87分署シリーズ
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意味はPolice car(パトカー)やパトカーを使った警ら活動、またはパトカーの警ら班のこと。ニューヨークでは1920年代に無線機を搭載したパトカーによる警ら活動が行われるようになり、これを指す言葉として使われるようになった。今日ではPolice carという言葉の方が一般的に使われているが、市当局はRadio Motor Patrolの方を正式な呼称として使用することがあり、一般においても特にNYPDの警ら車両などを表す言葉として意識して使われることがある。同様に、古い翻訳のもので「無標識の警察車」となっているものはUnmarked Policecar、現代でいうところの覆面パトカーのこと。
階級

アイソラ市警察では刑事(Detective)は巡査(現在はPolice officer、昔はPatrolman)と同等で、巡査部長(Sergeant)より下位にあるのだが、NYPDにおいても刑事は巡査部長の下位にあって巡査と同等となっている。ただしこれはあくまでニューヨークのやりかたで、他の警察においては異なっている。ロサンジェルス市警察(LAPD)では刑事は巡査の上位階級で、巡査部長と同等である。こういった大きな違いはそれぞれが高い独立性を有する、アメリカの自治体警察の事情を反映したものである。

刑事は一級刑事、二級刑事、三級刑事と階級が分かれているが、これもNYPDにもある制度。NYPDでは刑事試験に合格し刑事(Detective)になったものは、通常はDetective Grade 3(三級刑事)になる。検挙実績などで能力を認められればGrade 2、Grade 1と刑事としての序列が上がっていく。
組織

主人公のスティーブ・キャレラ二級刑事らが所属する87分署刑事課は、英語で表記すると87th Precinct Detective Squadである。直訳すれば「第87分署刑事分隊」になるであろう。しかし刑事課は分署ごとに配置され、刑事課長(Squad Commander)が掌握するが、各分署の刑事課は刑事管区が管理しており、つまり管区の上位にあって全刑事の責任者となるのが刑事部長である。

87分署刑事課長はピーター・バーンズ警部(Lt. Peter Byrnes)である。Lieutenantは辞書では警部補となっているが[1]、本作では警部と表記されている。日本の警察の警察署刑事課長(警部)に相当する役職で、分署管轄内における捜査指揮の責任を負う。他作品と比較すると、刑事ドラマ「刑事コジャック」のテオ・コジャック警部補(Lt. Theo Kojak)もバーンズ警部と同階級のLieutenantで、分署刑事課長である。
時代と共に変化したこと

前項で述べた分署名と配置のようなことを除けば、この項で述べたようにアイソラ市警察に関する表記はNYPDそのものと言っても差し支えない。しかし初期の作品は1950年代に発表されていることもあり、それらに書かれていることは現在と比べれば大きく異なる点もある。

「ハートの刺青(The Con Man)」ではパトロール警官が死体を発見し、それを街頭警察電話で通報する場面があるが、現在ではこれは見られない。街頭警察電話というのはまだ警官が無線機を携帯していない時代、警官用の街頭電話を市内各地に設置し、徒歩でパトロールしている警官などが本部に報告したり応援を求める場合に使用したもの。昔はニューヨークのみならず様々な都市で見られた物だが、現在は携帯用無線機が導入されており、通信はこれによって行うので街頭警察電話というものは必要がない。

刑事が携帯する拳銃も当初はリボルバーであったが、近年のものではグロックを携帯している。NYPDは他のアメリカの警察と同様に1990年代初頭に制式拳銃を見直し、リボルバーからセミオートマチックピストルへと変更した。NYPDはセミオートマチックピストルの一つとして、9mm口径のグロック19を採用した。

50年という長きに渡り出版されただけあって、NYPDの変化に沿うようにアイソラ市警も変化している。しかし2002年に出版された「でぶのオリーの原稿」によれば、1959年に出版された「キングの身代金」と「でぶ?」の間は作中では数年しか経っておらず、時間の変化は現実より遥かに緩やかである。
登場人物
アイソラ市警察
第87分署
二級刑事
スティーブ・キャレラ (Stephen Louis "Steve" Carella)
本シリーズの実質的な主人公。身長180cmほどの鍛えられた体を持つ男で、その顔つきは時に東洋系と間違われる精悍さを持つとされている。妻・テディに心底ほれている。
マイヤー・マイヤー (Meyer Meyer)
キャレラの同僚で
ユダヤ人。親が悪意を持って名と苗字を同じにし、また非ユダヤ人街で育ったため、いじめに遭うなど苦労をした人物。そういった環境の中で善良な人間として育ってきたので大変な忍耐力を持つが、この忍耐は30歳前にして彼の頭髪を薄くするという形で表層化した。ある時彼はかつらをつけるが、同僚にからかわれたり、自分に似合うかどうか悩むなど、逆に彼自身を窮地に陥れる。
アーサー・ブラウン (Arthur Brown)
黒人の大男で、好男子と評される。
コットン・ホース (Cotton Hawes)
赤毛の大男で、こめかみのところだけ白髪(ナイフで切りつけられた傷が完治した後なぜか変わった)。30分署から87分署に異動でやってきたが、荒っぽい連中相手の捜査には不慣れだったため、容疑者宅に踏み込む時に失敗をしてキャレラを危うい目にあわせる。だがその後は執念で犯人を追い詰め逮捕し、仲間の信頼を得る。名前のカナ表記は当初のコットン・ハウズからコットン・ホースに変更された。
ボブ・オブライエン (Bob O'Brien)
今までに捜査の行きがかり上やむを得ず6人の人物を射殺しており、それが心に傷を負わせている。
三級刑事
バート・クリング (Bert Kling)
シリーズ1作目「警官嫌い」にて、キャレラの助手を命じられたパトロール警官であった。その後刑事になり、87分署刑事課の面子に加わる。人違いで撃たれたり、婚約者が事件に巻き込まれて殺される(『クレアが死んでいる』)など、とことんついていない男。
ロジャー・ハヴィランド (Roger Havilland)
ブル(Bull)とあだ名されるが、この言葉には警官を表す俗語と、大柄な人間をあらわす俗語の両方の意が込められている。粗暴な、平たく言うと暴力警官。大男で、癇癪を起こして被疑者を殴り倒したりする。また賭博を見逃す代わりに賄賂も受け取るなど、必ずしも良心的な警官とはいえない。『被害者の顔』で、犯人に突き飛ばされた弾みで商店の窓に倒れこみ、割れた窓の破片で負傷し死亡。
タカシ・フジワラ (Tack Fujiwara)
通称はタック。分署内はおろか作中においても珍しい日系人。キャレラ(の風貌や人格)には本当の
従兄弟以上に親しみを抱いており、よく「やあ、従兄の兄さん」と冗談交じりに挨拶する。これに対してキャレラも「オーハイヨー」(「おはよう」の訛り言葉)と返すのが恒例となっている。


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