2010年メキシコ湾原油流出事故
[Wikipedia|▼Menu]

2010年メキシコ湾原油流出事故
NASAの人工衛星テラが2010年5月24日に撮影した油膜
現場メキシコ湾のミシシッピ川三角州(英語版)近く
座標.mw-parser-output .geo-default,.mw-parser-output .geo-dms,.mw-parser-output .geo-dec{display:inline}.mw-parser-output .geo-nondefault,.mw-parser-output .geo-multi-punct,.mw-parser-output .geo-inline-hidden{display:none}.mw-parser-output .longitude,.mw-parser-output .latitude{white-space:nowrap}北緯28度45分19.34秒 西経88度23分15.65秒 / 北緯28.7553722度 西経88.3876806度 / 28.7553722; -88.3876806座標: 北緯28度45分19.34秒 西経88度23分15.65秒 / 北緯28.7553722度 西経88.3876806度 / 28.7553722; -88.3876806
発生日2010年4月20日-7月15日
原因掘削施設爆発によって掘削パイプが折れたことによる
負傷者.mw-parser-output .plainlist--only-child>ol,.mw-parser-output .plainlist--only-child>ul{line-height:inherit;list-style:none none;margin:0;padding-left:0}.mw-parser-output .plainlist--only-child>ol li,.mw-parser-output .plainlist--only-child>ul li{margin-bottom:0}

死者11人

負傷者17人

運営者BPと契約しているトランスオーシャン(Transocean)社[1][2]
流出詳細
流出量1日5,000から25,000バレル
流出面積2,500 - 9,100平方マイル (6,500 - 23,600 km2)[3][4]

2010年メキシコ湾原油流出事故(2010ねんメキシコわんげんゆりゅうしゅつじこ)は、2010年4月20日メキシコ湾沖合80 km、水深1,522 mの海上で海底油田掘削作業中だった、BP社石油掘削施設「ディープウォーター・ホライズン」で、技術的不手際から掘削中の海底油田から逆流してきた天然ガス引火爆発し、海底へ伸びる5500 mの掘削パイプが折れて大量の原油メキシコ湾へ流出した事故。

BPによると7月16日までの原油流出量は約78万キロリットル(490万バレル)である[5][6][7]。1991年の湾岸戦争(推計600万バレルとも)に次ぐ規模で、1989年に4万キロリットルが流出したアラスカ州エクソンバルディーズ号原油流出事故をはるかに超え、被害規模は数百億USドルとされる。
事故の経過炎上するディープウォーター・ホライズン。沿岸警備隊の艦艇やヘリコプターが消火や乗組員救出のために集まっている。この写真は2010年4月21日に撮影されたものだが、翌日ディープウォーター・ホライズンは沈没した火災の消火活動。沿岸警備隊ヘリより撮影(2010年4月21日)

2010年4月20日夜、世界最大の沖合掘削請負会社トランスオーシャンが管理する、ルイジアナ州ベニス(Venice, Louisiana)沖の石油掘削施設ディープウォーター・ホライズンで、大規模な爆発があり、11人が行方不明となり、17人が負傷した[8][9]。当時は126人の作業員が働いていた[8]。掘削施設は4月22日に水没した[10]

アメリカ合衆国沿岸警備隊によると、石油掘削基地から延びる原油の帯は4月30日に200 km、幅120 kmに達した[11][12]、ルイジアナ州の住民からは29日に沿岸に漂着しているという報告がある[13]。そのため、ルイジアナ州、アラバマ州フロリダ州ミシシッピ州の4州で、4月30日に非常事態宣言が出された。7月15日の封じ込め作業により油の流出は止まり、9月19日に油井の封鎖作業を完了した。

BPは、6月中旬現在までに65万ガロン(130万ガロン?)のCorexit EC9500AとCorexit EC9527Aという石油分散剤(英語版)[14]を投入している。この分散剤は、アメリカ合衆国環境保護庁により、この海域で使用することが認められている2製品である。
油田

この油田のプロジェクト名は「マコンド・プロスペクト」といい、メキシコ湾の海底谷ミシシッピ・キャニオン(英語版)に設定された海域「ミシシッピ・キャニオン252地区」にある。2008年3月に内務省のMMS(鉱山資物管理部)の入札でBPが採掘権を得て、2010年2月に採掘を開始した(業界分類:API油井60-817-44169)。
ディープウォーター・ホライズン

事故を起こした「ディープウォーター・ホライズン」は自動船位保持装置を備えた半潜水式(セミサブマーシブル)の石油プラットフォーム(リグ)で、海に浮きながら自動で位置を調節し、大水深の海底から石油を掘削することができる。

R&Bファルコン社の発注で1998年末から韓国の現代重工業が建造し、R&Bファルコンがトランスオーシャンによって買収されたことにより、2001年2月にトランスオーシャン社に引き渡された。以来、イギリスの石油会社BPとの契約の下で、メキシコ湾岸油田の様々な鉱区で石油掘削を行ってきた。

マコンド・プロスペクトでは2009年10月に別のリグで掘削を始めたが、ハリケーンで損傷したため、2010年1月にディープウォーター・ホライズンと交替した。申請工期は78日だが、内部で51日と定められた。その後工期は遅れ予算は超過した(1日100万ドル)。事故は80日目だった。
責任組織

米政府からBPへの通告による責任組織は次の通り[15]

BP(ブリティッシュ・ペトロリアム) - オペレーター権益65 %

アナダルコ - ノンオペレーター権益25 %

三井石油開発の米子会社(MOEX USA Corp.)- ノンオペレーター権益10 %

トランスオーシャン - 掘削装置と運用

ハリバートン (企業) - セメント作業、センタリング装置

「(油田開発作業を実施・管理する)オペレーターと(権益だけを持つ)非オペレーター間の契約で事前に責任範囲を決め、最終的に負担割合が決まる。契約により過失があっても負担をする可能性もある」(新日本石油開発社長 古関信)[16]

7月22日の米上院国土安全保障・政府活動委員会小委員会の公聴会の冒頭声明で、三井石油開発の石井社長は「契約上我が社には何の権限もない。オペレーター(BP)が全責任を持つ」と述べた[17][18]
事故の対策と影響一面に拡散する油膜(2010年4月22日)オイルフェンスの用意をする作業員(2010年4月29日)NASAの人工衛星テラが2010年5月1日に撮影した油膜

メキシコ湾岸はアラスカとは異なり、沿岸には巨大湿地帯が広がり、牡蛎など自然の宝庫であり(メキシコ湾全体の漁獲高はエビが全米の約69 %、牡蠣は70 %[19])、アメリカ合衆国としては人口集中地帯であるので、石油流出による自然環境、社会生活、漁業、観光業(年間1,000億ドル、アラバマ州では50 %減)への影響も懸念される。

そのため5月2日にオバマ大統領は原油が沿岸まで15 kmに迫ってきたルイジアナ州ベニスに入り、ヘリコプターなどで視察した。視察ではナポリターノ国土安全保障省長官から連邦政府の現地対策司令官に任命されたばかりのアレン沿岸警備隊司令官から説明を受けた。大統領は「史上最悪の被害が生じる可能性がある」と述べた[20]

事故以来、原油回収船とオイルフェンスを使い、1日あたり6億円を投じて流出油の回収を行ったが、流出箇所は深い海中であり、原油の噴き出す圧力もきわめて高く、またミシシッピ川の大河口に近いので潮流も複雑であり、流出から長期間経過していたため、被害の拡大が心配された。沖合には、メキシコ湾内を循環する海流(ループカレント)があるが、到達した場合はメキシコ湾全体のみならず、大西洋にまで被害を与える可能性があった。

生分解が困難である油塊(タールボール)が砂浜の下60 cmから発見され、長期的影響が心配されている[21]

5月6日に野生動物保護区である、ルイジアナ州のシャンデルア諸島に油が漂着したと、アメリカ海洋大気庁(NOAA)が発表した[22]

7月には沿岸約1,500 km(ミシシッピ州ティンボーラー湾からフロリダ州パナマシティ)に漂着した。ループカレントと呼ばれる湾内の海流に乗ったものや、フロリダ半島本体や大西洋に流れ出したものは、流出量に比べれば遙かに少ないが、ハリケーンシーズンにループカレントを経て拡散することが懸念されている[23]

恒久的な対策として、特殊深海潜水艇を使い、海中パイプをレンチのようなものではさみ流出を防ぐ案があった。5月5日に1箇所塞ぐことに成功したが、流出量は変わらなかった。更に鉄とコンクリートの箱(高さ12 m、100トン)を海底の流出箇所にかぶせて、パイプで海上の回収タンカーに送る方法(「トップハット作戦」)が準備された[24]が、6,900万パスカル(600気圧)という高圧で噴き出す原油の力により浮き上がってしまい、蓋をすることに失敗した[25]。その後も、油田をで埋める「トップキル作戦」も原油の噴出圧のために失敗したが、7月15日には油田に蓋をする新たな箱の設置に成功するなど、一部の作戦は功を奏しつつあった[25]

周辺は油田地帯であり、ミシシッピ河口のニューオーリンズは、世界中に小麦など穀物を積み出すカントリーエレベーターの集積地点であるため、影響は大きい。さらに2010年に入って原油価格は高騰を続け(2010年4月WTI 1バレル 80 - 86ドル、12月は70ドル前後)、将来的に採掘がたやすい油田の新規開発が減ることも見込まれ、大深度海底油田の開発が、メキシコ湾をはじめとする世界各地で積極化していた時期でもあり、長期的な影響が懸念された。
時系列.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

この節に雑多な内容が羅列されています。事項を箇条書きで列挙しただけの節は、本文として組み入れるか、または整理・除去する必要があります。(2010年8月)

2010年4月

4月20日、夜10時頃爆発炎上。

5月5月6日モービル沖

5月14日 - BPのトニー・ヘイワードCEOは英ガーディアン紙に対し、「メキシコ湾は広大だ。海全体の水の量に比べれば、流出した石油と分散剤の量など微々たるものだ」と弁明[26]

5月26日

BPは油田そのものをで埋める「トップキル作戦」を開始した。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:80 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef