4チャンネルステレオ
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QSサンスイ QS-1 4チャンネル・シンセサイザー・デコーダー。(1970年)
日本において最初のマトリックス方式4チャンネルステレオ再生装置。

1970年山水電気が開発した「4チャンネル録音 - 2チャンネル伝送 - 4チャンネル再生」のマトリクス4チャンネル方式である。日本において最初のマトリックス方式4チャンネルステレオとなる技術である[4]。LPレコード以外に、QS方式で録音された音源を放送する番組『サンスイ4チャンネル・ゴールデンステージ』が、FM東京FM大阪FM愛知で放送された。
SQ

1971年CBSが開発した[注釈 1]「4チャンネル録音 - 2チャンネル伝送 - 4チャンネル再生」のマトリクス4チャンネル方式である。主に位置情報を位相で表す方式である。このフォーマットを採用したレコード会社は、CTIコロムビアEMIエピック、オイロディスク、ハーベスト、HMV、セラフィム、スプラフォンとヴァンガードであった(各レコード会社はオリジナルの親会社)。
その他

通常のステレオ音源から、単純なスピーカー結線、またはオペアンプ回路の自作による位相差でリアスピーカーの信号を作成する擬似4チャンネルステレオの作成は当時のオーディオ自作の定番工作であった。
スピーカー・マトリックス

「2チャンネル録音 - 2チャンネル伝送 - 4チャンネル再生」の4チャンネルステレオで、通常のステレオフォニック再生装置の出力から、単純なスピーカー結線で4チャンネル再生をする方式。理論的には、左チャンネルと右チャンネルの位相差より、後ろ側左チャンネルを左チャンネルから右チャンネルの差 (L-R)、右後ろ側チャンネルを右チャンネルから左チャンネルの差 (R-L) となるように結線することで立体的な音響効果を得ようとする擬似的4チャンネルステレオである。代表的な結線の方法は、
左後ろ側スピーカーのプラス極をアンプ左チャンネルのプラス極に接続する。

左後ろ側スピーカーのマイナス極は、右後ろ側スピーカのマイナス極に接続する。

右後ろ側スピーカーのプラス極をアンプ右チャンネルのプラス極に接続する。

このようにスピーカー・マトリックスは、スピーカーコードとスピーカさえあれば特別な機材無しに簡便に実現できるのが特徴である。また、デコーダーを通さないので音質の劣化が無いのが長所とされた。ただし、使用するスピーカーの能率・音色を考慮する必要があり、組み合わせが限られるのが欠点である。

単なるスピーカー結線に限らず、コイルや抵抗を繋ぐ方法も存在する。抵抗の値を変える事で能率のコントロールが可能でスピーカーの組み合わせの自由度が高まるが、音質劣化を伴う。

メーカー製品であっても、ミニコンポやラジカセのような安価な製品、テレビのようなオーディオ部分にコストをかけない製品の場合は、デコーダーを内蔵せず、スピーカー・マトリックスを採用した4チャンネル再生の例も見られた。

オーディオ評論家の長岡鉄男によるものが特に有名である。長岡は上記のような4チャンネル再生に限らず、3チャンネルや5チャンネルなど、様々な方法を提起している。
4チャンネル・レコードの規格統一

各社からいくつかの4チャンネルステレオの方式が発表された規格乱立の状況で、1971年に規格統一の動きが、米国ではEIARIAA、日本では、電子機械工業会 (EIAJ)(現・電子情報技術産業協会:JEITA)、日本レコード協会においてあった。ディスクリート4チャンネル・レコードにおいては規格の提案がCD-4のみであったのでそのまま承認された。マトリックス4チャンネル・レコードにおいては、RM(レギュラー・マトリックス)方式のほか、SQ方式と1969年シャイバー (Scheiber) によって発表されたシャイバー方式を基盤技術に持つ各種方式にわけられるが、規格の提案が多岐にわたっているため規格統一は困難であった。その後の1972年に日本レコード協会ではRM方式、SQ方式、CD-4方式の3方式を技術部会規格と定めた。電子機械工業会においてもRM方式、CD-4方式を技術部会の技術基準と定めた[5]。日本ビクター製のCD-4システムステレオの多くの機種では、マトリックスレコードの再生が可能であった。
4チャンネルステレオが残した遺産

4チャンネルステレオセットは、従来の2chステレオセットと比べて高価であったこと、ヒット歌謡曲などの発売が少数であったこと(ビクター所属の麻丘めぐみなどはCD-4レコードも発売はされたが)、システムとして、CD-4方式では上述した差信号の欠如がノイズを発すること、また、オイルショックによる経済環境の悪化などで、商業的には失敗したと解せられる。しかし、その技術開発は、広い面接触のレコード針や(日本ビクターのシバタ針、東芝のエクステンド針)、カートリッジの周波数特性の飛躍的な向上に貢献した。CD-4のレコードプレスのために低速カッティング法が開発されたが、恩恵を受けて4ch以外のアナログレコードの品質も飛躍的に向上した。また、CD-4の高域に記録される差信号に対するノイズリダクション(ANRS)などの、多くの新技術が開発された。後にドルビーB規格として広まったテープノイズリダクションは、ビクターがCD-4ステレオで開発したANRS方式、そのものであった。4チャンネルステレオは、後のサラウンドをはじめとするマルチチャンネルオーディオの始祖になったといえる。

CD-4は、日本機械学会賞を受賞しているが、当時、東海道新幹線の受賞に次ぐインパクトを持つものであった。
脚注[脚注の使い方]^ .mw-parser-output .citation{word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}US patent 3632886, Scheiber; Peter (Peekskill, NY), "QUADRASONIC SOUND SYSTEM", issued 1972-1-4 
^ 井上敏也・監修、藤本正熙・柴田憲男・村岡輝雄・武藤幸一・佐田無修「3・4、4チャネル・レコードの録音・再生」『レコードとレコード・プレーヤー』ラジオ技術社、1979年、109頁。 
^ 考案者の柴田憲男の名からシバタ針とよばれる。レコードプレーヤー#ピックアップ(カートリッジ)を参照。
^ 国立科学技術館の産業技術史資料データベース:外部リンク ⇒『マトリックス方式4チャンネルデコーダー QS-1』、資料番号104810691006を参照。
^ 太田一穂・久次米正則・他『4チャンネルステレオ』日刊工業新聞社、1972年。


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