5つのルシャン
[Wikipedia|▼Menu]
.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}ポータル クラシック音楽オリヴィエ・メシアン(1937年)

『5つのルシャン』(いつつのるしゃん、フランス語: Cinq Rechants pour douze voix mixtes a cappela)は、フランスの作曲家オリヴィエ・メシアン(1908年 - 1992年)が1948年(または1949年)に作曲した、無伴奏、12声部の混声合唱曲である。

歌曲集『ハラウィ』(1945年)、『トゥーランガリラ交響曲』(1948年)に続く、人間の愛と死をテーマとした「トリスタン三部作」の最後を飾る作品であるが、5曲を合わせた演奏時間約が約20分と[1][2]三部作中で最も小規模である[3][4]

自ら「作曲者にしてリズム創造者」と称するメシアン[5]の作品らしくリズムに特徴があり、インドに伝わるターラ(英語版)を使用するなど独特の作曲技法が駆使されている。歌詞はメシアン自身によるもので、サンスクリット語に似た創作言語による歌詞とフランス語による歌詞とが併用されており、『トリスタンとイゾルデ』、『アーサー王物語』、『青ひげ』、ギリシャ神話、ボスシャガールの絵画などに関連する言葉がシュルレアリスティックに散りばめられている。

5つの曲から成っており、それぞれの曲にはタイトルがなくI?Vの番号のみが付けられている[4]。ただし、以下のように歌詞の冒頭部分をタイトルのようにして扱うことがある[1]。なお、本稿では「第1曲、第2曲・・・・・・」のように表記する。

第1曲「アヨ カプリタマ ラ リ ラ リ ラ リ ラ サレノ」

第2曲「初めてのこと 地 地 開く扇」

第3曲「わたしの愛の衣 わたしの愛 わたしの愛の牢獄」

第4曲「ニョカマー パラランスキー 解かれた花束が光を放つ」

第5曲「マヨマ カリモリモ マヨマ カリモリモ」

編成

ソプラノ3、コントラルト(アルト)3、テノール3、バス3から成る12声部の無伴奏合唱で、1つのパートを1人で担当するヴォーカル・アンサンブルが想定されている[6][4]

そもそも「無伴奏12声部の合唱」の作品はあまり一般的なものではなく[7]フランシス・プーランク1943年に作曲したカンタータ人間の顔』以降、実験的な新しい響きが追求された分野である[7][注 1]。この形態の作品では、ダリウス・ミヨーの『ヴィーナスの誕生』(1949年)、ジャン・イヴ・ダニエル=ルシュールの『雅歌』(1952年)が『5つのルシャン』とほぼ同時期に作曲されている[7]。また、これらの作品からやや遅れて作曲されたヤニス・クセナキスの『夜』(1968年)は『5つのルシャン』と同じ編成で書かれている[8]
トリスタン三部作オリヴィエ・メシアン(1986年)

『5つのルシャン』は人間の「愛」をテーマにした作品である。フランスのサラベール社(フランス語版)[注 2]から出版されている楽譜の巻頭にはメシアンによる5つの短い注意書きがあり[10]、その5番目には次のように書かれている。この作品は愛の歌である。歌手たちが詩と音楽を解釈するのを導くのに、この言葉があれば充分である[11]

サントトリニテ教会のオルガン奏者でもあったメシアンは敬虔なカトリック信者であり、彼の作品の多くは神学的な真理を表現するために書かれている[12]。その一方で、メシアンは「人間の愛」も「神の愛」に次いで重要視しており[13]、特に「トリスタンとイゾルデ」(伝説、及びリヒャルト・ワーグナー楽劇トリスタンとイゾルデ』)を、「文学と音楽における、愛に関する偉大な詩作の象徴[14]」と捉えていた。メシアンがそこに見出していたのは、「宿命的な愛」、「死に至る愛」、「肉体を超越した愛」といった観念である[14]

メシアンが「トリスタンとイゾルデ」に象徴される「宿命的な愛」、「清純な愛に至る死」といった観念をテーマとして作曲したのが[14]、歌曲集『ハラウィ - 愛と死の歌』、『トゥーランガリラ交響曲』及び『5つのルシャン』という、1940年代後半に書かれた3つの作品であり、これらは「トリスタン三部作」と総称される[15]。この三部作はオペラのようにストーリーを追うものではないが[14]、『5つのルシャン』においては「イゾルデ」や「ブランゲーネ」といった登場人物の名や「媚薬」など、伝説を暗示する具体的な言葉が歌詞に含まれている[14](後述)。

なお、三部作の各作品を楽曲の規模の面で比較すると、12曲構成で演奏時間55分の『ハラウィ』[16]、10楽章構成で演奏時間80分の『トゥーランガリラ交響曲』[1]に比べ、5曲で構成され演奏時間が20分の『5つのルシャン』はかなり小ぶりである[3]
作曲と初演
作曲の背景クレールとメシアン

『5つのルシャン』はフランスの合唱指揮者マルセル・クロー(マルセル・クーロー)からの依頼により作曲された[4]。作品は1948年12月に完成し[17]、依頼者が率いる合唱団「アンサンブル・ヴォーカル・マルセル・クロー」(Ensemble Vocal Marcel-Couraud)[注 3]に献呈されている[18]

ただし、出版譜にも記されている「1948年12月」という完成時期についてはメシアンの記憶違いである可能性が指摘されている[17]。メシアンの伝記を著したピーター・ヒル(英語版)とナイジェル・シメオネは、12月9日に『トゥーランガリラ交響曲』が完成したばかりであることから[19]、『5つのルシャン』の完成はその直後の12月中ではなく翌1949年の初めであったとの考えを示している[17][注 4]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:134 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef