魚類
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近年までの構造上痛みを感じないといわれたが、魚類の痛覚には諸説あり、ニジマスの痛覚実験で痛覚受容体が存在するとした論文も掲載されている為、魚に痛覚があることも大いに考えられる[1]
マグロのえら。体の後部から見ており、頭部は裏側にあたる

の抵抗を受けにくい流線型である種が多い。活発に泳ぎ回る種に多い。

体は頭部、胴部、尾部の3つに分けられる。

頭部に含まれるものは、眼から上あごの先端部までの部、えら蓋、頬部(眼から前鰓蓋骨まで)および下あごである。頭には長いヒゲ(英語版)やトゲ(英語版)を持つものもいる。鼻孔には様々な形や深さのものがあるが、多くの場合には、前鼻孔と後鼻孔とが皮下で連結したU字型の管になっており、鼻孔と口腔とは繋がらない。吻の前部にある前鼻孔から入った水は、そのまま後部にある後鼻孔から流出するようになっている。

胴部は頭部以降から肛門の位置までで、外見上は臀鰭の前までである。消化器官は全てここまでに含まれる。

尾部は肛門以降、尾びれまでである。背面の筋肉が胴部から尾部へと連続的に発達しているので、外見上は尾の区別がはっきりしない。つまり、胴部から尾部をまとめて運動に使用しているとも言える。尾部の比率は比較的高く、多くの種で3割以上、ウナギ目の魚などは7割以上が尾である。
えら(鰓)

水中の少ない溶存酸素を利用するために、えら(鰓)という器官を発達させている。魚類の属する脊索動物門の鰓の基本構造は、口から咽頭に吸い込んだ外界水を排出する鰓裂(さいれつ)というスリット、スリット間の鰓弓(さいきゅう)という支柱、鰓弓に生じた鰓弁(さいべん)というガス交換器官から成っている。硬骨魚類では、これらの基本構造のセットが頭部の後方にある1対の鰓蓋骨(さいがいこつ、いわゆるえらぶた)で覆われていて、弓上の骨に支えられた鰓弓が4対存在する。鰓弓からは一次鰓弁が何本も伸び、さらに一次鰓弁上には表面積を拡げるための二次鰓弁が多数存在して、ガス交換に用いられる表面積を著しく拡大している。鰓弁には血管が高密度に通っており、外界(海水、淡水)と直接ガス交換を行う。そのためえらは赤く見える。えらはガス交換の他にも、塩類細胞によるイオンの排出・取り込みや窒素排泄物であるアンモニアの排泄を行っている。鰓弓を挟んで鰓弁の反対側にはしばしば鰓耙(さいは)というくし状の突起が発達し、口から吸いこんだ水や堆積物の中から食物をより分けたり漉し分けて食道へと送る機能を持っている。
ひれ(鰭)魚のひれ(カクレクマノミ)小離鰭(finlet)。アジ科サバ科サンマ科などの魚類にみられる詳細は「鰭 (魚類)」を参照

ひれ(鰭)は体から突き出した薄膜状の構造である。基部には骨格や筋肉があり、動かせる。泳いだり、海底や地上を這ったり砂に潜ったりするのに使われる。

ひれは体につく位置により次のように分類される。

胸鰭(きょうき・むなびれ) Pectoral fins - 頭の後方、体の側面に位置する一対のひれ。両生類以降の前肢に変化したとされる。

背鰭(はいき・せびれ) Dorsal fin - 背側にあるひれ。種によって数が異なり、第一背鰭・第二背鰭などと区別する。

腹鰭(ふっき・はらびれ) Pelvic fins (Ventral fins) - 腹側の肛門より頭側にある一対のひれ。両生類以降の後肢に変化したとされる。

臀鰭(でんき・しりびれ) Anal fin - 腹側の肛門より尾側にあるひれ。

尾鰭(びき・おびれ) Caudal fin (Tail fin) - 体の最も後方にあるひれ。

脂鰭(しき・あぶらびれ) Adipose fin - サケなどに見られる、背びれの後方にある1 つの小さなひれ。

小離鰭(しょうりき・はなれびれ) Finlets - サバマグロなどの尾部に見られる、多数の小さなひれ。


頭鰭(とうき・あたまびれ) -イトマキエイ類の頭部にある1対の角のようなひれ。

胸びれと腹びれは左右1対あり、これらを対鰭(ついき)、それ以外を不対鰭(ふついき)と呼ぶ。また背びれの数は1基、2基、3基と数え、前から順に第1背鰭、第2背鰭、第3背鰭と呼ぶ。

ひれの形態は、軟骨魚類、肉鰭類、条鰭類で大きく異なる。

サメエイなど軟骨魚綱では、ひれは厚い皮膚で覆われ、中は輻射軟骨で支えられる。硬骨魚類のようにあまり自由に動かすことはできず、後退などの動作ができない。サメのものは鱶鰭(ふかひれ)と呼ばれ、高級食材として名高い。

