2,4-ジニトロフェノール
IUPAC名
2,4-dinitrophenol
別称Solfo Black
識別情報
CAS登録番号51-28-5
108 °C, 381 K, 226 °F
沸点
113 °C, 386 K, 235 °F
酸解離定数 pKa4.114
危険性
NFPA 704333
RフレーズR10 R23 R24 R25 R33
Sフレーズ(S1) (S2) S28 S37 S45
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
2,4-ジニトロフェノール(英: 2,4-Dinitrophenol、DNP)は有機化合物の一つ。黄色結晶性固体で、甘く黴臭い臭気を持つ。昇華性がある。ほとんどの有機溶媒や、アルカリ性の溶液に溶ける[1]。酸化的リン酸化を脱共役化し、ATPの発生しないエネルギーの急速な消費を行う。自然界には存在しない人工の化合物である[2][3]。
2,4-ジニトロクロロベンゼンの加水分解によって合成される[4]。 主に防腐剤として用いられる。硫化染料 細胞内のプロトンに対するイオノフォア(プロトノフォア)として機能し、ATP合成酵素を通さずにミトコンドリアや葉緑体の内膜からプロトンを流出させる。膜間のプロトン濃度勾配が失われることでプロトン駆動力が減少し、細胞のATP生産力が減少する。失われたエネルギーは熱に変換される。効果は用量依存
工業利用
生理作用
生化学領域では、化学浸透や他の膜輸送プロセスが関わる生体エネルギー論的研究でよく用いられる。 1933年に、スタンフォード大学のCuttingとTainterがDNPの強力な代謝促進作用を発見すると、瞬く間に抗肥満薬
抗肥満薬
通常、人体に対するDNPの作用の限界はATPの枯渇ではなく、脱共役作用に伴う体温の上昇である。このため、過剰摂取は致命的な熱中症を招く。これに照らして、臨床的に用いる場合は、個人の耐性に合わせて少量ずつ用いる必要があるとされていた[10]。
ヒトにおける急性致死量は20?50 mg/kgである[11]。危険な副作用と急激な白内障への懸念から、米国では1938年には抗肥満薬として用いられることはなくなった。だが現在でも、脂肪を急激に落とすために用いているボディビルダーやアスリートが存在するとみられる。致命的な過剰摂取は珍しいが、稀に報告される。これには事故による曝露[12]・自殺[11][13][14]・意図的な過剰服用[13][15][16]などが含まれる。
現在では、抗肥満薬としての利用は危険すぎるとみなされているが[17]、その作用機序は潜在的に有用であるとみられ、研究が行われている[18]。現在では、ヒト体内で合成され、同様の役割を果たす脱共役タンパク質が発見されている。
英国食品基準庁はDNPを深刻な急性・慢性毒性を持つ工業用化学薬品で、人の健康に対して非常に危険であるとしている。消費者に対しては人の利用に適しておらず、DNPを僅かでも含む製品は摂取すべきでないとしている[19]。
2004年には、22歳の男性が抗肥満薬として摂取したDNPによって死亡した[20]。2012年のイギリスでも摂食障害を患った女子学生が同様に死亡し[21][22]、2013年のポーランドでも、これと似た状況で20歳の女性が死亡している[23]。 この物質はインターネットで販売されている[24]。 薬物動態に関する情報は限られており混乱している。アメリカ合衆国環境保護庁はDNPとその代謝産物に対する消失速度データは見つからないとしている[25]。アメリカ毒性物質・疾病登録庁
薬物動態