鳥綱
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孵化したばかりの雛は、親鳥の助けなしに巣である塚(マウンド)のなかから自身を掘り起し、また直ちに自活することができる[240]。それとは反対に、多くの海鳥は、親鳥の世話する期間が長期にわたり、最も長いものはオオグンカンドリで、その雛は巣立つまでに6か月かかり、さらに14か月にわたって親鳥から給餌を受ける[241]

ある種においては、両方の親鳥が雛の世話と巣立ちに関わるが、そのほか、一方の親鳥だけがその世話を務めるものもある。また種によっては、雛の養育を、同種のほかの仲間(ヘルパー、helper、通常は、前回の繁殖のときの子といった繁殖つがいの近親)が手助けする場合もある[242]。このような代理育雛は、とりわけカラス類カササギフエガラスオーストラリアムシクイ類などのカラス小目の種で一般的であるが[243]ミドリイワサザイアカトビのように、異なる種の鳥においても観察されている。ほとんどの動物群において、雄が子の世話をすることは稀である。しかしながら、鳥類においてはきわめて一般的であり、ほかの脊椎動物群に比べて非常に多い[90]。縄張りや営巣地の防御、抱卵、雛への給餌などは、多くの場合分担して行われるが、ときに一方が、特定の責務すべてないしそのほとんどを受け持つような分業が生ずることもある[244]

雛が巣立つタイミングは、実にさまざまである。ウミスズメのようなウミスズメ属(英語版)の雛は、陸性の捕食者から逃れるために、孵化したその夜にも(孵化後1-3日)巣を離れ、親鳥について海に出る[245]。ほかにも、カモ類のように早いうちにその雛を巣から遠くに移動させる種がある。ほとんどの種において、雛は飛ぶことができる直前、あるいはその直後に巣を離れる。巣立ったあとの親鳥による世話の度合はさまざまである。アホウドリ類の雛は自分で巣を離れ、それ以上の助けは受けないが[246]、一方、ほかの種においては巣立ち後も、ある程度補助的な給餌を続ける。雛はまた、最初の渡りの際にその親鳥についていくこともある[247]
托卵詳細は「托卵」を参照オオヨシキリが、托卵されたカッコウの雛を育てている。

托卵とは、卵を産むものが、その卵の世話を別の個体の抱卵に託すことをいい、ほかのどの種類の生物よりも、鳥類の間でより一般的である[248]。托卵する鳥がその卵をほかの鳥類の巣に産んだあと、多くの場合、卵は仮親(卵を託された親)に受け入れられ、仮親の雛を犠牲にして育てられる。托卵には、自分の子を育てることができないことから、その卵を必ず異種の鳥の巣に産まなければならない真性托卵(種間托卵)と、自分で子を育てることができるにもかかわらず繁殖の結果を向上させるため、ときに同種の巣にその卵を産むことのある条件的托卵(種内托卵)がある[249]ミツオシエ類ムクドリモドキ類テンニンチョウ類、カモ類(ズグロガモ)など、約100種の鳥が真性托卵を行うが、そのなかで最も有名なのがカッコウ類である。托卵する種のなかには、その仮親の雛より前に孵化するよう適応したものがあり[248]、これによって仮親の卵を巣の外に押し出して壊すことや、仮親の雛を殺すことが可能になる。このことは、巣に運ばれる食料すべてが托卵の雛に与えられることを確実にする[250]
生態系

鳥類は、広範囲にわたる生態的地位を占めている[201]。ある種の鳥類は広食性(多食性)であるが、他方、その生息地ないし食餌の要件において高度に特化した鳥類もある。たとえば森林のような単一の生息環境においても、それぞれ異なる鳥類によって占められる生態的ニッチはさまざまであり、ある種は林冠で採餌し、別のものは樹冠の下で、またそのほかに林床で採餌する種もある。森林の鳥は、食虫性(英語版)であったり、果食性(英語版)、蜜食性であったりする。水鳥は、一般に魚を採食したり、植物を食べたり、あるいはほかの鳥から奪い取る海賊行動(盗賊的寄生)すなわち盗み寄生により採餌する。猛禽類は、哺乳類ないしほかの鳥類の捕食に特化し、ハゲワシ類腐肉食に特化している。Avivore は、鳥類の捕食に特化した動物たちである。

ある種の蜜食性の鳥類は、重要な受粉媒介者であり、また多くの果食性の鳥類が、種子の散布において重要な役割を果たしている[251]。植物と受粉する鳥類は共進化していることが多く[252]、なかには花の主な受粉者が、その蜜を得ることができる唯一の種である場合もある[253]

鳥類は、島嶼の生態系に対して重要な役割を演ずることが多い。鳥類はよく、哺乳類がいない諸島におよぶ。これらの島々では、一般に大型動物によって演じられる生態的役割を、鳥類が果たすこともある。たとえばニュージーランドでは、ニュージーランドバトマオリ語: kerer?)やハシブトホオダレムクドリマオリ語: K?kako)が今日そうであるように、モア類が主要な草食者であった[251]。今日、ニュージーランドの植物は、絶滅したモアから自身を守るために進化した防御的な適応を保持している[254]海鳥の営巣もまた、島嶼やその周囲の海域の生態系に影響を与えることがある。これは主に大量のグアノ(鳥糞石)の集積により、その地域の土壌[255]、および周辺海域が豊かになることによる[256]

鳥類生態野外調査 (Avian ecology field methods) の手段として、個体数の集計(カウント)、巣の監視活動(モニタリング)、捕獲と標識調査(マーキング)など、さまざまな方法が用いられている。
人間との関係ニワトリ工業的飼育。詳細は「トリとヒトの関係(英語版)」を参照

鳥類は非常によく見られ、一般的な動物群であることから、人類はヒトの黎明期から鳥類との関係を持ってきた[257]。ときにこうした関係は、ボラナ族 (Borana) のようなアフリカの民族とミツオシエ類の間における協同のハチミツ採集のように、相利共生のものもある。他方、イエスズメのような種が人間の活動から恩恵を得ているように、片利共生のこともある[258]。何種もの鳥類が、商業的に深刻な農業害鳥とされており[259]、また航空上の危険をもたらす場合もある[260]。人間の活動が鳥類にとって有害な場合もあり、たくさんの種の鳥類が絶滅の危機にさらされている(狩猟、鉛中毒(英語版)、農薬轢死、それに家畜のネコイヌによる捕食が一般的死因である)。

鳥類は媒介者として、オウム病サルモネラ症カンピロバクター症、マイコバクテリア(鳥結核症)、鳥インフルエンザジアルジア症クリプトスポリジウム症などの疾患を、遠距離を介して広めることがある。これらのなかには、ヒトによって媒介され得る人獣共通感染症もある[261]
経済的重要性

食肉や採卵のために飼育された鳥類は、家禽と呼ばれ、人間によって消費される動物性タンパク質の最大の供給源であり、2003年には全世界で約 7600万トンの家禽と[262]、6100万トンの卵が生産された[263]。家禽の消費においては、ニワトリが大部分を占めるが、シチメンチョウ、ガン、カモも比較的一般である。また鳥類の多くの種が、食用のために狩猟の対象となる。鳥類の狩猟(ハンティング)は、きわめて未開発の地域を除いて、主に娯楽的活動である。南・北アメリカにおける最も重要な狩猟鳥は水鳥であるが[264]、これ以外にも広くキジ類ウズラ類、ヤマウズラ類 (Partridge)、シチメンチョウ類ライチョウ類[265]ハト類、タシギ類 (Snipe)、ヤマシギ類 (Woodcock) などが狩猟の対象となっている。またオーストラリアニュージーランドでは、マトンバード猟(英語版)(海鳥であるミズナギドリ類の雛〈マトンバード、Mutton Bird〉を、季節的に食用のため捕獲すること)も一般的である[266]


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