを表す)序列化とキャラの分化が同時進行するという構造は、日本の現代の学校で生徒間に自然に形成される序列であるスクールカーストの構造と同型だと指摘した[注釈 72][541][542]。宇野は、この斎藤の論を踏まえて、上述の「中間項としてのテレビ媒体を短絡してファンとの距離感を縮める」という手法が、ファンコミュニティと運営サイドの相互作用でメンバーのキャラを循環的に生成・強化させていると主張した。

ファンは、劇場公演やブログでの些細な発言などから得られる、メンバー間の友人関係や性格といった様々な情報をインターネット上のコミュニティなどで共有し、それは例えばウィキペディアなどに投稿されることによって、集合知的に蓄積される。このようなファンコミュニティの後押しを受けて、各メンバーのキャラ設定は効率的に生成されていく。それに加えて、今度は運営サイドがそのキャラ設定を元にした(あるいはあたかも二次創作のように、それを元に少しアレンジが加えられた)キャラをメンバーに出演するテレビドラマの役柄などとして与え、それをファンが消費することにより、もともとのキャラの認識が強化されるというフィードバックが働くという。宇野はこれを「キャラクター消費の永久機関」と名付けた[543][544][545][546]
グローカル化による展開と人気の浸透

AKB48の日本国内外での姉妹グループの展開について、田中秀臣は、ローカル化とグローバル化の同時進行(グローカル化)を行っている側面があると指摘している[547]

AKB48の人気が高まるにつれ、2010年ごろからAKB48のグループ名をもじってアルファベット略語+数字のユニット名を創作して作品や広告などに用いる、オマージュもの[注釈 73][548][549]が複数登場するようになった。同様にAKB48選抜総選挙のシステムに似せたり、企画名に「総選挙」を付けた類似の人気投票企画[注釈 74][550][551][552][553]も登場する[554]
AKB48のビジネスモデル
日本経済との関係

田中秀臣は著書『AKB48の経済学』(2010年)で、当時日本の音楽市場での影響力を増しつつあったAKB48のビジネスモデルを分析し、AKB48は不況下にも強い「デフレカルチャー」[注釈 75]のひとつだという説を提唱した[556]

2000年代以降のCD不況の中、J-POPのアーティストはコンサートで収益金を確保するスタイルが主流になり、入場料金は高額になりがちであった。これに対し、AKB48の劇場公演のチケットは一般的なアーティストのライブに比べれば、はるかに安価に設定されており、写真集をはじめとする関連商品の価格も相場より低めに設定されている。これは収入の低い若者のアイドルオタクにターゲットを絞ったマーケティング戦略であるという。

AKB48のメンバーの多くがブログTwitterを開設しており、ファンはそれをチェックするという形で、事実上出費の伴わない消費を行っているが、これもデフレ文化の典型として解釈できる。同時に、文化経済学に関する著書のある経済学者タイラー・コーエンが「心の消費」と呼んだ金銭を移動させることのない非経済的活動のひとつとも捉えられるという[557]

金子勝は、AKB48のビジネスモデルは低価格路線の維持のために、低賃金労働で従業員を搾取するユニクロの経営手法と類似しており、デフレ経済を定着させるものだと批判している[558]。これに対して田中はそもそもアイドル市場は日本経済に影響を与えるほどのスケールではなく、結果と原因を取り違えている。つまりAKB48の経営手法がデフレーションを生むのではなく、デフレーションという経済状況に適応するために生まれたのが、AKB48の戦略であると反論している[559]

これに関連して、田中は『日本経済復活が引き起こすAKB48の終焉』(2013年)で、アベノミクスを通じた日本経済の復調により、デフレ経済が解消されインフレーションになればAKB48の人気は後退する、あるいは終焉を迎えるのではないかとの見方を述べている[560]
グローバル展開・アジアでの受容

30年間にわたって多国籍企業のグローバル戦略を研究してきたハーバード・ビジネス・スクール教授のフアン・アルカーセルは、AKB48のグローバル展開を教材にした"AKB48:Going Global?"を書き、この教材はMBAプログラムの「国際競争戦略」という授業で使われている[561]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:596 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef