鳥インフルエンザ
[Wikipedia|▼Menu]
しかし、水鳥が感染していたウィルスが野鳥などを通して、家禽類のニワトリウズラ七面鳥などに感染し、家禽集団の中で変異を繰り返すうちに、非常に高い病原性を発症させるといわれる。このようなタイプを高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)と呼び、世界中の養鶏産業にとって脅威となっている[8][9][10][11][12][13]

WOAH(世界動物保健機関)によると、2005年から2023年(4月26日現在)の間に、高病原性鳥インフルエンザで殺処分された鶏などの家禽数は、4億4,800万羽という[14]

ウイルスの病原性は、WOAHの定める判定基準に従って判定される。国内の家畜伝染病予防法では、鳥インフルエンザのうち、ウィルスの亜型に関わらず病原性の高い株による感染症を高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)、病原性は低いがH5もしくはH7亜型である株による感染症を低病原性鳥インフルエンザ(LPAI)としてそれぞれ法定伝染病に、H5およびH7亜型以外のものを鳥インフルエンザとして届出伝染病に指定して区別している[15]

鳥インフルエンザはヒトやカラス[16]などの野鳥、豚、また、多くの鶏舎に生息するネズミ[17]などの動物に感染する[18][19][20]。またハエは鳥インフルエンザウィルスを媒介することが指摘されている[21][22]

人への感染例は一般的ではないとされているが、高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)がヒトに感染し、584 名の感染確定者と、345 名の死亡者が出た例や[3]、鳥インフルエンザ(H9N2型)に98人が感染し、うち2人が死亡した例などもある[23]。家禽市場近隣の住民が鳥インフルエンザに感染したり、養鶏場で発生した鳥インフルエンザにヒトに感染して死亡したりなどといったさせるといった、家禽と接触した人間への感染、発病、死亡も報告されている[11][24][25][23][26]。感染者の死亡率は1997年の流行では30%であったが、2004年の流行では60?70%と極めて毒性が強力に変異している。ただし、これらの死亡率は血清学的調査が行われていないため、本来の意味としての「死亡率」とは異なると指摘する@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}専門家[誰?]もいる。

2022年にスペインの毛皮用ミンク農場のミンクから分離されたH5N1鳥インフルエンザウィルスに変異が認められた。また同年カナダの野生のアカギツネ、スカンク、ミンクから分離されたH5N1の40株全ても変異が認められ、そのうち17%は、哺乳類への適応変異が認められた[27][28]。2023年以降は、鳥インフルエンザが乳牛など哺乳類での感染報告が相次いで報告されている[29][30]。2024年、アメリカ9州で乳牛への鳥インフルエンザ感染を確認[31]。回復しない乳牛の殺処分も行われた[32]。感染牛の生からも非常に高濃度のH5N1ウィルスが検出された[33]。また牛を介したと考えられる人への鳥インフルエンザ感染が複数ケース確認された[34][35][36][37]。こういった事態をうけ、アメリカ疾病予防管理センターは州の公衆衛生当局に人に感染した場合の対応の準備をするように通知を出した[38]。さらに2024年、テキサス州9都市の廃水からもH5N1鳥インフルエンザ同定された[39]

今後、ヒトの間で感染(ヒトヒト感染)する能力を持つウイルスが生まれ、新型インフルエンザが発生する危険性が指摘されている。それが爆発的感染(パンデミック)を引き起こす可能性もあることから、鳥インフルエンザ感染の動向が注視されている[13][40]。2024年4月、世界保健機関(WHO)は、人間から人間に感染する能力を備えているとして、人間を含む他の種におけるH5N1型鳥インフルエンザ感染の拡大が拡大していることに重大な懸念を表明した。過去15カ月で889人の感染者のうち死亡者は52パーセントに達しているという[41]。「豚インフルエンザ」および「2009年新型インフルエンザの世界的流行」も参照
低病原性から高病原性への変異

高病原性鳥インフルエンザは通常家禽の病気であり、野生では発生しない。家禽間で発生した高病原性鳥インフルエンザが、野鳥を通して世界中に広まった[42]。高病原性鳥インフルエンザ(H5N1 型)が初めて確認されたのは、1959 年にスコットランドの農場の鶏の間である。H5N1 型が家禽から野鳥に感染し始めたのは 2005 年になってからであり、野鳥がそれをアメリカ大陸に持ち込むまでにはさらに 16 年かかり、養鶏場で再び感染が広がり始めた[43]

高病原性鳥インフルエンザの発生様式は、野鳥で循環し、野鳥と共存して通常害を及ぼさない低病原性鳥インフルエンザが、家禽農場に侵入して家禽の中で循環伝播を繰り返すうちに毒性の強い高病原性鳥インフルエンザに変異するという機序である。2003年以降に大流行したGs/GD系統のH5亜型高病原性鳥インフルエンザは、既に高病原性化したウィルスが家禽や家禽関連物品の移動、さらに野鳥への伝播などで拡散している[44]

家禽農場は病気が蔓延しやすい環境を作り出し新たな適応経路を提供する可能性がある。野鳥はウイルスを伝染させるが、農場はウイルスを増幅させることが懸念されている[42]国連の?インフルエンザと野?に関する科学タスクフォースなどによると、高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)は家禽産業で発生した[43]。同タスクフォースは世界中の家禽?産量は過去50年間で?幅に増加しており、工場型の?密度環境で家禽飼育が?われている場所では高病原性鳥インフルエンザのリスクが?くなる[45][46]。研究によると羽数の少ない群れは感染率が減少する[47]
畜産物からの感染

高病原性鳥インフルエンザのヒトへの感染例は少ない。日本の農林水産省は2004年3月9日、「鶏肉鶏卵を食べることによって、人に感染したという事例の報告はない」と公表した[48]。また、万一食品中にウイルスがあったとしても、食品を十分に加熱して食べれば感染の心配はないとし、「家きん肉は十分加熱して食べて下さい。未加熱または加熱不十分なままで食べることは、食中毒を予防する観点からもおすすめできません。」「家きん卵は、国内では、生で食べることを考えて生産されていますが、不安な方や体調の悪い方は、加熱(WHOの食中毒防止のための加熱条件:中心部70℃、瞬間)することをおすすめします。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:197 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef