なお、「自然抗体」というのはRh型のように不適合輸血[18]を受けた後などに抗体を生じる「免疫抗体」に対する呼び方だが、実際にはこれも免疫機構によるもので、1950年代にペンシルバニア大学のゲオルク・スプリンガーの実験で無菌状態で育てたヒヨコはABO式血液型の抗原を持っていない[19]が、B抗原を持つ大腸菌を投与すると抗B抗体を持つようになったという報告があることや、人間も腸内細菌のいない新生児の頃は抗A抗体や抗B抗体をもたないが、生後3か月から6か月ほどで持つようになることなどから腸内細菌などに対する免疫の結果生じた抗体とされる[20]。 ABO式血液型の遺伝子分布は母集団(地域や人種)によって差が大きく、コロンブス以前の分布[注釈 6]では、O型遺伝子の率は世界的にどこでも多い[注釈 7]が特にアメリカ大陸の先住民[注釈 8]で、中南米ではO型が100%近くになる地域がある。A型遺伝子が多い地域はヨーロッパ(約25?35%)とオーストラリアの南部と西部の先住民(約30?35%)、また北米でもカナダ・アルバータ州からアメリカ・モンタナ州にかけてのブラッド族・ブラックフィート族(黒足族)と呼ばれる先住民集団[注釈 9]は例外的にA型遺伝子の比率が高い(最大50%以上)。ただ、この3か所はMN式血液型で調べると分布が全く異なる[21]他、後述のB型の分布も大きく異なる。B型遺伝子が多い地域は北部インドからモンゴル(約30%)となり[注釈 10]、逆に南北アメリカ大陸やオーストラリア先住民では極めて少なく(ほぼ0%)、同じモンゴロイド系の人種でもアジア側とアメリカ側で結果が大きく違うため、B型は「アメリカ先住民の新大陸移住(約2万年?1万5千年前)後にアジアで増加した」か「偶然アメリカ先住民の先祖にB型がほとんどいなかった」のどちらかの可能性が高いと考えられる[22]。 なお、アフリカ大陸のABO型分布には取り立てて特徴がなく、大半の地域で一番多いのはO型(65?75%)だが特にこの地域が多いわけではなく、シベリアやヨーロッパ西沿岸部とさほど変わらず、A型はアジアの大半地域並み(15?25%)・B型は東ヨーロッパ(10?15%)程度である[23]。 日本人のABO式血液型の分布はおよそO型32%、A型37%、B型22%、AB型9%だが、古畑種基らの研究によるとわずかに地域差があり、九州・四国・中国ではA型、東北・北陸ではO型がわずかに多く、それぞれ反対の方がその分少ない[注釈 11]という分布の勾配があった。 国別ABO・Rh式血液型割合(人口比)国人口[24]O+A+B+AB+O?A?B?AB?
分布
地理的分布
世界の血液型分布詳細は「w:Blood type distribution by country」を参照
国別ABO・Rh式血液型割合
オーストラリア[25]21,262,64140.0%31.0%8.0%2.0%9.0%7.0%2.0%1.0%
オーストリア[26]8,210,28130.0%37.0%12.0%5.0%6.0%7.0%2.0%1.0%
ベルギー[27]10,414,33638.0%34.0%8.5%4.1%7.0%6.0%1.5%0.8%
ブラジル[28]198,739,26936.0%34.0%8.0%2.5%9.0%8.0%2.0%0.5%
カナダ[29]33,487,20839.0%36.0%7.6%2.5%7.0%6.0%1.4%0.5%
中国[30]1,339,724,85230.1%30.2%29.1%9.6%0.3%0.4%0.3%0.1%
チェコ[31]10,532,77027.0%36.0%15.0%7.0%5.0%6.0%3.0%1.0%
デンマーク[32]5,500,51035.0%37.0%8.0%4.0%6.0%7.0%2.0%1.0%
エストニア[33]1,315,81929.5%30.8%20.7%6.3%4.3%4.5%3.0%0.9%
フィンランド[34]5,250,27527.0%38.0%15.0%7.0%4.0%6.0%2.0%1.0%
フランス[35]62,150,77536.0%37.0%9.0%3.0%6.0%7.0%1.0%1.0%