黄金の林檎
[Wikipedia|▼Menu]
ゼウスは、人類で最も美しい男、トロイアパリスが、間もなく行われる雄牛の審査会で審判をすることに気付き、雄牛に姿を変えたアレースを遣わした。アレースは、ゼウスに命じられたこのこっけいな義務を受け入れた。神たるアレースはどこから見ても完璧であり、結果、金の月桂冠を勝ち取る。ゼウスはパリスが公正公平な審判をすると知っており、パリスに判断させようと考えたのである。

彼は林檎をヘルメースに持たせ、パリスにそれを届けて、女神たちが彼の判断を議論抜きに受け入れることを伝えよと命じた。女神たちはパリスのもとに現れ、それぞれ林檎を得るための賄賂としてパリスに贈り物を約束した。

ヘーラーは、「アシアの君主の座」を、アテーナーは「戦いにおける勝利」をパリスに約束した[5]。最後のアプロディーテーは、「この世で最も美しい女」、すなわちトロイアヘレネー(この時点ではスパルタの王妃)を妻に与えようと約束した[5]。パリスはアプロディーテーを選び、これがトロイア戦争の発端となる[5]

パリスはすぐに兄弟と、ヘレネーメネラーオスの結婚を祝うために出かけた。彼らはそこで夜を迎え、メネラーオスはアガメムノーンに呼び出されると、ヘレネーとパリスだけが残された。このとき二人は愛を交わし、ヘレネーはメネラーオスを捨ててパリスとともにトロイアへ向かった。ここからトロイア戦争が始まった。
北欧神話黄金の林檎の木とフライア。『ラインの黄金』より。

北欧神話では、黄金の林檎は神の不老不死の源とされる。これはギリシア神話におけるアムブロシアーに当たる。女神イズンが林檎の管理に当たっており、林檎と最も関連付けられる。
神話

詩語法』第1章(No.55)でイズンは、エーギルによるアースガルズの晩餐でその玉座につくアース神族の女性神8人の1人だとされる[6]。第56章でブラギは、イズンが霜の巨人スィアチに誘拐されたとエーギルに語る。

ブラギは語るところによれば、に姿を変えたスィアチを棒で打った仕返しに、ロキは鳥につかまれて空に向かってぐいぐいと引っ張られる。彼の足は石、砂利、木にぶつかって大きな音を立て、ロキは自分の腕が肩から引きちぎれるのではないかと思う。ロキが大声で叫んで鷲に休戦を乞うと、鷲はロキに、イズンをその林檎とともにアースガルズの外に連れ出すと正式に誓えば放してやると言う。ロキは承知し、友人のオーディンヘーニルのところに戻る。ロキは、アースガルズから「ある森」にイズンを誘い出そうとして、自分が見つけた林檎をイズンが管理すべきだ、イズンの持っている林檎を持ち出して、ロキの見つけたリンゴと比べてみるべきだと説く。スィアチが鷲の姿で現れてイズンを強奪し、自分の宮殿であるスリュムヘイムへ連れ去る[7]

イズンがいなくなると、アース神族の老化が始まった。アース神族は集会を開き、イズンを最後に見たのはいつか互いに確かめ合う。イズンが最後に目撃されたのは、ロキと一緒にアースガルズの外に出た時だとわかり、ロキを捕まえて集会に引っ張り出し、殺すぞ拷問するぞと脅しをかける。恐怖に駆られたロキは、女神フレイヤに「の羽衣を借りられれば、自分がヨトゥンヘイムの地へイズンを探しに行く」と口走る。フレイアは鷹の羽衣をロキに貸し、ロキはそれを使って北のヨトゥンヘイムに飛んで翌日スィアチの宮殿に到着する。スィアチはボートで海に出ていてイズンだけが残っていた。ロキはイズンを木の実(胡桃)に変え、爪に掴んで必死に飛んで帰る[7]

帰宅したスィアチは、イズンがいなくなったことに気付き、鷲に姿を変えてロキを追い、大風を吹かせる。アース神族は木の実を掴んで飛ぶ鷹と、それを追う鷲に気付き、アースガルズの地下から木の削り屑を大量に持ち出す。鷹は砦の上に着くと壁沿いに落下する。鷲は鷹を見失っても止まることができず、羽根に火がついて墜落する。アース神族は近づいて霜の巨人スィアチをアースガルズの砦内で殺害し、「この殺害は広く知れ渡った」[7]
ニーベルングの指輪

リヒャルト・ワーグナーによる『ニーベルングの指輪』では、黄金の林檎を示すライトモティーフが作曲されている。

最初はファーフナー役によって歌われ、兄弟のファゾルトに向けてフライアを神々から奪わなければならない理由が語られる。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:74 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef