555_タイマー
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555タイマーICシグネティクス製のNE555(DIP)
種類能動, 集積回路
発明ハンス・R・カーメンツンド(英語版)
商品化1971
ピン配置GND, TRIG, OUT, RESET, CTRL, THR, DIS, VCC
電気用図記号

内部ブロックダイアグラム
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555タイマーICは、タイマーパルス生成や発振回路など多用途に使用される集積回路(IC)。発振回路やフリップフロップとして時間遅延を提供する。

1971年にハンス・R・カーメンツンド(英語版)によってシグネティクス社(※)との契約の下で設計され、1972年[1] にシグネティクス社から発表されたものである[2]。(※シグネティクスは後にフィリップス・セミコンダクター(現在のNXPセミコンダクターズ)に買収された。)

価格が安く、多用途に使え、安定性が高いことによって世界中で広く使われるようになったICであり、たとえば2003年の1年間だけでもおよそ10億個が生産され[3]、これまで製造された中で最も有名な集積回路となった[4][5]

派生品としてひとつのパッケージに2回路を収めた「556」や4回路を収めた「558」もある。オリジナルのバイポーラ品の他に、(2006年時点で)多くのメーカーにより低電力のCMOS品も生産されている。
歴史

(ハンス・R・カーメンツンド(英語版)は1934年にスイスのチューリッヒで生まれ、同国のカレッジで教育を受け、1960年にアメリカに移住した人物で)彼は1962年、マサチューセッツ州バーリントン(英語版)にあるP.R.マロリー(英語版)の物理化学研究所に入所した[3]。そこでラジオ向けのパルス幅変調 (PWM) アンプを設計したが[6]、当時はそれと一緒に用いるパワートランジスタが存在しなかったため、商業的には成功しなかった。カーメンツンドはジャイレータ位相同期回路 (PLL) といったチューナーに興味を持つようになる。1968年にはPLL ICを開発するシグネティクスに移籍した。シグネティクスでは周波数が電源電圧温度に影響されないPLL用発振器を開発していた。しかし、不況の影響を受けてシグネティクスは半数の従業員を解雇し、開発は凍結された。[7]

カーメンツンドはPLL用発振器に基づく普遍的回路の開発を提案し、給料の半分をカットする代わりに会社の機器を借りてそれを一人で開発することを申し出た。他の技術者たちは、その製品は既存の部品から作れると異論を述べたが、営業部長がそのアイデアに賛同した。アナログICに割り当てられていた500番台から、「555」という特別な番号が選ばれた。[3][7]最初の555のダイ写真(1971年)

カーメンツンドはノースイースタン大学回路設計を教えるために朝は教壇に立ち、夜は修士号を取得するために同じ大学へ通った[8]。1971年夏頃に最初の設計レビューが行われた。レビューは何も問題なくレイアウト設計に進んだ。その数日後、彼は定電流源を使う代わりに直接抵抗を使うアイデアを思いつき、定電流源がなくても同じように機能することを発見した。この変更でピンの数を9ピンから8ピンに減らしたことで、ICは14ピンパッケージの代わりに8ピンパッケージに実装できるようになった。2度目の設計レビューを合格し、プロトタイプは1971年10月に完成した。最初のデザインレビューに出席してシグネティックスを退職した技術者が会社を設立し、既にその9ピンのコピーを発売していたが、555が発売されるとすぐに撤退した。555は1972年までに12社で製造されてベストセラーになった。[7]
設計内部等価回路図(バイポーラ版) 内部等価回路図(CMOS版)

製造元にもよるが、標準的な555パッケージは25個のトランジスタ、2個のダイオードおよび15個の抵抗器を1個の8ピン・ミニ・デュアルインライン・パッケージ(DIP-8シリコンチップに搭載している[9]。派生品に556(2個の555を14ピンDIPワンチップに統合)、558や559(4個の555改変版を統合した16ピンDIP。DISやTHRで内部接続し、TRをレベル検出ではなく立ち下がりエッジ検出としている。)が存在する。

標準モデルのNE555は0℃から70℃の温度で動作し、軍用モデルのSE555は-55℃から+125℃で動作する。これらはどちらも高信頼性のメタル缶パッケージ(Tパッケージ)と廉価なエポキシプラスチックパッケージ(Vパッケージ)が用意されており、完全な部品番号はNE555V、NE555T、SE555V、SE555Tとなっている。555の名前は3個の5kオーム抵抗が使われていることに由来するという仮説があったが[10]、カーメンツンドは気まぐれでその番号を選んだと語っている[3]

7555やCMOS版TLC555などの低電力版555も存在する[11]。7555は旧型の555よりも供給ノイズを抑え、メーカーはCONTピンのコンデンサが不要で多くの場合電源部にバイパスコンデンサは不要であると説明している。ただし、タイマーや電源電圧の変動によって生成されるノイズが回路の他の部品と干渉したり、そのスレッショルド電圧に影響を与えることも考慮する必要がある。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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