ゼウスが開いたペーレウスとテティスの結婚の祝宴に招かれなかった争いの女神エリスは、宴の最中に黄金の林檎を投げ入れた(あるいは転がし入れた)[4][5]。黄金の林檎には「καλλ?στ?」(「最も美しい女神に」)と書かれていた[4][5]。3人の女神、ヘーラー、アテーナー、アプロディーテーがこの林檎を自らに相応しいものとして要求した[4][5]。グレゴリオ・ラッザリーニ「パリスの審判」18世紀
ゼウスは、人類で最も美しい男、トロイアのパリスが、間もなく行われる雄牛の審査会で審判をすることに気付き、雄牛に姿を変えたアレースを遣わした。アレースは、ゼウスに命じられたこのこっけいな義務を受け入れた。神たるアレースはどこから見ても完璧であり、結果、金の月桂冠を勝ち取る。ゼウスはパリスが公正公平な審判をすると知っており、パリスに判断させようと考えたのである。
彼は林檎をヘルメースに持たせ、パリスにそれを届けて、女神たちが彼の判断を議論抜きに受け入れることを伝えよと命じた。女神たちはパリスのもとに現れ、それぞれ林檎を得るための賄賂としてパリスに贈り物を約束した。
ヘーラーは、「アシアの君主の座」を、アテーナーは「戦いにおける勝利」をパリスに約束した[5]。最後のアプロディーテーは、「この世で最も美しい女」、すなわちトロイアのヘレネー(この時点ではスパルタの王妃)を妻に与えようと約束した[5]。パリスはアプロディーテーを選び、これがトロイア戦争の発端となる[5]。
パリスはすぐに兄弟と、ヘレネーとメネラーオスの結婚を祝うために出かけた。彼らはそこで夜を迎え、メネラーオスはアガメムノーンに呼び出されると、ヘレネーとパリスだけが残された。このとき二人は愛を交わし、ヘレネーはメネラーオスを捨ててパリスとともにトロイアへ向かった。ここからトロイア戦争が始まった。
北欧神話黄金の林檎の木とフライア。『ラインの黄金』より。
北欧神話では、黄金の林檎は神の不老不死の源とされる。これはギリシア神話におけるアムブロシアーに当たる。女神イズンが林檎の管理に当たっており、林檎と最も関連付けられる。 『詩語法』第1章(No.55)でイズンは、エーギルによるアースガルズの晩餐でその玉座につくアース神族の女性神8人の1人だとされる[6]。第56章でブラギは、イズンが霜の巨人スィアチに誘拐されたとエーギルに語る。 ブラギは語るところによれば、鷲に姿を変えたスィアチを棒で打った仕返しに、ロキは鳥につかまれて空に向かってぐいぐいと引っ張られる。
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