時2017年11月15日 - 11月21日
場所 ジンバブエ、ハラレ
結果ロバート・ムガベ大統領が辞任し、37年間の長期政権に幕。エマーソン・ムナンガグワ前第一副大統領が大統領に就任
衝突した勢力
ジンバブエ国防軍
ZANU-PF(11月19日以降) ムガベ政権
ZANU-PF(11月19日以前)
指揮官
エマーソン・ムナンガグワ
コンスタンチノ・チウェンガ
ロバート・ムガベ
グレース・ムガベ
フェレケゼラ・ムフォコ
被害者数
不明不明
2017年ジンバブエクーデター(2017ねんジンバブエクーデター)は、2017年11月15日にジンバブエで同国国防軍により企図された政変である。軍によればクーデターではなく、国家に政治的・経済的な打撃を与えている、ロバート・ムガベ大統領の周辺にいる「犯罪者」を標的とした行動であるとしているが、ムガベは大統領の座を追われ、37年間に及ぶ政権に幕を下ろした。
背景ムガベ夫妻
1980年にジンバブエの首相、1987年に同国大統領となったロバート・ムガベは35年以上にわたり政権を維持し、90歳を超えても権力の座にあった。2014年に第1副大統領に就任したエマーソン・ムナンガグワはムガベの後継候補と目された時期もあったが、やがて両者の関係は悪化。2017年11月4日には、与党ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線
(英語版)(ZANU-PF)が12月に予定している特別総会を前にムナンガグワが派閥争いを煽ったとの理由でムガベはムナンガグワを批判、副大統領からの更迭を警告した。翌11月5日にはムガベの妻グレース・ムガベが大統領職を引き継ぐ用意があると演説した[1]。2018年の大統領選挙が近づく中、ムガベの後継をめぐってムナンガグワとグレース夫人は衝突する関係にあった[2]。ムナンガグワ第1副大統領11月6日、ムガベはムナンガグワを第1副大統領から解任[1][3]。このことは首都ハラレでサイモン・カヤ・モヨ(英語版)情報大臣によって発表され、それによればムナンガグワは一貫かつ永続的に忠誠心に欠け、無礼で不実であり不正直で信頼できないというのが解任の理由であった[1]。しかし本当はグレースを後継の大統領にするため、まずは第1副大統領に据える目的での解任ではないかとの憶測が広がった[3]。国防軍はムナンガグワを強く支持していたため[4]、副大統領解任に国防軍トップのコンスタンチノ・チウェンガ(英語版)司令官は強く反発。またムガベ政権支持者の間からもこうした解任の動きには不満の声が上がった[4]。
その後、11月11日までにムナンガグワは旧来ジンバブエと関係の深い中国に脱出し[5]、事態はこれで収拾するかと思われたが、11月10日の中国訪問[6]から帰国したばかりのチウェンガが11月13日に記者会見を開き、ムナンガグワの解任を受け入れず、本人や支持派の追放が続けば介入する準備があると表明[4][7][8]。この発言にZANU-PFは憤慨し、翌11月14日にチウェンガの主張は反乱を煽る反逆行為であると批判した[2][7]。同日には首都ハラレ市内に兵士が配置され[7]、近郊にて複数の中国製の85/89式装甲兵員輸送車[9]が目撃されるなど不穏な空気が流れた[2][8]。 2017年11月15日午前2時すぎ、ムガベの私邸付近にて数分の間に30?40発ほどの銃声が鳴り響き[2]、首都ハラレでも複数の爆発音が発生した[8]。そして国営放送局のジンバブエ放送
推移
クーデターの発生
同日中にはZANU-PF内でグレースが率いるグループG40の中心メンバーであるイグナシウス・チョムボ(英語版)財務大臣が軍によって身柄を拘束された[7]。ムガベは夫人や2人の閣僚と共に自宅軟禁下に置かれたが[11]、南アフリカのジェイコブ・ズマ大統領には元気であると明かしている[10]。ただし、グレース夫人についてはナミビアへ脱出したとの情報も報じられた[12]。また、ムガベが兼任していた与党ZANU-PFの党首の地位を、第1副大統領を解任されたムナンガグワが継承したという情報がZANU-PFのものと思しきTwitterアカウントより発信されたが、これが本物かどうかも含めて議論があり、確認されなかった[13]。
ムガベ退陣を巡る混乱ムガベの失脚を喜ぶハラレの人々
11月16日にはカトリック司祭が仲介に入り、事態収拾に向けムガベの退陣が話し合われたものの本人は2018年大統領選挙前の辞任を拒否した[11]。南アフリカ政府もノシビウェ・マピサヌカクラ(英語版)国防大臣とボンガニ・ボンゴ国家治安大臣の二人を特使として派遣し、ムガベやチウェンガを交えて大統領府にて会談を行い、その様子は国営放送ZBCや政府系日刊紙ヘラルドによって写真を交えて報じられた。会談の中ではチウェンガが第1副大統領を解任されたムナンガグワへの権限委譲を求めたものの、ムガベは抵抗した[14]。