シーラカンスハイギョなど肉鰭綱では、ひれの基部が筋肉で覆われる。一部の肉鰭類では、胸びれや腹びれが陸上を這う脚となり、四肢動物へと進化していったと考えられている。

条鰭綱ではひれは膜状の構造物であり、体の正中線、あるいはその左右に対になって張り出す。膜を支えるようにひれには多数の筋(鰭条)が入っていて、基部では骨と筋肉が接続しているのが普通である。鰭条には軟条(なんじょう)と棘条(きょくじょう)の2 種類があり、棘条には毒腺(刺毒装置 しどくそうち)を備えているものもある。

ひれが遊泳以外の目的に進化している場合もある。また進化の過程で、一部のひれが退化していることも多い。

トビウオの仲間は、体に対して非常に大きな胸びれを持ち、空中を滑空することができる。

ハゼウバウオの仲間では腹びれが吸盤に変化して、岩や海藻などにくっつくのに都合が良い。

コバンザメでは第一背鰭が吸盤に変化し、大型の魚にくっついて移動する習性を持っている。

アンコウの仲間は、背びれが釣竿のような形状に変化(エスカ・擬餌状体)し、先端はルアーになっている。

チョウチンアンコウの仲間はルアーの部分に発光器を備える。

ミノカサゴゴンズイなどは、棘条に毒腺を発達させて身を守っている。

ホウボウは腹びれが脚のようになっており、海底を這って歩くのに適している。

マンボウは尾びれと臀びれがつながって特殊な形態(舵鰭 かじびれ)をなしている。

遊泳力の強いマグロカジキなどは2基の背びれを持ち、前方にある第1背鰭は溝に折りたたむことができる。それぞれのひれは極限まで水の抵抗を減らすように設計され、高速遊泳に特化している。

うろこ(鱗)

うろこは1つ1つは小さな板や棘(とげ)のような形のもので、これが多数集まって体の表面を覆う。外部の衝撃から皮膚や筋肉、内臓を保護する役割を担う。種によって大きさや形は異なり、うろこを持たない種もいる。硬骨魚類のうろこには樹木の年輪に相当する模様が刻まれており、年齢を知るのに役立つ。

うろこは大きく4種類に分けられる。現存する硬骨魚類の多くは円鱗(えんりん)あるいは櫛鱗(しつりん)を持つ。ヒラメのように体の部分によって円鱗と櫛鱗を有する種類もいる。
楯鱗(じゅんりん、placoid scale)
軟骨魚類にのみ見られる。棘状のうろこで、真皮から伸びた髄の上をエナメル質、象牙質が覆う。棘は体の後方を向いているため、尾から頭に向かってなでるとざらざらする。いわゆるサメ肌である。
硬鱗(こうりん、ganoid scale)
あまり重なりあわずに体を覆っている平たいうろこ。骨質の外部をエナメル質が覆う構造になっている。チョウザメガーポリプテルスなどの原始的な硬骨魚類に見られる。
円鱗(えんりん、cycloid scale)
年輪のある小さな楕円状のうろこ。アジカツオコバンザメコイなど。
櫛鱗(しつりん、ctenoid scale)
円鱗に似ているが、一端に小棘を有することで区別される。櫛鱗は小棘の違いからさらに crenate、spinoid、ctenoid の3つに分けられる。スズキサバマダイなどに見られる。
ひょう(鰾)コイ科の Scardinius erythrophthalmus の浮き袋。前室(左)と後室に分かれ、ウェーバー器官と連続する詳細は「」を参照

鰾は主に条鰭類が持つ器官である。浮き袋とも呼ばれる。

魚類の体は海水より比重が大きく、何もしなければ沈降してしまう。そこで、簡単に浮力を得るために鰾を発達させている。鰾は伸縮性に富む風船のような器官で、ガスを溜めたり抜いたりして浮力調節を行う。

原始的な鰾は消化管から枝分かれしており、水面に口を出して空気を出し入れする開鰾(有気管鰾)である。しかし一部の種は消化管から分離した閉鰾(無気管鰾)を持ち、鰾の周囲にある奇網からガス腺と呼ばれる細胞を介してガスを取り込む。

鰾は四肢動物ハイギョ相同である。かつては鰾が肺に進化したと考えられていたが、現在では肺から鰾が進化したと考えられている。初期の硬骨魚類は、淡水生活の中で空気呼吸の必要から肺を発達させたが、水中生活へ適応した条鰭類では肺が鰾となった。そのため、硬骨魚類が肺を獲得する前に分岐したサメエイなどの軟骨魚類には鰾も肺もない。軟骨魚類では鰾の代わりに肝臓脂質を蓄積することで浮力を得ている。条鰭類が肺を鰓に変化させる前に分岐した肉鰭類は、鰾の代わりに肺を持つ。ただし例外的に、現生シーラカンスのラティメリアは脂肪で満たされた鰾を持つ。


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