鯨肉
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23%の内訳は男子9%、女子14%と女子が多く、当時の東京都立衛生研究所は「巨大な鯨に関する乙女心の感傷の表現であるかも知れない」と考察している[8]。1970年代まで大半の小・中学校で一般的だったが一時激減し、1987年の南極海での商業捕鯨中止などでさらに激減した。2017年の雑誌の記事に掲載された日本鯨類研究所の広報課の証言によると、1987年の商業捕鯨モラトリアムに日本は反対したが、アメリカから「反対するなら、アメリカの周辺の海でタラをとらせない」と圧力を掛けられ、異議申し立てを撤回した[9]

近年は急速冷凍の技術が発達したことにより、刺身や韓国風生肉料理ユッケとして供されることも多い。

1987年の商業捕鯨中止などで激減した鯨肉の学校給食が徐々に復活し、給食を実施している全国の公立小・中学校約2万9600校のうち、2009年度に一度でも鯨肉の給食を出した学校は、18%に当たる5355校になった。使われる鯨肉は南極海で捕れたクロミンククジラなどで、メニューは竜田揚げが目立ち、カツやケチャップなどでつくるオーロラソースあえなどがある。背景には、調査捕鯨で捕獲した在庫がだぶつき、消費拡大のため給食用に割安で提供されていることや、食文化の継承の為という意味があるとされる。[10]

2016年度の和歌山県の公立小学校では、30あるうち22の市町で鯨肉の献立の給食を実施した。1校あたり年間1回から5回程度で、メニューは主に竜田揚げであった。かつて捕鯨基地のあった山口県下関市の場合は、下関市農林水産振興部水産課によると、2016年度は年12回、月1回の割合で鯨肉の給食を実施、12回のうち半分は全市一斉で、残りの6回は各地域ごとの実施になった。献立の1番人気のメニューは竜田揚げであり、鯨カレー、鯨の炊き込みごはんなども提供。給食は学校保健給食課の管轄で、本来は水産課が関わるところではないが、学校給食で鯨肉を食べてもらいたいとの思いから、水産課で鯨肉購入などの支援をしている[9]

2019年7月の日本の商業捕鯨再開に際し、水産庁が設定した年間捕獲枠は、ミンククジラ171頭、ニタリクジラ187頭、イワシクジラ25頭となっており[11]、鯨体の大きさ・得られる肉の量から、当面日本で流通する鯨肉はニタリクジラ肉が中心となる。
鯨肉の流通
日本での流通
生産者から一般小売まで築地市場で鯨肉を商う様子。(2008年)石巻市木の屋石巻水産にあった、鯨大和煮の缶詰を模したタンク(2006年)このタンクは東日本大震災津波で流され失われた。

2020年時点の日本では、2000トンの鯨肉が生産された[12]密漁密輸された鯨肉の存在を主張する見解もあるが、1998年を最後に検挙事例はない[注釈 2]

調査捕鯨の副産物は、調査捕鯨の実施主体である財団法人日本鯨類研究所が卸元である。市販用と公益用の区分があり、一般流通に回る市販用が生産量の8割以上を占める。市販用については、従来は、調査捕鯨の実務を委託されている日本共同船舶株式会社を通じ、各都道府県の中央卸売市場での販売などが行われてきた。2006年からは、鯨肉市場開拓などを目的とした新設の合同会社「鯨食ラボ」も加わって、新たな販路が検討されている。もっとも市販用といっても完全に自由な流通に委ねられてはおらず、各卸売市場への配分は過去の消費実績などを基に水産庁や有識者による検討で決定され、その後も公的性格を有する産品として農林水産省総合食料局流通課による指導の下で取引されている。その際には「なるべく公平かつ廉価に配分されるよう努めるもの」とされている。後述するような部位ごとに価格決定されて、刺身用などの鮮肉のほか、ベーコンや大和煮缶詰カレーの具材などの加工原料として流通する。流通過程では遠洋漁業水産物一般と同様、ほとんどは冷凍状態で保存管理されるが、沿岸調査副産物の一部(100トン弱)は生鮮品としても流通している。

最終的にはスーパーマーケットなどの商店で販売されるほか、インターネットなどを通じた通信販売を行う小売業者も存在する。前出の鯨食ラボ社も、インターネット上で直営の通信販売事業を行っている。千葉県の房総半島の伝統食鯨のたれのように、地域の特産品となり、土産物として販売される例もある。

鯨肉の国内消費量は2010年代は毎年3000~5000トン前後である[13]。日本捕鯨協会が2018年1月にまとめた消費者1200人アンケート調査によると、鯨肉を食べた人のうち76%が「おいしかった」と回答。牛肉・豚肉・鶏肉以外で「食べてみたい肉」の1位(43.8%)を占めたものの、「売っているところを見かけない」という回答も64.7%と多かった[14]

小型捕鯨のうちツチクジラ以外の種類、及び岩手県静岡県和歌山県などで現在も行われているイルカ漁の産品は地元での消費が多い。生産量は両漁業をあわせてゴンドウクジラ類300トン強、イルカ類1000トン弱である。もっとも、時おり遠隔地まで流通する場合があり、伝統的に静岡からの流通がある山梨県のほか、東京都内のスーパーマーケットなどでも魚肉コーナーで販売されていることがある。イシイルカについては九州地方での利用が比較的多い。単に「鯨肉」と表示されてしまう場合もあるため、特にイルカ肉と認識されないで消費されることもあると思われる。ただし、これは現在ではJAS法上において不適切な表示にあたる。

鯨肉の小売価格は、かつてに比べると非常に高騰している。商業捕鯨再開後、肉質の向上と供給不足により当初期待されていた安価な食材としての鯨肉は実現しなかった[15]

なお、小型捕鯨業では、伝統的に捕鯨従事者への一種の現物支給として鯨肉分配がされる習慣があり、現在でも一部でそうした利用が継続している。周辺住民が解体場で骨に残った肉をはぎ取って安価で貰い受ける伝統的な消費形態も、少なくとも1990年代後半までは千葉県で続いていた。
外食産業等

各地の老舗をはじめ鯨料理の専門店が存在するほか、捕鯨文化がある漁師町では鯨料理が地域おこしとして提供されることもある(例:和歌山県の道の駅たいじ)。また居酒屋などがメニューの一つとして取り入れている例もある。


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