1999年の夏休み
[Wikipedia|▼Menu]

『トーマの心臓』(トーマのしんぞう)は、萩尾望都による日本漫画作品。漫画雑誌『週刊少女コミック1974年19号から52号に連載された。

ドイツギムナジウム(高等中学)を舞台に、人間の愛という普遍的かつ宗教的なテーマを描いた作品[注釈 1][注釈 2]

舞台映画化されており、2009年には萩尾望都のファンであることを公言している小説家森博嗣によりノベライズされた。目次

1 概要

2 あらすじ

3 登場人物

3.1 シュロッターベッツの生徒

3.2 シュロッターベッツの教職員

3.3 その他


4 番外編

4.1 湖畔にて - エーリク 十四と半分の年の夏

4.1.1 あらすじ(湖畔にて)


4.2 訪問者

4.2.1 あらすじ(訪問者)



5 姉妹編

5.1 11月のギムナジウム

5.1.1 あらすじ(11月のギムナジウム)


5.2 小鳥の巣

5.2.1 あらすじ(小鳥の巣)



6 オスカー・ライザーの相違点

7 単行本・文庫本

8 舞台劇

8.1 1996年 Studio Life

8.2 1997年 Studio Life

8.3 1998年 Studio Life

8.4 1999年 Studio Life

8.5 2000年 Studio Life

8.6 2003年 Studio Life

8.7 2006年 Studio Life

8.8 2010年 Studio Life

8.9 2014年 Studio Life

8.10 2016年 Studio Life


9 映画『1999年の夏休み』

10 影響を受けた作品

11 脚注

11.1 注釈

11.2 出典


12 外部リンク

概要

本作は、フランス映画『悲しみの天使』をモチーフとして描いた作品である[2][注釈 3]。ギムナジウムを舞台にした理由について、萩尾はヘッセを読んで以来、ドイツという国にあこがれていましたので……」と語っている[2]

本作のテーマについて、萩尾は「中学生のころ、ひたすら「いいひと」になりたかった。それをテーマにしたのが『トーマの心臓』です。完ぺきな善人を目指した神学校の優等生の、挫折と成長を描いた物語です。」と記している[3]。なお、ユーリは作品のラストでシュロッター・ベッツから神学校に転校していくので(作品中ではまだ神学校の生徒にはなっていないので)、その点で萩尾の記述には混乱が見られる。

連載初回の読者アンケートが最下位だったため、編集長から打ち切りを要請された。萩尾が「せめて1ヵ月見て下さい」と言っているところ『ポーの一族』の単行本初版3万部が3日で完売したため、さらに編集から『ポーの一族』を描くよう要請されたが、「もう少しで終わりになるから」とかわしているうちに『トーマの心臓』の評判も上がり連載は最終回の33回まで続くこととなった[4]

番外編に「訪問者」「湖畔にて - エーリク 十四と半分の年の夏」、姉妹編に『11月のギムナジウム』「小鳥の巣」(ポー・シリーズ)がある。
あらすじ

ある雪の日、シュロッターベッツ・ギムナジウムのアイドルだったトーマ・ヴェルナーが陸橋から転落死し、ギムナジウム中が騒然となる中、委員長であるユリスモール・バイハン(ユーリ)のもとにトーマからの遺書が届く。事故死とされていたトーマの死が自殺であること、トーマが死を選んだ理由が自分自身にあることを知り、ユーリはショックを受ける。

数日後、ギムナジウムに亡くなったトーマとそっくりの転校生、エーリク・フリューリンクがやってくる。エーリクを見るたびにユーリはトーマと重ねてしまい、怒りや憎しみをあらわにすることすらあるのだが、そこにエーリクの母の事故死の知らせが入り、悲しみにくれるエーリクをユーリは慰め、これを機会に2人は次第に心を通わせていく。

エーリクはユーリへの気持ちを深めていくが、心の傷を呼び覚まされたユーリは再びかたくなな態度を取るようになる。しかし、ひたすらユーリを愛し信頼を得たいと願うエーリクの言葉から、ユーリは、トーマがユーリの罪を自ら引き受け、あがなおうとし、そのために自分の命を代償にしたのだと悟る。そうしてユーリは、自分を取り巻く多くの愛と幸福、そして自分を見守っていた周囲の人々に気づく。

神はどんな人をも愛し、許していることを知ったユーリは、神父となるために神学校への転校を願い出、ギムナジウムを去る。
登場人物
シュロッターベッツの生徒
ユリスモール・バイハン / ユーリ
シュロッターベッツ高等部1年。14歳。品行方正、成績優秀でみんなから信頼される委員長だが、ある事件以来心を閉ざしている。トーマのことを愛していたが、自分には資格がないと思い手ひどくふってしまう。
南欧系の外貌を持っているため、自分に向けられる差別に対抗して優等生であろうとしている。
トーマ・ヴェルナー
シュロッターベッツ中等科4年。13歳。フロイライン(お嬢さん)と呼ばれ、誰からも愛される子供だった。ユーリを救うために自殺する。
エーリク・フリューリンク
シュロッターベッツ高等部1年。14歳。ル・ベベ(フランス語で赤ちゃん)と呼ばれるくらい自由奔放で世間知らずだが、勘のいいところもある。母親とずっと2人暮らしだったためマザーコンプレックスだったが、母親の死によって自分の依存心に気づく。トーマが死んだ直後にシュロッターベッツに編入したが、トーマとうりふたつであったので校内で大きな話題を呼ぶ。
オスカー・ライザー
シュロッターベッツ高等部1年。15歳。シュロッターベッツ・ギムナジウムに預けられる前は1年間父親と旅行をしていたため、1年遅れて編入している。不良っぽいが兄貴肌。ミュラー校長が実の父で、そのことが原因で父親は母親を殺害し、その父親も死亡していることを察している。ユーリのことが好きだが、ある事件のことを知ってしまったため見守ることしかできない。
サイフリート・ガスト
前年にシュロッターベッツ高等部を放校された不良生徒。素行が悪いが頭の切れる悪魔的な魅力を持っていた。己の主義の実証のためにユーリの心身に深い傷を負わせる。八角メガネが特徴。
アンテ・ローエ
シュロッターベッツ中等科4年。13歳。オスカーのことが好きで、オスカーからユーリを引き離そうと、トーマとどちらがユーリを落とせるか賭けを提案した。
レドヴィ
シュロッターベッツ中等科4年。13歳。盗癖がある。トーマがユーリにあてた詩を見つけていた。
ヘルベルト、アロイス
シュロッターベッツ高等部1年。14歳。ユーリとは常に対立しているが、ユーリを信頼している。
リーベ、アーダム
シュロッターベッツ高等部1年。14歳。ユリスモール親衛隊。
ホセ
シュロッターベッツ高等部3年。16歳。暴力的な性格。時計を盗まれたことからレドヴィにしつこく付きまとう。
バッカス、シャール、ヘニング
シュロッターベッツ高等部の最上級生。毎週土曜日の午後に「ヤコブ館のお茶会」を主催している。トーマはこのお茶会の常連だった。
シュロッターベッツの教職員
ルドルフ・ミュラー
シュロッターベッツ・ギムナジウムの校長。オスカーの実父。ライザー夫妻とは大学時代の旧友。オスカーを養子にしたいと思っているが言い出せない。
ブッシュ先生
シュロッターベッツ・ギムナジウム教諭。
古典(ラテン語)担当。大変厳しい先生。
ホーマン先生
シュロッターベッツ・ギムナジウム教諭。化学担当。元ヨハネ館の舎監。
保健の先生
校医[注釈 4]。校長からの信頼も厚い。ユリスモールの傷のことを心配している。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:56 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef