007_スカイフォール
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1962年に『007は殺しの番号』で始まったシリーズの50周年記念作品として、2012年10月23日にロンドンのロイヤル・アルバート・ホールでプレミア上映され[6]、英国では10月26日、北米では11月9日、日本では12月1日に公開された。IMAXカメラでの撮影はされていないが、IMAXシアターで上映されるシリーズ初作品となった。アカデミー賞2回、BAFTA賞2回、グラミー賞2回など、数々の賞を受賞した。全世界での興行収入が10億ドルを超えた史上14番目の作品となり、歴代興行収入第7位、英国での興行収入第1位、シリーズの興行収入第1位、ソニー・ピクチャーズMGMの両社内での全世界での興行収入第1位、2012年の興行収入第2位を記録した。
ストーリー

「007」をコードネームに持つMI6のエージェント、ジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)は新人女性エージェントのイヴ(ナオミ・ハリス)とともにトルコでの作戦に参加していた。その最中、MI6の工作員たちが殺され、各国のテロ組織に潜入している全てのNATOの工作員の情報が収められたハードディスクが奪われた。ボンドはディスクを取り戻すべく、実行犯であるフランス人傭兵パトリス(オーラ・ラパス)を追跡する。イヴはパトリスに照準を合わせようとするが、ボンドと列車の上で格闘しているため射撃できない。MI6部長・M(ジュデイ・デンチ)の指令により彼女が発砲すると、銃弾はボンドに当たってしまう。ボンドは峡谷に落下し行方不明となり、パトリスは逃亡を果たす。

数カ月後。ボンドは公式に死亡が認定され、Mは情報漏洩の責任を問われて、情報国防委員会の新委員長であるギャレス・マロリー(レイフ・ファインズ)から引退を勧められる。それは事実上の更迭勧告だった。その提案を拒絶するMだったが、その直後にMのコンピュータが何者かによってハックされる。さらにMI6本部も爆破され、6人の職員が死亡、他にも大勢の負傷者を生んだ。このニュースは僻地で秘かに過ごしていたボンドも目にするところとなり、ボンドはロンドンに戻る。古い地下壕を利用したMI6新本部に入り、00(ダブルオー)要員への復帰テストに臨むボンドだったが、成績は惨憺たるものであった。復帰に懐疑的なマロリーの意見を一蹴し、Mはボンドの職務復帰を承認する。ボンドは自身の肩に残っていた弾丸の破片からパトリスを特定し、新任の兵器開発課長・Q(ベン・ウィショー)から装備を受け取ってパトリスの向かう上海へ赴く。

上海でボンドは格闘の末にパトリスを倒したものの、雇い主が誰なのかを聞き出す事に失敗。パトリスの所持品にあったカジノのチップを手掛かりにボンドはマカオへ向かう。

その頃、ハードディスクにあったNATO工作員のうち5名の氏名がインターネット上に公表され、毎週さらに5名ずつ公表していくという予告がなされる。

カジノでボンドはパトリスの仲間らしい謎の女性・セヴリン(ベレニス・マーロウ)に接触。ボンドから情報を引き出そうとしつつも何かに脅える様子のセヴリンに、ボンドは雇い主を殺すつもりがあるなら手伝うと持ちかける。セヴリンを監視する男たちの襲撃を撃退したボンドは、セヴリンの船で共に雇い主のいる廃墟の島に向かうが、船上でセヴリンともども囚われの身となる。

島ではパトリスとセヴリンの雇い主、ラウル・シルヴァ(ハビエル・バルデム)と対面する。シルヴァは自らとボンドを「共食いの果てに最後に残った2匹のラット[注釈 1]」に例える。元MI6エージェントであったシルヴァは、中国への返還を控えた香港支局勤務時に、任務の枠を外れた形で中国の情報を得ようとしたため、当時の上司Mが中国当局へ通報。中国当局に捕らわれイギリス側に見捨てられたことで、Mを深く恨んでいた。そしてこの島にサイバー犯罪の拠点を作り上げ暗躍していたのだった。シルヴァはボンドが心身共に現場復帰に適さない状態にありながら、Mがそれを隠していたことを告げる。だがボンドは「私の趣味は『復活』だ」とそれを一笑に付す。シルヴァはセヴリンを危険に晒した射撃ゲームでボンドを試そうとする。結果セヴリンはシルヴァに殺されるが、ボンドは一瞬の隙を突きボディガードたちを倒し、発信器の信号を追ってきた増援を得て、シルヴァを捕らえることに成功する。

シルヴァはロンドンのMI6新本部に拘禁された。シルヴァは、かつてMに見捨てられた際敵による拷問のさなか歯に仕込ませた毒物で自決を図ったことを告げ、崩壊した素顔を見せるが、彼女はそれを冷たく突き放す。Mは彼女の責任を問う公聴会が開かれるウェストミンスターへと向かう。

一方、Qとボンドはシルヴァのコンピューター端末を解析しようとするが、端末に仕組まれていたプログラムがMI6のシステムに侵入してシルヴァの拘禁が解かれ、まんまと脱走されてしまう。シルヴァは部下に助けられながら地下鉄に逃げ込み、ボンドの追跡を振り切りM襲撃の態勢を整える。

