ABO式血液型
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 スイス[53]8,403,99435.0%38.0%8.0%4.0%6.0%7.0%1.0%1.0%
 トルコ[54]76,805,52429.8%37.8%14.2%7.2%3.9%4.7%1.6%0.8%
 イギリス[55]61,113,20537.0%35.0%8.0%3.0%7.0%7.0%2.0%1.0%
 アメリカ[56]307,212,12337.4%35.7%8.5%3.4%6.6%6.3%1.5%0.6%
加重平均2,744,996,11441.9%31.2%15.4%4.8%2.9%2.7%0.8%0.3%

  50.0%以上  40.0–49.9%  30.0–39.9%  20.0–29.9%  10.0–19.9%  5.0–9.9%
民族別ABO式血液型割合

民族別ABO式血液型割合[57]
民族集団O (%)A (%)B (%)AB (%)
アボリジニ613900
アビシニア人4327255
アイヌ17323218
アルバニア人3843136
アンダマン人960239
アラブ人3431296
アルメニア人3150136
アジア系アメリカ人4028275
オーストリア人3644136
バントゥー4630195
バスク人514441
ベルギー人474283
ボロロ人(英語版)100000
ブラジル人474193
ブルガリア人3244158
ビルマ族3624337
ブリヤート人3321388
サン人563492
中国人-広東人4623256
中国人-北京人29273213
チュヴァシ人3029337
クロアチア人4234177
チェコ人3044189
デンマーク人4144114
オランダ人454393
エジプト民族3336248
イングランド人474293
エスキモー (アラスカ)3844135
エスキモー (グリーンランド)5436238
エストニア人3436238
フィジー人(英語版)4434176
フィン人3441187
フランス人434773
グルジア人4637124
ドイツ人4143115
ギリシャ人4042145
ロマ29273510
ハワイ先住民376121
ムンバイ12294811
マジャル人3643165
アイスランド人5632103
インド人(インド)1722537
ネイティブアメリカン791641
アイルランド人5235103
イタリア人4641113
大和民族30382210
ユダヤ人ドイツ)4241125
ユダヤ人ポーランド)3341188
カルムイク人26234111
キクユ族ケニヤ)6019201
朝鮮民族28323110
サーミ人296344
ラトビア人3237247
リトアニア人4034206
マレー人6218200
マオリ465410
マヤ人98111
モロス6416200
ナバホ族732700
ニコバル人749151
ノルウェー人395084
パプア人 (ニューギニア島)4127239
ペルシア人3833227
ペルー先住民100000
フィリピン人4522276
ポーランド人3339209
ポルトガル人355384
ルーマニア人3441196
ロシア人3336238
サルデーニャ人5026195
スコッツ5134123
セルビア系(セルビア人)3842165
ションペン人 ニコバル系100000
スロバキア人4237165
南アフリカ人4540114
スペイン人3847105
スーダン人6216210
スウェーデン人3847105
スイス人405073
タタール28302913
タイ人3722338
テュルク系民族4334186
ウクライナ人3740186
黒人アメリカ人4927204
白人アメリカ人4540114
キン族4222305

平均43.9134.8016.555.14
標準偏差16.8713.809.973.41

血液型と人類学の歴史

(注:「民族」は本来文化的なもので人種とは無関係だが、この項の『血液型の話』からの引用部位では「民族」を人種の意味で使用している部位がある。)

地域による血液型比率の違い血液型を人類学に最初に応用したのはルードヴィヒ・ヒルシュフェルド夫妻で、第一次世界大戦終結時にマケドニアに集まった各国の兵士8500人の血液型を調べた際、人種の相違によって比率が大きく違う(下図参照)ことを発見し、1918年5月5日にサロニカの医学会で報告。その後いろいろあって遅れたものの、1919年10月18日にイギリスの著名な医学雑誌『ランセット』に掲載された。

『ヒルシュフェルドらの分類』[58]民族名(人数)O型%A型%B型%AB型%民族示数
イギリス人(500)46.443.47.23.14.5
フランス人(500)43.242.611.23.03.2
イタリア人(500)47.238.011.03.82.8
ドイツ人(500)40.043.012.05.02.8
オーストリア人(?)42.040.010.08.02.6
ブルガリア人(500)39.040.614.26.22.6
セルビア人(500)38.041.815.64.62.5
ギリシャ人(500)38.241.616.24.02.5
トルコ人(500)36.838.018.66.61.8
アラビア人(500)43.632.419.05.01.5
ロシア人(500)40.731.221.86.31.3
ユダヤ人(500)38.833.023.25.01.3
マダガスカル人(400)43.526.223.74.51.09
セネガル黒人(500)43.222.629.05.00.8
アンナン人(500)42.022.428.47.20.8
インド人(1000)31.019.041.08.50.56
(注:オーストリア人の人数は全体が8500人なら600人のはずだが、出典の表で「?」とある。)「民族示数」は「A型とAB型の合計百分率を分子」で「B型とAB型の合計百分率を分母」にした数値。A遺伝子を持つ人が多いほど大きくなる。

当時は血液型が個人で不変かどうか自体不明瞭であった(上記の兵士たちは基本的に似たような環境で同じものを食べていたが、もっと長期間の環境変化ではどうなるかは分かっていなかった。)ため、これが彼らの故郷の環境によるものか血統的によるものかがはっきりしなかったため重要視されなかったが、1921年ハンガリー(原書は「ハンガリヤ」表記)のヴェルザーとウェスツェッキーが自国内で当時出自が違う民族とすでに分かっていたドイツ系・蒙古系(注:マジャール人の事)・ジプシー(インド系)の民族の血液型比率を調べたところ、下図のようになった。

『ヴェルザー、ウェスツェッキーの研究』[59]民族名(人数)O型%A型%B型%AB型%民族示数
ドイツ系ハンガリア人(476)40.843.512.63.12.9
蒙古系ハンガリア人(1500)31.038.018.612.21.6
ジプシー(386)34.221.139.95.80.6

これらの違いとドイツ系民族やジプシーはヒルシュフェルドのドイツ人やインド人との報告とほぼ同じ比率になったことなどから、離れた国に長期間住んでいても他との通婚が少ない場合血液型の比率が先祖とほぼ変わらないこと、逆に同じ国にいても先祖が違う集団は違ったままであることが判明した[60]

こうした結果より、民族の移動などを血液型から推測する研究がされるようになり、まず最初のヒルシュフェルド夫妻は『ヒルシュフェルドらの分類』の表のデータのうち、イギリス人からギリシャ人までを「ヨーロッパ型」、マダガスカル人からインド人までを「アフリカ・アジア型」としてその間の4民族を中間型とし、O型の比率はどこも極端に違わないのにA型とB型の人種差が極端に激しいので、「かつてA型を基本とするA人種(ヨーロッパの中?北部起源)とB型を基本とするB人種(インド北方起源)がいて、これが混血していき様々なABO式血液型の比率を生み出した。」という説を提唱した[61]

その後、世界各地の人種の血液型比率を調べていた際にスナイダーが混血が少ないアメリカ先住民族(原文は「アメリカ・インディアン」)にO型が極めて多い(453人を調べてOが91.3%だった)ことを報告し、これにより自分が提唱した後述の原則から「大昔はアメリカ先住民は100%O型だったのではないか」という説を提唱し[62]、これ以外にドイツのベルンシュタインなども自分の三因子仮説などから原始人類の血液型はO型のみでそこからA・B型が突然変異したのではないかという説を上げていた[63]が、カナダのアルバータ州でマトソンとシュラーデルが調査したところ、ほとんど混血のない先住民(前述のブラッド族・ブラックフィート族など)にA・O型が多くB・AB型が皆無という地域が見つかった他、オーストラリアでも白人との混血が少ないにもかかわらずA型の多い集団が発見され、原始人類はO型のみではないかという仮説は訂正された[64]

スナイダーは血液型を人類学に応用する際、以下の必要な四原則を定めている。
一民族の血液型分布率は、これと血液的に緊密な関係にある他民族の血液型の分布率と近似することが予期される。

一民族の血液型分布率が、これと血液的に緊密な関係にある他民族の血液型の分布率と大いに異なる場合、この民族はさらに他の民族との間に混血があることが予期される。

一民族の血液型分布率が、これと緊密な関係にない他民族の血液型の分布率と等しい場合、その祖先の時代において前者が後者あるいはその近い民族との間に混血があったことが想像される。

一民族がAまたはBのいずれか、あるいは両方を欠くか、その遺伝子頻度が非常に小さい場合、この民族は人類にAまたはBの突然変異が起こる前、またはAやBの広がる前からほかの民族と孤立して生存していたと考えられる。

この四原則は当てはまる場合も多いが、一致しない場合もあり他の証拠から近縁でさらに別の民族との交流が薄い民族同士でも分布率が大きく違い、逆に無関係のはずの2つの民族の血液型分布がほぼ一緒という場合もあるので、なるべく一定数以上の人数で広い範囲を確かな診断で調べる必要がある[65]
ABO式血液型の亜型分類

ABO型の各型の凝集力の違いなどを元にさらに下の亜型がある。検査については亜型検査を参照。

血液型の亜型はA2が最初の発見になり、通常のA型はフジマメ科の植物ドリコス・ビフローラスからとれるレクチンで凝集が起きる(B型・O型は凝集しない)が、A型であるにもかかわらずこれに反応しないものがあったことで発見された。このA2は酵素反応してないH物質が多く、このためドリコスレクチンに反応しなかった。原因はA2の遺伝子はABO血液型物質を作る354番目のアミノ酸の塩基配列が1つ抜けたため、次が終止コドンにならずにA1(通常のA)より長くなり、376個分のアミノ酸のデータで酵素を作るためこのような違いが起こっていた。なお後に判明した他の亜型の場合もA3は291番目のアミノ酸(塩基では871番目)、AXは216番目のアミノ酸(塩基では646番目)、B3は352番目のアミノ酸(塩基では1054番目)にこうした違いが起きていた[66]

基本的に型が同じなら抗原は同じもの(量が異なるのみ)なので亜型が違っても通常はその型の赤血球製剤で問題ない[67]し、反応する場合も低温でのみ反応する寒冷凝集素の場合は実害がないためそのまま輸血可能だが、まれに37℃反応性のその型の抗体(A型なら抗A1抗体、B型なら抗B抗体)を持っている場合は「O型」の赤血球製剤(A抗原・B抗原を持たない)を使用する。いずれの場合も血漿・血小板剤はその型のもので問題ない[68]
A型の亜型
A1
普通のA型。A型の人のうち約80%を占める。(赤血球1個当たりの抗原数8.1×105?11.7×105)
[67]
Aint
A1よりも弱くA2よりも強い。
A2
弱いA型。(赤血球1個当たりの抗原数2.4×105?2.9×105)このあたりからO型に間違えられやすくなる[67]。検査は抗Hレクチン、抗A1レクチン、被凝集価測定、転移酵素活性測定、唾液・血清中の型物質測定、そのほかA1に対する抗体を持つものものが時々いる[69]ため、A型血球との間接抗グロブリン試験などでも調べる。
A3
かなり弱いA型。(赤血球1個当たりの抗原数7000)オモテ試験で部分凝集となるのが特徴。検査は抗Hレクチン、抗A1レクチン、被凝集価測定、転移酵素活性測定、唾液・血清中の型物質測定。その他A型とO型の血液キメラモザイクとの鑑別のため、混合赤血球の分離も。これ以外にほとんどがA1に対する抗体を持つという性質を持つ[69]
Ax
A3よりさらに弱いA型。(赤血球1個当たりの抗原数1400?10300)AでありながらAに対する抗体を持ち、あるはずの転移酵素や型物質がない。検査は抗Hレクチン、抗A1レクチン、吸着解離試験、転移酵素活性測定、唾液・血清中の型物質測定。
Am
Axよりさらに弱いA型。(赤血球1個当たりの抗原数1200)Aでありながらオモテ試験で凝集せずOと判定される。しかし転移酵素や型物質は存在する。検査は抗Hレクチン、抗A1レクチン、吸着解離試験、転移酵素活性測定、唾液・血清中の型物質測定。
Ael
ものすごく弱いA型。(赤血球1個当たりの抗原数700)「el」はelution(溶離・溶出)の略。吸着解離試験の検査以外ではA型と判断できない。
Aend
ものすごく弱いA型。特定の抗原が存在しないか、ごくわずかしか存在しない。

亜型抗A血清との反応抗B血清との反応血清中の抗A血清中の抗B型物質A型転移酵素適切な追加検査
A1+00+A、Hありなし
A2+0+/0+A、HありHレクチンとの反応、A1レクチンとの反応、被凝集価測定、唾液・血清中の型物質測定、転移酵素活性測定、A血球との間接抗グロブリン試験
A3mf(部分凝集)00+A、HありHレクチンとの反応、A1レクチンとの反応、被凝集価測定、唾液・血清中の型物質測定、転移酵素活性測定、混合赤血球分離
Ax+/00++HなしHレクチンとの反応、A1レクチンとの反応、被凝集価測定、唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定、A血球との間接抗グロブリン試験、家系調査
Am000+A、HありHレクチンとの反応、A1レクチンとの反応、吸着解離試験、唾液・血清中の型物質測定、転移酵素活性測定、家系調査
Ael00++HなしHレクチンとの反応、A1レクチンとの反応、吸着解離試験、唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定、家系調査

基本的に血清中に抗Aがあると、血清を使った型物質測定はできない。
B型の亜型

B型はあまり研究が進んでいないが、A型同様のバリエーションがあると思われる。
B1
普通のB型。
Bint
B1よりも弱くB2よりも強い。
B2
弱いB型。
B3
かなり弱いB型。オモテ試験で部分凝集
となるのが特徴。検査は抗Hレクチン、被凝集価測定、転移酵素活性測定、唾液・血清中の型物質測定。そのほかキメラモザイクとの鑑別のため、混合赤血球の分離も。
Bx
B3よりさらに弱いB型。BでありながらBに対する抗体を持ち、あるはずの転移酵素や型物質がない。検査は抗Hレクチン、吸着解離試験、転移酵素活性測定、唾液・血清中の型物質測定。
Bm
Bxよりさらに弱いB型。Bでありながらオモテ試験で凝集せずOと判定される。しかし転移酵素や型物質は存在する。検査は抗Hレクチン、吸着解離試験、転移酵素活性測定、唾液・血清中の型物質測定。
Bel
ものすごく弱いB型。特定の抗原が存在しないか、ごくわずかしか存在しない。「el」は吸着解離試験を意味する。この検査以外ではB型と判断できない。
Bend
ものすごく弱いB型。特定の抗原が存在しないか、ごくわずかしか存在しない。

亜型抗A血清との反応抗B血清との反応血清中の抗A血清中の抗B型物質B型転移酵素適切な追加検査


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