ADSL
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ADSL(エーディーエスエル、Asymmetric Digital Subscriber Line:非対称デジタル加入者線)とは、デジタル加入者線(DSL)の一種である。

一般のアナログ電話回線ツイストペアケーブル通信線路)を流用してブロードバンドインターネット接続サービスを提供することができる高速デジタルデータ通信技術若しくは電気通信役務であり、日本では2000年代前半に急速に普及した。

非対称(Asymmetric)とは、アップロードとダウンロードの理論上の通信速度が異なることを意味する。
技術
概要

ADSLの技術は1990年代にスタンフォード大学とベルコア社が提案したメタリックケーブルを利用した高速デジタルアクセス技術である[1]

ADSLは複数あるxDSL規格の1つである。xDSLの技術は大きく分けて上り信号と下り信号が同じだけの帯域幅を持つSDSL(Symmetric Digital Subscriber Line、対称デジタル加入者線)と上りと下りで帯域幅が異なるADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line、非対称デジタル加入者線)に分けられ、またそれぞれの中でも細かな変調方式の違いやモデムチップメーカーの技術的な思惑の違い、技術革新による性能向上規格の登場、各国独自の既存電話事情、等によって多くの規格が乱立した。たとえば日本でのみ普及していたISDNの周波数帯とのノイズ干渉を避けるG.992(G.dmt/G.Lite)Annex C等が代表的である。

2010年頃から、ヨーロッパを中心に複数のSDSL回線を束ねて使用するEFM(Ethernet in the First Mile)という専用線サービスが普及しつつある。 一般電話回線の周波数帯域の模式図。PSTNが音声部分、Upstreamが上り、Downstreamが下りに当たる。

ADSLの特徴として、一方の通信帯域を削ることでもう一方により大きな通信帯域を割り当てている(非対称)。通常は下り(ダウンリンク)の速度が上り(アップリンク)の速度よりも高速に設定されている。これは一般家庭などでのインターネット利用ではWebアクセスなどの用途が主となるため、ダウンリンクデータの容量がアップリンクデータに比べて遥かに多く、ダウンリンクを優先することで総合的にデータ通信速度を高速化するためである。

既設のツイストペアケーブル通信線路でアナログ固定電話による通話と同時に信号を伝送するため、周波数帯域(0.3 - 3.4kHz)を避けたより高く広い周波数帯域を使用し、複数の搬送波を利用したOFDMなどのデジタル変調を使用しADSLモデムで誤り検出訂正や回線にあわせた通信速度調整を行っている。そのため、従来の電話回線モデムや低速仕様のISDNなどと比べて高速なデータ通信が可能である。
通信規格

次の2種類の規格から提供が始まった。
G.992.1(G.dmt)
ダウンリンク8M
bps(148?1104kHzの帯域を利用)・アップリンク1Mbps(26?138kHzの帯域を利用)
G.992.2(G.Lite)
ダウンリンク1.5Mbps(148?552kHzの帯域を利用)・アップリンク512kbps(26?138kHzの帯域を利用)

次のようなものが拡張規格として定められている。
Annex A
北米向け。
Annex B
ヨーロッパのエコーキャンセラ方式のEuro-ISDNと同時使用が可能。
Annex C
日本時分割複信TCM-ISDNとの干渉を抑えるため、2つの伝送マップを持ち、ISDNの伝送方向に同期して切替える。

以下のような技術を用いることによりダウンリンク12, 24, 40Mbps、アップリンク3, 5Mbpsなどと高速化されていった。
S=1/2 1/4 1/8 1/16
誤り訂正ビット列を効率化する。
フルビットローディング(full-bit loading)
1つの搬送波の1回の変調で送信するビット数を11?12から15ビットへと拡張する。
ハイビットローディング(high-bit loading)
1つの搬送波の1回の変調で送信するビット数を15ビット以上とする。
ダブルスペクトラム方式(Double Spectrum)
使用する周波数帯域を倍(最大2.2MHz)に拡張する。
クワドラプルスペクトラム方式(Quadruple Spectrum)
使用する周波数帯域を約4倍(最大3.75MHz)に拡張する。

また、アップリンクを低周波数側、ダウンリンクを高周波数側とすることで、送受信の分離(周波数分割複信)をしているものが多い。さらに、エコーキャンセラ(Echo Canceller)を使用し、アップリンクとダウンリンクの周波数をオーバーラップ(Over Lap)させ、ダウンリンクの安定化・高速化と共にアップリンクを高速化しているものもある。
機器
ADSLモデム ADSLモデムの一例

ADSLモデムは、ADSL通信に用いられるデータ回線終端装置である。ADSL通信経路の両端末である利用場所と収容局双方に設置される装置で、一般的には利用場所側の装置をADSLモデムと称する。収容局側の装置は複数のADSLモデムの集合体で、DSLAMと称する。

モデムによってはIP電話用のアダプターブロードバンドルーター機能を内蔵しているものもあり、ADSL信号でIP電話を利用することが可能な契約もある。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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