鯨肉
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2019年7月の日本の商業捕鯨再開に際し、水産庁が設定した年間捕獲枠は、ミンククジラ171頭、ニタリクジラ187頭、イワシクジラ25頭となっており[11]、鯨体の大きさ・得られる肉の量から、当面日本で流通する鯨肉はニタリクジラ肉が中心となる。
鯨肉の流通
日本での流通
生産者から一般小売まで築地市場で鯨肉を商う様子。(2008年)石巻市木の屋石巻水産にあった、鯨大和煮の缶詰を模したタンク(2006年)このタンクは東日本大震災津波で流され失われた。

2020年時点の日本では、2000トンの鯨肉が生産された[12]密漁密輸された鯨肉の存在を主張する見解もあるが、1998年を最後に検挙事例はない[注釈 2]

調査捕鯨の副産物は、調査捕鯨の実施主体である財団法人日本鯨類研究所が卸元である。市販用と公益用の区分があり、一般流通に回る市販用が生産量の8割以上を占める。市販用については、従来は、調査捕鯨の実務を委託されている日本共同船舶株式会社を通じ、各都道府県の中央卸売市場での販売などが行われてきた。2006年からは、鯨肉市場開拓などを目的とした新設の合同会社「鯨食ラボ」も加わって、新たな販路が検討されている。もっとも市販用といっても完全に自由な流通に委ねられてはおらず、各卸売市場への配分は過去の消費実績などを基に水産庁や有識者による検討で決定され、その後も公的性格を有する産品として農林水産省総合食料局流通課による指導の下で取引されている。その際には「なるべく公平かつ廉価に配分されるよう努めるもの」とされている。後述するような部位ごとに価格決定されて、刺身用などの鮮肉のほか、ベーコンや大和煮缶詰カレーの具材などの加工原料として流通する。流通過程では遠洋漁業水産物一般と同様、ほとんどは冷凍状態で保存管理されるが、沿岸調査副産物の一部(100トン弱)は生鮮品としても流通している。

最終的にはスーパーマーケットなどの商店で販売されるほか、インターネットなどを通じた通信販売を行う小売業者も存在する。前出の鯨食ラボ社も、インターネット上で直営の通信販売事業を行っている。千葉県の房総半島の伝統食鯨のたれのように、地域の特産品となり、土産物として販売される例もある。

鯨肉の国内消費量は2010年代は毎年3000~5000トン前後である[13]。日本捕鯨協会が2018年1月にまとめた消費者1200人アンケート調査によると、鯨肉を食べた人のうち76%が「おいしかった」と回答。牛肉・豚肉・鶏肉以外で「食べてみたい肉」の1位(43.8%)を占めたものの、「売っているところを見かけない」という回答も64.7%と多かった[14]

小型捕鯨のうちツチクジラ以外の種類、及び岩手県静岡県和歌山県などで現在も行われているイルカ漁の産品は地元での消費が多い。生産量は両漁業をあわせてゴンドウクジラ類300トン強、イルカ類1000トン弱である。もっとも、時おり遠隔地まで流通する場合があり、伝統的に静岡からの流通がある山梨県のほか、東京都内のスーパーマーケットなどでも魚肉コーナーで販売されていることがある。イシイルカについては九州地方での利用が比較的多い。単に「鯨肉」と表示されてしまう場合もあるため、特にイルカ肉と認識されないで消費されることもあると思われる。ただし、これは現在ではJAS法上において不適切な表示にあたる。

鯨肉の小売価格は、かつてに比べると非常に高騰している。商業捕鯨再開後、肉質の向上と供給不足により当初期待されていた安価な食材としての鯨肉は実現しなかった[15]

なお、小型捕鯨業では、伝統的に捕鯨従事者への一種の現物支給として鯨肉分配がされる習慣があり、現在でも一部でそうした利用が継続している。周辺住民が解体場で骨に残った肉をはぎ取って安価で貰い受ける伝統的な消費形態も、少なくとも1990年代後半までは千葉県で続いていた。
外食産業等

各地の老舗をはじめ鯨料理の専門店が存在するほか、捕鯨文化がある漁師町では鯨料理が地域おこしとして提供されることもある(例:和歌山県の道の駅たいじ)。また居酒屋などがメニューの一つとして取り入れている例もある。ただ、不況や高価格化により客足が遠のき、閉店に追い込まれる専門店も出ている[16]。商業捕鯨の禁止によって鯨肉の入手困難が深刻化し、特に味の良いナガスクジラの肉は冷凍在庫のみとなり価格が高騰した。このため1992年には全国のクジラ専門料理店の数は10店舗にまで減少した[17]

鯨を水揚げされる地域では学校給食として出されることがある[18]
供給過多との指摘

2006年上半期には、国内における鯨肉の供給過多(だぶつき状態)が各紙で報道されている[19]。ただし、上記の記事で倍増とされているのは、物流在庫などをまとめた「流通在庫」である点に注意が必要である。流通総量が増加しているのに伴い物流在庫も増えるので、単純な比較はできない[20]。日本捕鯨協会は、「倍増した」とされるのはピーク時の在庫量であるが、これは調査捕鯨規模の拡大から当然のことと反論している。そして、翌年には在庫量が前年並みに減少していることからすると、むしろ消費量自体は増えていると指摘する。さらに、在庫の比率や推移も、主力の調査捕鯨副産物は年に2回しか入荷しないという特殊性を考えれば自然であり、報道は誤解を招く内容であると批判している[21]捕鯨継続の是非と関連して争点となることがある。
日本以外での流通

現在でも近代的な捕鯨を継続しているノルウェーやアイスランドのほか、先住民生存捕鯨枠などによって捕鯨を認められている先住民らは、それぞれ鯨肉を消費している。インドネシアのレンバタ島では、捕鯨民と農耕民の物々交換による伝統的な流通が行われている[22]

韓国では、積極的な捕鯨は禁止する一方で、定置網などで混獲されたクジラや座礁鯨の鯨肉は、流通が許可されている。


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