10セント硬貨_(アメリカ合衆国)
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「ダイム」はこの項目へ転送されています。その他の用法については「DIME (曖昧さ回避)」をご覧ください。

10セント硬貨 アメリカ合衆国
価値0.10 アメリカドル
質量2.268 g (0.0729 troy oz)
直径17.91 mm (0.705 in)
厚さ1.35 mm (0.053 in)
縁118個の溝
構成91.67%
ニッケル8.33%
鋳造年1796年 ? 現在
カタログ番号-
表面
デザインフランクリン・ルーズベルト
デザイナージョン・R・シノック(英語版)
デザイン時期1946年
裏面
デザイン松明、オリーブオークの枝
デザイナージョン・R・シノック
デザイン時期1946年

ダイム(: Dime)として知られるアメリカ合衆国10セント硬貨は、1アメリカドルの10分の1と同等の価値を持つ硬貨である。硬貨は現在アメリカ合衆国の中で製造・流通する全硬貨の中で最も薄く、直径は最小である。表側にはアメリカ合衆国第32代大統領を務めたフランクリン・ルーズベルトの肖像が描かれ、裏側にはオークの松明とオリーブの枝に覆われた、アメリカ合衆国のモットー「E pluribus unum (多数からなる一つ)」がデザインされている。硬貨には実際の価値を示す「10セント」といった単位は記されておらず、「one dime (1ダイム)」と刻まれているのみである。
概要

ダイム硬貨は、1792年の貨幣法によってその権限を与えられ、1796年より製造が始まった。最初のダイムは自由の女神像(リバティ)を象った女性の横顔が表側に、ワシの姿が裏側に描かれている。硬貨の表と裏にはこのモチーフをもとに、1837年まで3つの異なったデザインが描かれた。1837年から1891年にかけ、「シーテッド・リバティ(自由の女神の座像)」がデザインされた硬貨が発行され、盾の横に座った女神が描かれた。1892年、同じく自由の女神を模した女性の頭部の描写が再び硬貨に用いられるようになり、硬貨のデザイナーであるチャールズ・E・バーバーの名前から「バーバー・ダイム」と呼ばれた。1837年より後に製造されたこれら2つの種類の硬貨には、裏側の花冠に飾り付けられた「ONE DIME」の文字が刻まれた。1916年、羽つき帽をかぶった自由の女神の横顔が硬貨の表側にデザインされ、通常「マーキュリー・ダイム」と誤称される。この硬貨の裏側には束桿(そっかん)が彫られた。現在の硬貨のデザインへ変更が行われたのは1946年である。

その製造の歴史の中で、硬貨に含まれる金属の比率や直径は変えられてきた。最初は硬貨の大きさが19mm (0.75in) の幅で造られていたが、1828年に現在のサイズである17.91mm (0.705 in) へ変更されている。当初は89.24%の銀と10.76%の銅で構成されていた硬貨も、1837年を境に90%のと10%のへと比率が改められた。この構成で硬貨は1966年まで製造された。しかし、1965年と1966年に製造された硬貨は、1964年の製造年が刻まれている。1965年初頭、ダイム硬貨は白銅などで構成される、クラッドメタルと言う張り合わせ合金を用いて製造され始め、現在もこの製造法が続いている。

「ダイム」という語は古フランス語の「disme (現代フランス語では dime と綴る)」の借用で、「1/10(十分の一)」(転じて十分の一税」)を意味する。この「ダイム (DIME)」の文字は初期のパターン硬貨(英語版)には「DISME」として刻まれていたが、1837年までどの硬貨にも用いられることはなかった。
略歴

アメリカ合衆国における10進法を基本とした硬貨製造の仕組みは、トマス・ジェファーソンベンジャミン・フランクリンアレクサンダー・ハミルトン、デヴィッド・リッテンハウスによって1783年に提案がなされた。合衆国の初代財務長官を務めていたハミルトンは、議会の記録の中でこうした6つの硬貨の発行を推奨している。6枚の新硬貨案のなかには銀貨があり、これは「価値や重さが、1単位あたりの銀及びドルの10分の1に相当するもの」とされた。ドルの10分の1ということから、この新しく製造される硬貨の名称は「tenth (テンス、10分の1)」とされた。

1792年4月2日に通過した貨幣法は、銀の重さとドルの価値の10分の1に値する、「disme」硬貨の製造を認可するものであった。この硬貨の構成は、銀89.24%と銅10.76%だった。1792年に僅かな枚数の「disme」硬貨が製造されたが、世間一般に流通することはなかった。これらの中には銅の試し打ち硬貨があるなど、実際には1792年の硬貨が流通を目的としない試鋳貨幣に過ぎなかったことを示している。その後硬貨の需要が無く、アメリカ合衆国造幣局で硬貨の製造に問題があったため、1796年まで10セント硬貨は流通用として製造されなかった。

「ドレイプト・バスト」と呼ばれる最初の10セント硬貨は、コインの価値を示す「 - cent」等の刻印が描かれていなかった。これは1809年に「キャップト・バスト」と称される種類の硬貨の発行が始まるまで続いた。このキャップト・バスト硬貨は、裏側に価値を表す「10 C.」のマークが印されている。こうした硬貨が製造されていた間は、造られる期間も不規則で、1799年や1806年はドレイプト・バスト硬貨が製造されておらず、その次の種類であるキャップト・バスト硬貨も製造されたのは1809年、1811年、1814年、1820年のみである。1827年よりほぼ毎年硬貨の製造がおこなわれているが、中には製造数が極端に限られていた年もみられる。

1837年、ダイムは「シーテッド・リバティ」硬貨へとデザインが変更された。これはその前年にデザインされた「シーテッド・リバティ・ダラー」硬貨と同様の意匠である。加えて、硬貨の大きさや銀の含有量にも変更が施された。このシーテッド・リバティ・ダイムは54年間製造され、2001年にルーズベルト・ダイムが55年を迎えるまで最も長く硬貨に使用されたデザインだった。

1892年、バーバー・ダイムがお披露目となり、1916年まで製造が続けられた。中でも「1894-S」版のバーバー・ダイムは著名であり、たった24枚の硬貨が打ち出されたことが確認されているほか、そのうち9枚のみが未だに存在している。2005年5月7日にはオークションにてその9枚のうちの1枚が130万ドルという高値で落札され、オークション史上最も高い落札額のダイム硬貨となった。

その後も「1894-S」版は、しばしばオークションにかかり、2016年には約200万ドル、2019年には132万ドルで落札された記録が残る[1]

バーバー・ダイムのデザインは1916年に、通称「マーキュリー・ダイム」と呼ばれる「ウィングド・リバティ・ヘッド」へと切り替えられた。この硬貨の表側に描かれている肖像はローマの神であるメルクリウスであると勘違いされるが、これは自由の女神リバティを描いたものである。他の10セント硬貨も、ルーズベルト・ダイムを除く全ての肖像が自由の女神をイメージして描かれている。マーキュリー・ダイムはアメリカ合衆国の硬貨の中でも、視覚的に最も魅力ある硬貨の一つであると考えられており、多くの収集家が捜し求めている。

マーキュリー・ダイムの次は1946年、その前年4月に逝去したフランクリン・D・ルーズベルト大統領に敬意を表しデザインされた、「ルーズベルト・ダイム」に取って代わる。当時は25年間隔であれば議会の承認無しに硬貨のデザインを変更できたため、他の硬貨でもデザインの変更が可能であったが、大統領の肖像を描いた最新のデザインは10セント硬貨に取り入れられることとなった。これはルーズベルト大統領が急性灰白髄炎のための国営基金を設立していたことに関連する。この基金は「マーチ・オブ・ダイムズ(英語版)」として知られ、後に公式な名称として採用された。ダイム硬貨はその導入以来、重大なデザインの変更を経験していなかったが、1965年に構成されている金属の割合が著しく変更された。1965年の貨幣法で、ダイム硬貨の他25セント硬貨や、(1971年には)50セント硬貨からも含まれている銀を取り除くことが盛り込まれ、75パーセントの銅と25パーセントのニッケルの合金を用いるよう修正された。しかし、1965年と1966年にも銀を含んだダイム硬貨が製造されており、在庫を防ぎ製造量を増やすために製造年を「1964年」とした。ルーズベルト・ダイムは現在も一般に流通しており、大きなデザイン変更も計画されていない。2003年に共和党議会議員がルーズベルトの肖像をロナルド・レーガン大統領の肖像へと切り替える試みが行われたが、提案は長続きせずに終わった。

10セント硬貨の縁に現在もギザギザの凹凸が見られるのは、初期のデザインの名残である。当時は縁だけを削って貯めたもので利益を得たのち、削り終えた硬貨を普通に使うなどの不正使用や偽造を妨げるため、金貨や銀貨にはこうしたギザギザの凹凸が付けられていた。現在、貴金属が含まれている硬貨は、流通を目的として製造されていない。しかし、こうした広く流通する通貨に現在もギザギザの凹凸が用いられているのは、目の不自由な人々が触れることで、どの硬貨なのかを判別するのに便利であるためだとされている。現在10セント硬貨の縁には118個のギザギザの溝がある。
デザインの歴史

1796年に初めて導入されて以来、10セント硬貨は6つの主な種類がこれまで発行されている。右側の年は発行された期間を、そして「バーバー・ダイム」を除き、6種類の呼称はそれぞれ硬貨の表側に描かれたデザインを表している。

ドレイプト・バスト(Draped Bust、長髪の人物の胸像) - 1796年 - 1807年

キャップト・バスト(Capped Bust、帽子を被った人物の胸像) - 1809年 - 1837年

シーテッド・リバティ(Seated Liberty、座った女神) - 1837年 - 1891年

バーバー(Barber、人物の横顔) - 1892年 - 1916年

ウィングド・リバティ・ヘッド(Winged Liberty Head、別名マーキュリー) - 1916年 - 1945年

ルーズベルト(Roosevelt、ルーズベルト大統領の横顔) - 1946年 - 現在

1796年から1837年にかけて、10セント硬貨は89.24%の銀と10.76%の銅で構成され、額面の10セントよりも硬貨の価値が上昇してしまうのを防ぐために、硬貨の大きさをかなり小さくすることが求められた。硬貨に含まれる金属の構成は、シーテッド・リバティ・ダイムが導入された1837年に変更され、銀90%と銅10%の含有率で製造されるようになった。この新しい硬貨の本質的な金属価値を維持するため、硬貨の直径はそれまでの18.8mm (0.74 in) から、現在の大きさと同じ17.9mm (0.705 in) へと縮小された。

1965年の貨幣法の一節により、硬貨に含まれる銀は完全に取り除かれることとなった。よって1965年から現在まで製造されているダイム硬貨は、75%の銅と25%のニッケルで出来ている。アメリカ合衆国造幣局が1992年より発行を始めた年次の銀貨セットでは、10セント硬貨が1965年以前の基準である銀90%と銅10%の構成で造られている。こうした硬貨のセットは収集家向けに作られたものであり、一般に流通させることを目的としたものではない。
ドレイプト・バスト(1796年 - 1807年)1805年のドレイプト・バスト・ダイム

最初に流通した10セント硬貨は、1796年のドレイプト・バスト・ダイム (Draped Bust dime) である。硬貨の両面のデザインは当時一般に出回っていた他の硬貨と同じで、こうしたデザインは一般に「ドレイプト・バスト/スモール・イーグル」デザインと呼ばれた。このデザインは造幣局の主任彫刻家を務めていたロバート・スコットによるものである。


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