鳥綱
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

集団繁殖を行う鳥は小さな営巣場所を守り、営巣場所をめぐってほかの同種ないし異種との競争が激しくなることがある[230]クロウタドリの雄が、雛に給餌している。

すべての鳥類は、体外卵として、主に炭酸カルシウムで形成された硬い卵殻を持つ有羊膜卵を産む[231]。穴や巣穴に営巣する種は、白色ないし淡色の卵を産む傾向があり、一方、開放型の巣を作るものは、迷彩色の卵を産む。ただし、この傾向には多くの例外が存在する。地上に営巣するヨタカ類は淡色の卵を産み、カモフラージュは、かわりにかれらの羽衣により行われる。托卵の仮親にされる種は、托卵された卵を見つけだす可能性を向上させるために、さまざまな色の卵を産む。それによって托卵する側の雌は、その卵を仮親の卵に合わせることになる[232]キゴロモハタオリ(英語版)の雄が、草を編んで精巧な吊り巣を作っている。

鳥類は通常、巣(英語版)のなかで産卵する。ほとんどの種は、椀形、ドーム形、皿形、窪み、塚(マウンド)、あるいは穴といったような[233]、ある程度精巧な巣を作る[234]。しかしながら、なかにはきわめて原始的なものもある。たとえばアホウドリ類の巣は、地面のかき跡以上のものではない。ほとんどの鳥は、捕食されることを避けるため、その巣を覆いのある、隠れた場所に作る。しかし、大型鳥類やコロニーを形成する鳥など、より防御力の高い鳥類は、さらに開放的な巣を作ることがある。営巣においてある種の鳥は、雛の生存を高めるために、寄生虫を減らす毒素を持つ植物による植物性素材を探し[235]、また、羽毛は巣の断熱材としてよく用いられる[234]。鳥類のなかには巣を持たない種もあり、崖に営巣するウミガラスは、その卵をむきだしの岩の上に生む。また、コウテイペンギンの雄は、卵をその足と体の間に保持する。巣の欠如は、地上に営巣する種で、孵化する雛が早成性 (Precocial) である場合において、特に多く見られる。コウウチョウに托卵されたツキヒメハエトリ(英語版)の巣。

抱卵は、雛の孵化のために温度を最適化するものであり、通常は最後の卵が産み落とされたあとに始まる[236]。一夫一婦の種における抱卵の務めは、雌雄で共有されることが多いのに対し、一夫多妻の種では、片方の親(雌)が抱卵の全責務を負う。親鳥の体熱は、卵を抱いている鳥の腹ないし胸の皮膚が露出した部分である抱卵斑(英語版)を通して卵に伝わる。抱卵はエネルギー的要求の高い行為であり、たとえば成鳥のアホウドリは、抱卵に1日あたり体重の約83グラム (2.9 oz)を失っていく[237]ツカツクリ類の卵を孵すための熱は、太陽、植物の腐食もしくは火山性の熱源による[238]。抱卵期間は、キツツキ類カッコウ類スズメ目の鳥のおよそ10日から、アホウドリ類やキーウィ類の80-90日におよぶ[239]
親鳥の世話と巣立ち詳細は「早成性と晩成性(英語版)」を参照

孵化の時点で雛の成長の度合いは、その種によって、晩成から早成までの範囲がある。晩成性 (Altricial) の雛はいわゆる「留巣性」であり、小さく生まれてくる傾向があり、目が開いておらず、動くことができず、羽毛を持たない。孵化した時点で動くことができ、羽毛が生えそろっている早成性の雛を「離巣性」と呼ぶ。晩成性の雛は、体温調節のための助けが必要であり、早成性の雛よりも長い期間にわたって、親鳥からの給餌を受けなくてはならない。この両極のいずれでもないような雛を、半早成性 (Semi-precocial) もしくは半晩成性 (Semi-altricial) と呼ぶ。ヒメハチドリの雌が、十分成長した雛に餌を与えている。

親鳥による雛の世話の期間と性質は、その分類目や種の間で大きく異なる。ある極端な例として、ツカツクリ類の親鳥の世話は、孵化の時点で終了する。孵化したばかりの雛は、親鳥の助けなしに巣である塚(マウンド)のなかから自身を掘り起し、また直ちに自活することができる[240]。それとは反対に、多くの海鳥は、親鳥の世話する期間が長期にわたり、最も長いものはオオグンカンドリで、その雛は巣立つまでに6か月かかり、さらに14か月にわたって親鳥から給餌を受ける[241]

