ダイヤモンドバックスは2022年、74勝88敗と負け越し地区4位に沈んだ。ただ終盤の2か月で若手選手が台頭するなどチームの骨格が定まりつつあり、オフにはその中心となる新人外野手コービン・キャロルと8年の延長契約を結んだ[16]。2023年は開幕からロサンゼルス・ドジャースとの地区首位争いを展開する。MLBが導入した投球間の時間制限 "ピッチクロック" や牽制球の回数制限等の新規則と、チームが標榜する走塁重視の野球がはまって躍進の原動力となった[17]。前半戦終了時には52勝39敗でドジャースとゲーム差なしの2位につけ、8月1日のトレード期限までには、不安定な救援投手陣に抑えとしてポール・シーウォルドを加えた[18]。しかしこの時期チームは勢いを失い、8月11日には9連敗で57勝59敗まで成績を落とした[19]。ドジャースには12.5ゲーム差をつけられて地区優勝が難しくなったが、復調してからは東地区のマイアミ・マーリンズ、中地区のシカゴ・カブスやシンシナティ・レッズとワイルドカードを争う。その結果9月30日、マーリンズとともに残り2枠へ滑り込んだ[20]。平均得点4.60はリーグ7位・MLB14位、防御率4.47はリーグ10位・MLB20位。キャロルは新人初の25本塁打・50盗塁を記録する活躍ぶりで[21]、先発投手のザック・ガレンやメリル・ケリーとともにチーム躍進の立役者となった[22]。ワイルドカードシリーズではミルウォーキー・ブルワーズを2勝0敗で[23]、地区シリーズではドジャースを3勝0敗で[24]、リーグ優勝決定戦ではフィラデルフィア・フィリーズを4勝3敗で[25]、それぞれ下した。
この2球団は、ここ数シーズンの結果が以下の点で共通している[26]。
2020年・2021年の2年連続で地区最下位。2021年は100敗以上を喫する
2022年も負け越しで地区4位
2023年は地区2位に浮上し、ワイルドカードとしてポストシーズン進出
今ポストシーズンはワイルドカードシリーズ2勝0敗→地区シリーズ3勝0敗→リーグ優勝決定戦4勝3敗で勝ち抜け。リーグ優勝決定戦では前年ワールドシリーズ出場球団を下す
両球団とも低迷から急速な躍進を遂げており、100敗シーズンの翌々年にシリーズ進出は歴代最速タイ[注 2]、シリーズ進出前年の両球団合算勝率.438は歴代2位の低さ[注 3]、シリーズ進出直前3シーズンの通算勝率はレンジャーズが.391で歴代4位、ダイヤモンドバックスが.393で同5位の低さである[注 4][27]。ただ、チーム構築の手法は両チームで異なっている。今ポストシーズンでロースター入りした選手の入団経緯をみると、プロ入りからその球団一筋という生え抜き選手の数はレンジャーズが5人に対しダイヤモンドバックスが12人、FAで移籍してきた選手の数はレンジャーズが9人に対しダイヤモンドバックスが5人である。ポストシーズン進出12球団中では、レンジャーズは生え抜き選手数が2番目に少なくFA移籍選手数が最多タイであり、ダイヤモンドバックスは生え抜き選手数が2番目に多くFA移籍選手数が2番目に少ない[28]。また、選手に費やす金額にも差がある。年俸総額はレンジャースが2億5100万ドルで30球団中4位の高額であるのに対し、ダイヤモンドバックスはその半分以下の1億1900万ドルで21位にとどまっている[29]。
レンジャーズGMのクリス・ヤングと助監督のウィル・ベナブル、ダイヤモンドバックスGMのマイク・ヘイゼンはいずれもプリンストン大学出身であり、在学中に野球部監督スコット・ブラッドリーの下でプレイした経験を持つ。特に両GMはブラッドリー監督就任1年目の1998年、最上級生で主将を務めるヘイゼンが高校生のヤングを勧誘するために大学で出迎えたときからの顔見知りで、今シリーズで両者の対戦が決まった際には、ブラッドリーの携帯電話にグループメッセージでふたりから「監督、ぜひ観にいらしてください。席はご用意できます」と送信されてきたという[30]。