1977年、バックはこの映画でロシアのスパイ、アーニャ・アマソワを演じた。彼女は映画の後で、ボンドは「女の子を使って、自分を弾丸から守るブタ」であると述べた。 シリーズ第10作を記念し、前作の2倍の1400万ドルの製作費をかけた超大作となった本作は、世界興行成績も前作の約2倍の1億8540万ドルとなり、インフレ率を勘案しなければ過去最高記録[4]。しかし、1977年の映画は強豪がひしめき、『スター・ウォーズ』(7億9800万ドル)、『未知との遭遇』(3億380万ドル)、『サタデー・ナイト・フィーバー』(2億8540万ドル)に次ぐ第4位に留まった[5]。日本の1978年度の全体及び海外映画配給収入でもこの1位の『スター・ウォーズ』(43億8000万円)・2位の『未知との遭遇』(32億9000万円)の順位は変わらなかったが、本作はそれに次ぐ第3位(31億5000万円)となり、同年度の日本映画配給収入の第1位の 『野性の証明』(21億5000万円)と第2位の『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』(21億円)を凌いだ[2]。 アメリカの女性シンガー、カーリー・サイモンによる「私を愛したスパイ(原題:Nobody Does It Better)」が、イギリスの『ミュージック・ウィーク』誌では最高位「7位」、アメリカの『ビルボード』誌では、最高位「2位」を獲得する大ヒットとなった。英米共にトップ10入りしたのは、ポール・マッカートニー&ウィングスの『死ぬのは奴らだ・Live And Let Die』に続いて2曲目である。また、マーヴィン・ハムリッシュによるサウンドトラックは、『ビルボード』誌で最高位40位を獲得している。
スタッフ
監督 - ルイス・ギルバート
製作 - アルバート・R・ブロッコリ
脚本 - クリストファー・ウッド、リチャード・メイボーム
音楽 - マーヴィン・ハムリッシュ
主題歌 - 「007 私を愛したスパイ のテーマ」(Nobody Does It Better)
作詞 - キャロル・ベイヤー・セイガー
作曲 - マーヴィン・ハムリッシュ
唄 - カーリー・サイモン
撮影 - クロード・ルノワール
編集 - ジョン・グレン
プロダクション・デザイン - ケン・アダム
美術 - ピーター・ラモント
特殊効果 - ジョン・エヴァンス
視覚効果 - デレク・メディングス
メインタイトル・デザイン - モーリス・ビンダー
興行成績
主題歌「私を愛したスパイ (曲)」も参照
エピソード
ボンドと共にストロンバーグの陰謀に挑むソ連のスパイ、トリプルXことアニヤ・アマソワはボンドガール史上、初めてボンドと対等の地位を持つ人物。前半はハニートラップでボンドを出し抜くなど、ボンドに引けを取らない活躍を見せるものの、後半はその美貌が悪役の目に留まり、捕まって拉致され、セクシーな衣装を着せられて拘束され、そのまま敵に弄ばれてボンドの助けを待つ他なかったという、従来のボンドガールと同様の扱いになっている。なお、スチール写真ではビキニやハイレグなどの水着姿が見られるが、作中では着用していない。
カーリー・サイモンが歌う主題歌『Nobody Does It Better』は、ボンドシリーズの数ある名主題歌の中でも常に上位にランクされるヒット曲で、今日でも『ロスト・イン・トランスレーション』や『ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月』の中で使用されるなど、その人気は衰えを見せない。2004年、アメリカン・フィルム・インスティチュートは同曲を「過去100年に書かれたもっとも偉大な映画主題歌100曲」の第67位に選出している。「Nobody Does It Better」はアカデミー賞の主題歌賞にもノミネートされたが、ボンドシリーズの主題歌で同賞にノミネートされたのはこの曲と、『死ぬのは奴らだ』の『Live And Let Die』(ポール・マッカートニー&ウィングス)、『ユア・アイズ・オンリー』の『For Your Eyes Only』(シーナ・イーストン)の三曲で第85回アカデミー賞で初めて「スカイフォール」の「Skyfall」(アデル)で受賞した。
この『Nobody Does It Better』は主題歌の曲名が映画のタイトル(The Spy Who Loved Me)と異なる初めてのもので[6]、同様の主題歌は他に『オクトパシー』(Octopussy)の『All Time High』と『カジノ・ロワイヤル』(Casino Royale)の『You Know My Name』と『慰めの報酬』(Quantum Of Solace)の『Another Way to Die』があるのみである。