1980年モスクワオリンピック
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冷戦で、ソ連と対立していたアメリカ合衆国は1979年のソ連のアフガニスタン侵攻を口実に、五輪からソ連を締め出すことを決断しアメリカオリンピック委員会もこれを了承した。ブレジネフ政権は見返りも提示して説得工作を行ったが[2]失敗に終わり、最終的にアメリカのカーター大統領が1980年1月にボイコットを主唱したことから、日本分断国家西ドイツ韓国、それに1979年10月の国際オリンピック委員会 (IOC) 理事会(名古屋開催)でIOC加盟が承認されていたが、1960年代以降ソ連と対立関係にあった中国イランサウジアラビアパキスタンエジプトなどといったアフガニスタンムジャーヒディーンを支援するイスラム教諸国、および反共的立場の強い諸国など50カ国近くがボイコットを決めた[1]。アメリカはコートジボワールイタリア、日本、西ドイツ、中国といったボイコットした国々に対してモスクワ五輪に対抗した競技大会を準備し[3]、陸上競技のリバティ・ベル・クラシックや体操競技のUSGF国際招待大会(英語版)をアメリカで開催した。

一方、イギリスフランスイタリアオーストラリアオランダベルギーポルトガルスペインなどの西欧オセアニアの西側諸国の大半は参加した[1]。イギリスではボイコットを指示した政府の後援を得られず、オリンピック委員会が独力で選手を派遣した。フランス、イタリア、オランダなど7カ国は競技には参加したものの、開会式の入場行進には参加せずイギリス、ポルトガルなど3カ国は旗手1人だけの入場行進となった[1]

これらの参加した西側諸国は概ね国旗を用いず、優勝時や開会式などのセレモニーでは五輪旗五輪賛歌が使用された。ただし、ギリシャだけは国旗を用いている。
日本

1979年 - オリンピック協賛企業のテレビCMでは「
頑張れニッポン! モスクワは近い!」というフレーズが盛り込まれ、プレイベントが各媒体で大々的に行なわれていた。

1980年2月 - 前月のアメリカからの西側諸国への要請を受け、日本国政府は大会ボイコットの方針を固めた[1]。一方、日本オリンピック委員会 (JOC) は大会参加への道を模索した。

1980年4月 - 日本国政府の最終方針としてボイコットがJOCに伝えられた。多くの選手はJOC本部で大会参加を訴えた。

1980年5月24日 - JOC総会の投票(29対13)でボイコットが最終的に決定された。この採決は挙手によるもので、伊東正義官房長官(当時)も出席しており、各競技団体の代表者には参加に投票した場合には予算を分配しないなどの圧力がかけられていたことが明らかになっている[1][4]

1980年6月11日 - JOC常任委員会がモスクワ五輪日本選手団(幻のメンバー)、同時に大会への不参加を承認する。

IOCの動向

このボイコット問題は、IOCの責任能力ならびに統率力の限界を露呈させた。当時IOCのマイケル・モリス会長はこのボイコット問題に関して、「この問題に対してIOCはコメントする立場にない。よって、IOCは一切関わらず、責任は負わない」として関与を拒絶した。しかも建前上は各国の意志の尊重を掲げていたため、IOC及びモリス会長に批判が集中した。IOCがこのボイコット問題に関して言及したのは、この時が唯一であり、これ以降は2023年現在に至るまで一切声明を発していない。
前後のボイコットとの関連  1976年モントリオールオリンピックをボイコットした国  1980年モスクワオリンピックをボイコットした国  1984年ロサンゼルスオリンピックをボイコットした国  上記3大会とも出場した国。

モスクワオリンピックへのボイコットを呼びかけ、中心的存在であったアメリカが開催する予定になっていた、次(1984年)の夏季オリンピックであるロサンゼルスオリンピックには、アメリカ軍グレナダ侵攻を理由に多くの東側諸国が報復としてボイコットした。中でも、イランはモスクワオリンピックとロサンゼルスオリンピックを両方ともボイコットしている。

なお、前回のモントリオールオリンピックでは、南アフリカ共和国アパルトヘイト政策に絡みアフリカ諸国の多くがボイコットをしたが、今回の五輪では主にイスラム圏を除いたアフリカ諸国が復帰した。

一方で、モスクワオリンピックをボイコットした韓国で次々回1988年に開催されたソウルオリンピックには、中華人民共和国をはじめほとんどのアフリカ諸国もソ連をはじめとする東側諸国北朝鮮キューバを除く)も参加し、大規模なボイコット合戦にようやく終止符が打たれた。
実施競技

陸上競技

水泳

競泳

飛込

水球


サッカー

ボート

ホッケー

ボクシング

バレーボール

体操

バスケットボール


レスリング

セーリング

ウエイトリフティング

ハンドボール

自転車競技


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