2e
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2eはtwice exceptional(二重に特別)の略であり、二重に特別な人や二重の特別な支援を要する人という意味で、障害(苦手)を持っていて一度特別でありながら、優れた認知能力を持っていたり潜在的に英才(ギフテッド)能力を持っていたりして更にまた特別だという意味である[1][2]。ここで障害は主に社会、情緒、行動、学習、神経精神分野を指す場合がほとんどであるが、学者ごとに意見を異にすることがある。 2014年、米国のいくつかの英才教育学者は、注意欠陥・多動性障害(Attention Deficit / Hyperactive Disorder)、自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder)、及び学習障害(Specific Learning Disability)に制限した[3]。 しかし、不安障害うつ病トゥレット症候群強迫性障害などをも包括し得る[4]。Ronksley-Pavia(2015)[5]は、有用な障害と才能の共起概念モデルを示している。教育障害のあるギフテッドとしての2eは、1970年代に漸く世間で重要なものと見做されるようになった。しかし、米国政府は2004年になって漸く特殊教育の必要性を認識したのだが、関連する研究は既に比較的豊富であった。この集団は天才(ギフテッド)集団の約2%?5%を占め、障害の割合の中でも同様で、大衆の0.06%?0.1%を占め、つまり1万人に6人から千人に1人の出現率である 。

2eは学習障害とギフテッド(天才)の特性を兼ね備える特殊な集団であり、学業、知性、創造性、リーダーシップ、視覚、空間、または舞台芸術の中で1つ以上の項目が優れていると同時に、明確な知覚障害、学習障害感情障害、肢体障害、感覚障害自閉症、または注意欠陥多動性障害などの標準的な障害を持つ[6] 。心身障害人口の3%から5%は2eの特徴を持っている[7] 。その特殊性のため、特殊教育の必要性は1970年代にアメリカの学者によってなされるまで気づかれなかった。当時の米国の特殊教育はギフテッド教育あるいは学習障害教育のいずれかであり、2eのための特殊教育はなかったのである 。この種の人々はアジア社会(台湾など)では21世紀になって初めて認識され重要視されるようになった。2e(紫)の概念図。ただし各集合が互いに素とは限らない。
概要

2eは文字通り「二重に特別」を意味し、1990年代半ばに教育者の用語集に登場し、何らかの学習障害を持つギフテッドを指す[8]。これらの学生は、才能(知能、創造性、知覚、運動など)と障害(特定分野の学習障害、神経発達障害など)との両方の「特別」を併せ持つと見なされる。誰が初めて英単語「twice-exceptional」を作ったのかは確実でない[9]。韓国語で「?? ??(二度例外)」になった理由は、2015年、???がアメリカテッドTedx講演でアスペルガー症候群DSM-5から自閉スペクトルに病名が変わった)と診断された学生の無限の可能性を明らかにすると同時に、その当時韓国には空前絶後だった2eと、これに関連する両親、教育者のためにジョセフ・レンジュリー博士とスコット・バリー・カウフマン博士のインタビューを韓国語に翻訳したためだ。2eを指す韓国語の用語がないことを知って「?? ??」と呼び始めた。

2eの子供は、同年齢の同級生と比較して才能がある(ギフテッド)と見なされながら、1つ以上の障害があると正式に診断された子供である[10]。 2eは一般的な障害に対して用いられ得るが、しばしば学習障害のある学生に対して使用される。もっとも研究はこれらの分野に限定されず、2eのより全体的な見方は分野を前進させるのに役立つ[5][11]。学習に関連する障害には、失読症、視覚・聴覚情報処理障害強迫性障害、感覚処理障害、自閉症スペクトラム障害トゥレット症候群注意欠陥多動性障害が含まれ得る。 2eは、不安うつ病、または伝統的な環境で効果的に学習する学生の能力を妨げるその他の障害の診断にも関連し得る[10]。例えば、失読症の学生の19%は、口頭での推論において優れた才能を持っていることが発見された[12]。しばしば2eの子供は、教育者や親の多くにとっては逆説として現れる複数の併存障害を持っている[5]。2eの性質と障害は非常に多様であるため、2eの子供達の明確なプロファイルは存在しない。2e的な子供達の間のこの多様性は、彼らがどのくらい存在するかを決定することをすら困難にしている。最良の有病率の推定値は、米国で300,000[13]から360,000[14]の範囲(18歳未満の子供の総数の約0.5%のオーダー[15] )である。 Gifted Development Center(GDC)のディレクターであるLinda Silverman博士は、GDCでテストされたギフテッドの内全体で1/6が何らかのタイプの学習の違いを持っていることを発見した [16]。オーストラリアでは、2010年の2eの子供の有病率の控えめな推定値は、約40,000 [17] 、つまりオーストラリアのギフテッドの子供の約10%であったが、他の推定値では、これより遙かに高いオーストラリアのギフテッドの子供の30%が2eであるとしている[18]

2eは障害の名称の前に接頭辞「2e」を伴うことで参照される。例えば、注意欠陥多動性障害に関連する2eは「2e-ADHD」である[19]
定義

2eは概念的には障害disability)を持つギフテッドとして定義されるが、その具体的な定義には揺れがある。そもそもギフテッドの定義自体が一意ではなく、国や地域、専門家、文脈によっても変動し得る。日本ではギフテッドは、特定分野に特異な才能のある児童生徒[20]に相当するが、ギフテッド教育が存在しないため、公的な診断基準も存在しない。古典的には高IQだけを以て定義されていたギフテッドは、今日ではIQテストだけで計測できない能力が秀でている場合もギフテッドであるべきと考えられIQだけでは定義されなくなったが、IQが130(σ=15の場合)を超えていればギフテッドであることは十分確かである(ただし逆は成り立たない)と考えてよい[21]。「知能検査だけではギフテッドかどうかわからない」は必要性への問題点を謳っているのであって決して十分性へ疑問を挿んでいる訳ではなく、知能検査は特性上、実際にはIQ130未満であるにもかかわらず130以上と算出されることはほとんどない一方、逆に実際は130以上なのに130未満と出ることはあるため、検査だけでは判定漏れしてしまい支援を受けられないギフテッドが多い点が問題視されており、また知的領域以外の才能にも目を向ける必要があるという意図である[21]。このIQ130以上というのは数値上は一般に知的障害と見做されるIQ70以下と並び人間の平均的なIQを100とした時±2σの範囲内(即ちIQ70?130、凡そ95.45%)から外れる異常値であり(これは有意水準に相当するといってもよい)、上位約2.3%ile以内、偏差値でいえば70以上に相当する。統計的には人間集団全体を扱う上で無視できる例外であるともいえる。ただし所謂学力に関して同様の数値(偏差値70以上)を取ることが期待されるものでは決してない。学校の学力テストや成績、入学選抜試験に於ける学力は身に付けるべき知識とその運用能力を問うものであって先天的な知能(智能)を問うものでは決してないからである。日本に於いては戦後『智能』が『知能』に書き換えられたように(中国・韓国等ではこの表記はない)、学習によって後天的に習得していく「知識」と基本的に先天的に生まれ持ち生涯伸ばしていく「智能」の概念に混乱が見られる。知能がいくら高くても適切に教育されなければ知識は伸びないし学力も向上し得ない一方、知能水準が普通であっても適切な方法でしっかり学習すれば学力は身に付くため、智能による順位と学力による順位とは一致し得ないしすべきでもない。裏を返せば学業で成功を収めなかったからといってギフテッドであり得ない等という評価は全く妥当ではないのである。

一方、併存している障害も多種多様でその定義や分類にばらつきがあり、更にどの障害まで2eの併存障害に含めるべきかは意見の一致を見ない。身体障害についても意見の分かれるところだが、基本的に身体障害とギフテッド性とは明確に分離できる自明な区分であるため2eに含めようと含めまいと単に言葉使いの問題に帰着するで本記事では深く扱わない。また感情障害うつ病など)や不安障害といった類の精神障害 (disorder) はどの集団にもありふれている上、ギフテッドはその特性上、精神病を罹患する割合が高く、とりわけ理解の難しい病態ではない。2eの本質は併存が逆説的で周囲から理解されないギフテッド性と相反するような性質の障害を有することであり、端的には発達障害及び随伴障害が問題となる。ところが精神障害の定義と分類は変遷が激しく混乱を極めており、また医学的な定義が日本の法的な障害者の定義と一致しないという問題も内在する。

ギフテッドは高い知能を特徴とする集団であり一般人より速く深く学習することが期待され一見発達障害とは逆の特性のように見えるが、これは併存し得る。ただし発達障害の特徴とギフテッドの特徴に共通点も存在することから、発達障害を伴わない通常のギフテッド、ギフテッドでない発達障害者、2eの発達障害者の区別は難しくまたしばしば混乱される。例えばアスペルガー症候群から古典的な自閉症を含む概念である自閉症スペクトラム障害の患者では、重症の自閉症でしばしば知的障害を伴う一方、軽症のアスペルガー症候群では却って成績良好であることも多いが、だからといって彼らは必ずしも2eであるとは限らず、むしろIQでいえば2σ以内(130以下)の普通の人が障害を有している場合がほとんどである(2σ以内というのは健常者集団に於いても2.3%ほどと少ないのであってアスペルガー症候群で優占するほどIQが向上するという相関データはない)。これは(障害を伴わない)秀才とギフテッド(天才)との差異と同様である。つまり自閉症スペクトラム障害の患者の中にもIQが70未満の者から130超の者まで分布しており(ただしこの分布が必ずしも健常者のそれと一致する訳ではない。


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