公聴会ではMが糾弾の矢面に立たされ、ダブルオーセクションの解体まで言及されていた。マロリーは批判の言葉を並べる大臣を制すると、Mに発言を促す。Mはいまだ世界には国でもなく地図にも載らない危険な勢力が存在し、その「影」と戦う組織が必要なのだと静かに説く。Mの亡夫がかつて親しんでいたアルフレッド・テニスンの「ユリシーズ」をMが引用し終えた刹那、シルヴァと手下たちが議場に躍り込んでくる。激しい銃撃戦になり、MI6の護衛員や議場警備の警察官が次々と倒れ、マロリーも左肩に被弾する。間一髪のところで駆け付けたボンドがマロリーやイヴとともに、シルヴァとその配下の攻撃を退ける。

Mを護衛しつつ公用車で連れ去ったボンドは途中、公用車から自身所有のボンドカーであるアストンマーティン・DB5に乗り換え、スコットランド・グレンコウの荒野にある今は住む者のない彼の生家「スカイフォール」へ向かう。ボンドはシルヴァを誘い込む為、Qに電子的に跡を残して置くよう指示する。幕僚主任のビル・タナー(ロリー・キニア)とともに手段を講じるQの前にマロリーが現れるが、彼はボンドの目論見を見抜いた上でそれを黙認、効果的なアドバイスまで与えるのだった。

「スカイフォール」でボンドとMは、ボンド家の猟場管理人であるキンケイド(アルバート・フィニー)の協力のもと、ありあわせの材料で作ったいくつもの罠を家中に仕掛け、シルヴァの到来を待つ。3人はシルヴァの送り込んだ第一襲撃グループは撃退したが、その最中にMが銃弾を受けて重傷を負う。シルヴァ本人が第二襲撃グループを引き連れてヘリコプターで到来し、ボンドはMとキンケイドを「スカイフォール」から離れた礼拝堂と墓地の方角へとつながるトンネルに逃がす。シルヴァの指示を受けたヘリコプターからの攻撃によってDB5が大破させられるも、ボンドは生まれ育った家屋をガスボンベとダイナマイトで爆破し、第二襲撃グループの大半とヘリコプターを撃退する。一時呆然となったシルヴァはトンネルから地上へ出たMとキンケイドの存在に気付き、後を追って礼拝堂に向かう。トンネルを抜け出たボンドはMたちのもとに急ぐがシルヴァに阻まれ、抵抗するが凍った湖の中にシルヴァの手下とともに消える。

礼拝堂にたどり着いたシルヴァはMが負傷したことを知り狼狽するも、彼女に銃を突きつけ、共に死ぬことを強要する。そこへボンドが到着、シルヴァにとどめを刺し「自分が最後のネズミだ」と告げる。だがMの傷は深く、もう助かる見込みはなかった。「私は1つだけ正しかった」とつぶやき、Mは息を引き取る。

Mの葬儀後、イブはボンドにMI6本部勤務となったことを告げ、改めて自己紹介し、本名(マネーペニー)を明かす。新たなMとなったマロリーは次の任務を指示し、ボンドは「喜んで」と受諾するのだった。
キャスト

ショーン・コネリーが初代ジェームズ・ボンドを演じると発表されてから50周年となる[7]2011年11月3日、ロンドンのコリンシア・ホテルにて記者会見が開かれ、『スカイフォール』のキャストが公式に発表された[8][9][10]アストンマーティン・DB5
ジェームズ・ボンド
主演のダニエル・クレイグ演 - ダニエル・クレイグトルコでのミッション中、Mの強引な命令によって負傷し、行方をくらますが、MI6本部が襲撃を受けたことを知り帰還する。本作では彼の生家「スカイフォール」が登場するが、ボンド死亡の報を受けて売却されることが決まっており、猟銃のコレクションもボンドの父の愛銃を除いて人手に渡っていた。直刃剃刀などアンティークな物を使用することを好み、トム・フォードのスーツを着用している
M
演 - ジュディ・デンチMI6のボス。トルコでのミッション中、イヴへ下した射撃命令によりミッションが失敗した上にボンドを失う。さらには情報を奪われただけでなくMI6本部が破壊されてしまい、周囲から引退を迫られている。そんな中、帰還したボンドを再雇用して再びミッションに参加させる。デンチによるMは7作目であり、今作のラストでMが殉職する為、デンチ最後のMとなる[11]。なお、彼女は前2作で姿を見せていた夫(※演者不詳)について、審問会の場面で言及した際に故人とことわっている。
ラウル・シルヴァ(英語版)(本名:ティアゴ・ロドリゲス)[12]
演 - ハビエル・バルデム本作の悪役。MI6を恨み、復讐を企てるサイバーテロリスト[13][14](後にスペクターの下部組織の一員と判明)。バルデムはシルヴァを「悪役」以上と説明し、またクレイグは「非常に重要な関係」を持っていると述べた[15]。バルデムはキャラクターのために異なった外観を探し出すことを検討し、メンデスとの協議の結果、金髪に染め上げた[16]。一部の批評家からはウィキリークス創始者のジュリアン・アサンジとの類似が指摘された[17][18]


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