2020年の台風
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台風に関する統計が開始された1951年以降で平均的な台風1号の発生は3月頃であるため、かなり遅めの発生となり、統計史上8番目の遅さとなった[1][2][3][4]。その後もしばらくの間台風の発生ペースが遅く[5]、最初の台風発生から1ヶ月後の6月12日台風2号が発生したが、その後は台風が発生しない期間が7月後半に至るまで続いた[6]。7月は、平年であれば本格的な台風シーズンの始まりの時期で、本来台風の発生数が一年で3番目に多い月であり、平年で3.6個は発生するものの[7]、この年の7月は太平洋赤道域で急速にラニーニャ現象が発生しつつあったため[8]、かなり静かな時期であった[注 2]。当時、フィリピン沖の海水温は30℃以上あり、台風が発生するには十分な海水温であった一方で、インド洋の海水温も平年より高かった(ダイポールモード現象[6][9][10]。インド洋では平年に比べ広く上昇流が強かったものの、太平洋では広範囲の海域で平年に比べて上昇流が弱く、下降流場となっており、上空の大気の流れが対流活動を抑える下降気流が卓越していたため[5]、広範囲に活発な雨雲は発生しづらくなっていたほか[6]、これにより例年よりも西側に太平洋高気圧が強まり、北西太平洋は台風が発生しづらい状態となっていた[9]。これらのことが、台風の発生が少なかった原因であると考えられる。こうして、7月は1951年の統計開始以降初めて、台風の発生数が0個となった[11][12][13][注 3][注 4]。また、統計史上、7月末までに台風の発生が2個以下にとどまったのは、この年と1998年の2例のみである。

またこのことは、7月の集中豪雨の発生や梅雨明けが遅れたこととも関連がある可能性があるという[10][14]。フィリピン海から太平洋高気圧の縁をまわって流れてくる暖かく湿った空気の流れが強まって、これが梅雨前線に沿うように西から流れるインドモンスーンの暖かく湿った空気の流れとぶつかることにより、大量の水蒸気を南西から送り込んだために、雨雲が発達しやすい危険な状況を生み出したと推測される[9]。さらに、前述のように太平洋高気圧が例年より西に張り出し、日本付近に張り出していなかったため、梅雨前線も北に押し上げられず[10]、この年は沖縄を除いて7月下旬になってもなかなか梅雨が明けず、記録的な遅さとなっていた[14][15]

しかし8月になると、それまでの状況から転じて台風の発生ペースが上がり、1日に早くも台風3号が発生。台風3号としては発生日時が過去2番目に遅く、また統計史上、台風3号の発生が8月にまで遅れたのは、1998年と2020年のみとなっている。また台風3号の発生から6時間後に台風4号が発生し、1日の間に2つも台風が発生した。その後も対流活動が活発な状況が続き、8月の台風発生数は7個となった。

9月以降も対流活動が活発な状況が続き、8月下旬から9月上旬にかけては北朝鮮に、10月はベトナムに台風が集中して上陸した。特にベトナムは10月に豪雨の被害が発生して、大規模な水害となった。詳細は「en:2020 Central Vietnam floods」を参照

日本への影響においては、台風10号が非常に強い勢力で西日本に接近し、一時気象庁が「特別警報級の勢力で直撃する可能性がある」と警戒を促したが、実際には特別警報級の勢力で直撃することはなかった。しかし、九州地方の各地で暴風が観測され、大きな被害が出た。
月別の台風発生数10月28日に西太平洋で同時に3つの熱帯低気圧が存在しています。左から右へ:台風18号(モラヴェ)台風19号 (コーニー)、および 台風20号(アッサニー) になった熱帯低気圧(右下)。

1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月年間
117472123


日本への接近数:7個(4号・5号・8号・9号・10号・12号・14号)[16]

日本への上陸数:0個

台風の日本上陸数

台風の年間日本上陸数上陸数が多い年上陸数が少ない年
順位年上陸数順位年上陸数
1
2004年1012020年 2008年 2000年
1986年 1984年0
22016年 1993年 1990年662023年 2009年 1995年 1987年 1980年
1977年 1973年 1957年1
52019年 2018年 1989年 1966年
1965年 1962年 1954年5


各熱帯低気圧の活動時期


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