ある種においては、両方の親鳥が雛の世話と巣立ちに関わるが、そのほか、一方の親鳥だけがその世話を務めるものもある。また種によっては、雛の養育を、同種のほかの仲間(ヘルパー、helper、通常は、前回の繁殖のときの子といった繁殖つがいの近親)が手助けする場合もある[242]。このような代理育雛は、とりわけカラス類カササギフエガラスオーストラリアムシクイ類などのカラス小目の種で一般的であるが[243]ミドリイワサザイアカトビのように、異なる種の鳥においても観察されている。ほとんどの動物群において、雄が子の世話をすることは稀である。しかしながら、鳥類においてはきわめて一般的であり、ほかの脊椎動物群に比べて非常に多い[90]。縄張りや営巣地の防御、抱卵、雛への給餌などは、多くの場合分担して行われるが、ときに一方が、特定の責務すべてないしそのほとんどを受け持つような分業が生ずることもある[244]

雛が巣立つタイミングは、実にさまざまである。ウミスズメのようなウミスズメ属(英語版)の雛は、陸性の捕食者から逃れるために、孵化したその夜にも(孵化後1-3日)巣を離れ、親鳥について海に出る[245]。ほかにも、カモ類のように早いうちにその雛を巣から遠くに移動させる種がある。ほとんどの種において、雛は飛ぶことができる直前、あるいはその直後に巣を離れる。巣立ったあとの親鳥による世話の度合はさまざまである。アホウドリ類の雛は自分で巣を離れ、それ以上の助けは受けないが[246]、一方、ほかの種においては巣立ち後も、ある程度補助的な給餌を続ける。雛はまた、最初の渡りの際にその親鳥についていくこともある[247]
托卵詳細は「托卵」を参照オオヨシキリが、托卵されたカッコウの雛を育てている。

托卵とは、卵を産むものが、その卵の世話を別の個体の抱卵に託すことをいい、ほかのどの種類の生物よりも、鳥類の間でより一般的である[248]。托卵する鳥がその卵をほかの鳥類の巣に産んだあと、多くの場合、卵は仮親(卵を託された親)に受け入れられ、仮親の雛を犠牲にして育てられる。托卵には、自分の子を育てることができないことから、その卵を必ず異種の鳥の巣に産まなければならない真性托卵(種間托卵)と、自分で子を育てることができるにもかかわらず繁殖の結果を向上させるため、ときに同種の巣にその卵を産むことのある条件的托卵(種内托卵)がある[249]ミツオシエ類ムクドリモドキ類テンニンチョウ類、カモ類(ズグロガモ)など、約100種の鳥が真性托卵を行うが、そのなかで最も有名なのがカッコウ類である。托卵する種のなかには、その仮親の雛より前に孵化するよう適応したものがあり[248]、これによって仮親の卵を巣の外に押し出して壊すことや、仮親の雛を殺すことが可能になる。このことは、巣に運ばれる食料すべてが托卵の雛に与えられることを確実にする[250]
生態系

鳥類は、広範囲にわたる生態的地位を占めている[201]。ある種の鳥類は広食性(多食性)であるが、他方、その生息地ないし食餌の要件において高度に特化した鳥類もある。たとえば森林のような単一の生息環境においても、それぞれ異なる鳥類によって占められる生態的ニッチはさまざまであり、ある種は林冠で採餌し、別のものは樹冠の下で、またそのほかに林床で採餌する種もある。森林の鳥は、食虫性(英語版)であったり、果食性(英語版)、蜜食性であったりする。水鳥は、一般に魚を採食したり、植物を食べたり、あるいはほかの鳥から奪い取る海賊行動(盗賊的寄生)すなわち盗み寄生により採餌する。猛禽類は、哺乳類ないしほかの鳥類の捕食に特化し、ハゲワシ類腐肉食に特化している。Avivore は、鳥類の捕食に特化した動物たちである。

ある種の蜜食性の鳥類は、重要な受粉媒介者であり、また多くの果食性の鳥類が、種子の散布において重要な役割を果たしている[251]。植物と受粉する鳥類は共進化していることが多く[252]、なかには花の主な受粉者が、その蜜を得ることができる唯一の種である場合もある[253]

鳥類は、島嶼の生態系に対して重要な役割を演ずることが多い。鳥類はよく、哺乳類がいない諸島におよぶ。これらの島々では、一般に大型動物によって演じられる生態的役割を、鳥類が果たすこともある。たとえばニュージーランドでは、ニュージーランドバトマオリ語: kerer?)やハシブトホオダレムクドリマオリ語: K?kako)が今日そうであるように、モア類が主要な草食者であった[251]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:322 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef