74式戦車
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

結果として74式戦車の車高は無砲塔型であるStrv.103を除くと、第2世代主力戦車の中でも低いものとなっている[6][7]

装甲材には単純な防弾鋼を採用しており、同様の思想で設計されたレオパルト1AMX-30と共通した外観を持つ。対戦車ミサイルなどの対戦車兵器については、装甲で受け止めて防ぐのではなく、流線的装甲による避弾経始と機動力で被弾そのものを回避するのが74式を含めた第二世代主力戦車の運用思想だった。

エンジンについては、1965年(昭和40年)から新たに高出力の空冷ディーゼルエンジンを開発することとされた。1960年代当時、同盟国のアメリカ軍西側諸国が配備していたM60中戦車には空冷ディーゼルエンジン(コンチネンタル AVDS-1790)が採用されており、M48中戦車やM103重戦車などの既存戦車に対しても同型の空冷ディーゼルエンジンに換装する改修事業が推進されていた。

既に61式戦車の際に開発に成功していた空冷ディーゼルエンジンが存在していたが、目標とされた400馬力級の小型軽量エンジンの要件は満たしていなかった[8]。そのため三菱重工業の高速艦艇2サイクルディーゼル太平洋戦争中に培った空冷技術をもとに新たなエンジンを開発することとされ[8]、1967年(昭和42年)に10ZFディーゼルエンジンとして完成した。

トランスミッションは1964年(昭和39年)より開発が始まり、1967年(昭和42年)にMT-75操向変速装置として完成した。オートマチックトランスミッションでなくセミオートマとなったのは当時の技術的な遅れが原因との指摘もあるが、開発の際にトルクコンバーターを用いることは伝達効率が低い(加速能力などに影響する)という理由でなるべく避けられており、一次変速部と二次変速部は遊星歯車機構を用いた二重差動操向式(クロスドライブ式)となっている[9]。変速操作はパワーシフト式であり、発進及び停止時以外のクラッチ操作は不要である。

射撃管制装置にはレーザー測距儀弾道計算コンピューターなど、当時の世界最高レベルの最新技術が盛り込まれた[10]。車体の挙動に影響されず主砲の照準を保持する安定化装置(スタビライザー)の開発では、砲塔を駆動する油圧システムとジャイロの電気信号で制御される安定化装置の制御が、開発の上で特に困難だったとされている[11]
試作車STB-2

最初の試作車はSTTと呼ばれ、油気圧懸架装置をテストするための車体のみの車両であった。当初は61式戦車のエンジンと履帯が装着されていたが、1967年(昭和42年)には三菱重工が開発した10ZFディーゼルエンジン、およびMT-75操向変速機が装着された。また、105 mm砲も装着され、砲撃が車体などに与える影響も検証された。105 mm砲を装備した試作砲塔もSTTに搭載され、試験が行われた。

STTで各部ごとの試験が行われた後、1969年(昭和44年)9月にはSTB-1とSTB-2の試作車両2両が完成した。この試作車は費用面で妥協することなく開発が行われたが、その装備の多くは結局、費用対効果の問題などで採用されなかった。戦車長リモコンで車内より操作する対空機銃(照準はペリスコープを使う)、半自動装填機、後退用ギアを2段変速とするなど、数々の意欲的な機能が搭載されていた。ほか、細部の構造が量産車と異なる[注 1]

STBを見た、関係していた人物は[誰?]「量産車とはエンジン音からして違った(軽かった)」「細部の作りが丁寧で、綺麗だった」「砲塔の内部は量産車と違い近未来的だった」といった感想を残している。STB-1は1972年(昭和47年)の観閲式で国民に一般公開され、避弾経始に優れた車体の形状は当時の人々を驚愕させるものであった[12]

2両の一次試作車による試験の後、コストの低減を主眼とした二次試作車であるSTB-3からSTB-6までの4両が1970年(昭和45年)4月 - 1971年(昭和46年)12月までに製造された。

STBの審査は1973年(昭和48年)11月に行われた。開発には1年を要し、1974年(昭和49年)に完成し、制式化、翌1975年(昭和50年)から三菱重工業による生産が開始された。なお、制式化当時防衛庁長官だった山中貞則は、装備局に「次期主力戦車の名前を『山中式戦車』に」と主張したが、前例がない上に開発に山中は一切関与していないため、当然の如く却下されている。
特徴
火力避弾経始を追求したことで流線型の砲塔となった。2012年(平成24年)富士総合火力演習での74式戦車の主砲発射。

主砲にはイギリスロイヤル・オードナンス社の51口径105 mmライフル砲L7A1日本製鋼所ライセンス生産した物を装備しており、105 mmライフル砲用の砲弾は当初APDSHEPを使用していたが、現在ではAPFSDS(93式105 mm装弾筒付翼安定徹甲弾)とHEAT-MP(91式105 mm多目的対戦車榴弾)を使用している[13]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:121 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef