黄泉
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また、一書第十には「泉平坂」(よもつひらさか)で言い争っていたイザナミとイザナギのもとに菊理姫が現れる記述がある(菊理姫は何かを語ったとなっているが何を語ったかに関する記述はない)[8]

イザナミの葬地が三重県熊野市有馬の花の窟に比定されることから[10]、熊野と「黄泉の国」が関連づけられることがある[11]
出雲国風土記

出雲国風土記』出雲郡条の宇賀郷の項には黄泉の坂・黄泉の穴と呼ばれる洞窟の記載があり、「人不得 不知深浅也 夢至此磯窟之辺者必死」と記載されている。即(すなは)ち、北の海浜(うみべた)に磯(いそ)あり。脳(なづき)の磯と名づく。高さ一丈(つゑ)ばかりなり。上に松生(お)ひ、芸(しげ)りて磯に至る。里人の朝夕(あしたゆふべ)に往来(ゆきかよ)へるが如く、又、木の枝は人の攀(よ)ぢ引けるが如し。磯より西の方(かた)に窟戸(いはやど)あり。高さと広さと各(おのもおのも)六尺(さか)ばかりなり。窟(いはや)の内に穴あり。人、入(い)ることを得ず。深き浅きを知らざるなり。夢に此の磯の窟の辺(ほとり)に至れば必ず死ぬ。故(かれ)、俗人(くにひと)、古(いにしへ)より今に至るまで、黄泉(よみ)の坂・黄泉(よみ)の穴と号(なづ)く。

この洞窟は島根半島出雲市猪目町にある「猪目洞窟」に比定されるのが通説である[10]。猪目洞窟は昭和23年(1948年)に発掘され、弥生時代から古墳時代にかけての人骨や副葬品が発見された。

なお、黄泉国とは出雲地方のことであるとする説[12]がある。
『聖書』中の訳語としての「黄泉」詳細は「地獄 (キリスト教)」を参照

新約聖書』中のギリシャ語ハデス」、『旧約聖書』中のヘブライ語シェオル」(en:Sheol)を漢文訳の『聖書』では「黄泉」と訳しており、日本語訳聖書においては、口語訳聖書では「黄泉」、新共同訳聖書では「陰府(よみ)」、新改訳聖書では「ハデス」と訳されている。類語であるギリシャ語の「ゲヘンナ」は地獄と訳されることが多く、訳し分けがなされている。他方、日本正教会訳聖書では、ゲヘンナを地獄(ルビ:ゲエンナ)、ハデスを地獄(ルビ:ぢごく)と、ルビを使って訳し分けている。

キリスト教内でも地獄に対する捉え方が教派・神学傾向などによって異なる。地獄と訳されることの多いゲヘンナと、黄泉と訳されることの多いハデスの間には厳然とした区別があるとする見解と[13]、区別は見出すもののそれほど大きな違いとは捉えない見解[14]など、両概念について様々な捉え方がある。

厳然とした区別があるとする見解の一例に拠れば、ゲヘンナは最後の審判の後に神を信じない者が罰せられる場所、ハデスは死から最後の審判復活までの期間だけ死者を受け入れる中立的な場所であるとする。この見解によれば、ハデスは時間的に限定されたものであり、この世の終わりにおける人々の復活の際にはハデスは終焉する。他方、別の捉え方もあり、ハデスは不信仰な者の魂だけが行く場所であり、正しい者の魂は「永遠の住まい」にあってキリストと一つにされるとする[13]

上述した見解例ほどには大きな違いを見出さない見解からは、ゲエンナ(ゲヘンナ)、アド(ハデース)のいずれも、聖書中にある「外の幽暗」(マタイ22:13)、「火の炉」(マタイ13:50)といった名称の数々と同様に、罪から抜け出さずにこの世を去った霊魂にとって、罪に定められ神の怒りに服する場所である事を表示するものであるとされる[14]
出典・脚注^ 酒井陽「明治期聖書訳語「よみ」に関する一考察」『岐阜聖徳学園大学国語国文学』第26巻、岐阜聖徳学園大学、2007年3月15日、60-47頁。 
^ a b c d e f g h i j k l m n o 梶川信行、鈴木雅裕「<研究へのいざない>教室で読む古事記神話(六)-追往黄泉国から見畏而逃還まで-」『語文』第167号、2020年、36-。 
^ a b c d e f g h i j 酒井陽「黄泉の国と死者の国 -記紀神話の「黄泉の国」は死者の赴く世界か-」『千葉大学日本文化論叢』第2巻、千葉大学文学部日本文化学会、2001年3月20日、1-12頁。 
^ 西條勉「黄泉/ヨモ(ヨミ)|漢語に隠される和語の世界―」 (『東アジアの古代文化』91号、1997年)
^ 森田喜久男. “「ヨモツヒラサカ」を越えた神々”. 松江市. 2024年4月21日閲覧。
^ 久野, p. 17.
^ 久野, p. 18.
^ a b 山田純「 ⇒書紀によると世界は-天孫降臨と歴史叙述-」『文学研究論集(文学・史学・地理学)』第21巻、明治大学大学院、2004年9月30日、127-141頁。 
^ 山田 純「気絶之際の「泉津平坂」」『日本文学』第63巻第10号、2020年、62-66頁。 
^ a b 小山一成「富士の人穴草子試論」『立正大学人文科学研究所年報』第20号、1982年、138頁。 
^ 野原康弘「二度目の葬式-「精霊流し」にみる長崎人の死生観-」『桃山学院大学総合研究所紀要』第44巻第1号、2018年7月、115-。 
^ 安本美典『邪馬台国と出雲神話』(勉成出版、2006年)
^ a b 『旧約新約聖書大事典』540頁、1261頁 - 1262頁 教文館 ISBN 9784764240063
^ a b モスクワ府主教マカリイ1世著『正教定理神学』526頁 - 529頁

参考文献

久野昭『日本人の他界感』 7巻、吉川弘文館東京都文京区〈歴史文化ライブラリー〉、1997年2月1日。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 4-642-05407-3。 

関連項目

来世

常世 - 常世の国

死生観

鬼籍


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