魔物の証明
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アガサ・クリスティのミステリーなどにも頻出する。

3『黒の召喚者』・11『続・黒の召喚者』

くろのしょうかんしゃ、原題:: The Caller of the Black。
ぞく・くろのしょうかんしゃ、原題:: The Black Recalled。

前者は1967年8月に執筆され[2]、1971年に発表された。タイタス・クロウが初登場した作品であり、ラムレイがプロ作家として書いた最初期の作品の1つである[7]オーガスト・ダーレスが手掛けた1971年刊のラムレイ処女単行本の表題作になっている。続編である後者は1983年5月に執筆され、同年に世界ファンタジー大会の会報に発表された[2]

東雅夫は「邪悪な魔術師とクロウの妖術合戦譚」と解説している[8]。初期翻訳を手掛けた朝松健は、『続』での作家としての成長を高評価しており、よくある作品から、ラムレイ自身の創意にあふれた作品になったという旨の解説をしている[6]

タイタスは、長編『タイタス・クロウ・サーガ』の第1作ラストにて消息を絶つことになっており、『続』はその後日談となっている。CCD=クトゥルー眷属邪神群という名称も、サーガで登場するものである[注 1]。また邪神イブ=ツトゥルについては、本体は登場しない。
3あらすじ

暇を持て余していたチェンバーズとシモンズという2人の金持ちは、軽い気持ちでジェームズ・D・ゲドニーの悪魔教団に加入するが、予想以上の邪悪さから脱退したいと考えるようになる。ある日、シモンズは酒の席でゲドニーの悪口を漏らしてしまい、教団の幹部に聞かれる。ゲドニーはシモンズに脅しをかけ、3日後にシモンズはチェンバーズに恐怖の電話をかけた後に、駆けつけたチェンバーズの目の前で怪死を遂げる。チェンバーズはオカルティストのタイタス・クロウに救援を要請するも、やがて死んでしまう。

タイタスは、あえてゲドニーの交友関係に飛び込み、挑発と駆け引きを仕掛ける。タイタスの住むブロウン館に乗り込んだゲドニーは<暗黒のもの>を召喚してタイタスを攻撃するが、タイタスは流水で防ぎ術者のもとに送り返し、ゲドニーを倒す。
11あらすじ

数年後の1968年10月、ブロウン館が大嵐で倒壊し、タイタスとド・マリニーは行方不明となる。翌日、ゲドニーの残党の一人であるアーノルドはタイタスの友人と偽り、瓦礫の山を捜索する警察を手伝うふりをして、タイタスの書物を盗み去る。アーノルドはそれらの記録を調べ、教主のゲドニーを返り討ちにして殺したイブ-ツトゥルの魔術についての知識を得る。

8年後の1976年、アーノルドは同じ教団にいたギフォードとブロウン館の跡地で落ち合い、タイタスが死んだと判断して一安心する。その後、2人は相手を殺して組織を吸収合併しようと果し合いに持ち込む。アーノルドは、盗んだ知識を駆使し、黒の召喚術でギフォードに攻撃を加える。だが、ギフォードもまた黒の召喚術を極めており、肉体を<暗黒のもの>そのものへと変化させてアーノルドの術を無効化し、アーノルドを殺す。ギフォードが勝利の余韻にひたるもつかの間、跡地に残っていたタイタスの結界が作用し、ギフォードは打ち滅ぼされる。
3・11登場人物・用語

タイタス・クロウ - 主人公のオカルティスト。『続』には登場しない。

アーカムの知人 - ウィルマース教授の教え子。タイタスに、<暗黒のもの>にまつわる情報を提供する。

カボット・チェンバーズ - 有閑紳士。友人の怪死に恐怖し、タイタスに助けを求めた後、命を落とす。

シモンズ - 有閑紳士。酒に酔ってゲドニーを侮辱し、呪殺される。

ジェームズ・D・ゲドニー - CCD教団の教主・オカルティスト。邪神イブ-ツトゥルの血液を召喚して、人を殺す。

ジェフリー・アーノルド - 『続』に登場。タイタスの蔵書を盗む。ゲドニーの教団を引き継ぎ、地下に潜伏していた。

ベンジャミン・ギフォード - 『続』に登場。アメリカに渡って自分の教団を作った。

<黒きもの>/<暗黒のもの> - 邪神イブ-ツトゥルの血液と言われる物質。異界から召喚し、敵の体に雪のように降らせて、溺れさせ窒息させる。或る古代文字のカードを標的に付与すると、マーキング追跡して出現する。

ジャスティン・ジェフリー - 『黒の召喚者』の冒頭に詩が引用されている。

4『海賊の石』

かいぞくのいし、原題:: The Viking's Stone。1970年8月に書かれた[2]。タイタス・クロウが関与する幽霊譚[9]
4あらすじ

タイタスは、アンリから借りた稀覯書「英國海洋傳」の記述をもとに、海賊の墓の実地調査を行う。アラートンの森での調査に際して、タイタスは「海賊の石」に災厄が宿っていることを知る。タイタスはふと、考古学者ソールソンに石の存在を漏らす。

興味を抱いたソールソンは、アンリから本を借りて海賊の石について調べ、本に「スカルダボルグ」と記された地、すなわち現在のスカーボロへと赴く。ソールソンから手紙で「<血まみれ斧>ラグナールの石を見つけた」と報告を受け取ったタイタスは、事態の深刻に受け止め、ソールソンを説得するために、アンリを呼び出して共にスカーボロへと向かう。道中の列車内で、説明を聞いたアンリは状況を理解する。

ホテルでソールソンを見つけ、2人は「呪われるぞ」と説得を試みる。ソールソンは発掘してから奇妙な夢に苛まれており、渋々ながら説得に耳を貸す。石は既に郵送されて明日の朝にソールソンの自宅に到着するよていになっているため、3人は夜の列車で先回りしてロンドンへと戻ることにする。3人は仮眠していたが、悪夢を見て目を覚ます。窓の外では、列車と並行して幽霊船が疾走しており、斧を掴んだ骸骨がソールソンに殺意を漲らせていた。海賊の投擲した斧がソールソンの胸を貫き、幻影は消えて何事もなかったかのように列車は元の運行へと戻る。

ソールソンに外傷はなく、検視の結果は心臓発作と結論付けられた。またソールソンが石を輸送させていた業者のトラックは、交通事故を起こして大破炎上し、3人全員が死亡した。積んでいた荷物については報道では何も言われておらず、タイタスはいつか再びアラートンの森を訪れて海賊が墓を奪還したのかを確かめてみるつもりと述べる。
4登場人物・用語

タイタス・クロウ - オカルティスト。ウォームズリー博士の書物「記号暗号および古代碑文の注釈に関する注解」を参考にして、海賊の石に刻まれた古代文字を解読した。

アンリ‐ローラン・ド・マリニー - 語り手。怪奇作家。「英國海洋傳」をソールソンに貸す。

ベンジャミン・ソールソン - 考古学者。海賊と古代
ノルウェーについて、異端児ながら有数の碩学と評される。古物コレクターであり、タイタス曰く「悪名高きブラウン‐ファーレイの同類」。

ラグナール - <血まみれ斧>の悪名を馳せたヴァイキング。アラーストンの森に埋葬された。

ヒルドゥルスレイフ - 魔女。ラグナールの母。ラグナールの戦に助力していた。

エイステイン王 - ノルウェー王。ラグナールを打ち倒した。

「英國海洋傳」 - ジョン・ロフトソンの著作。原本はラテン語で書かれ、英訳された。古代ノルウェー王たちの英雄譚とイギリス海賊の冒険談を記している。アンリの1冊以外に現存するかもわからない稀覯書。

「海賊の石」 - 高さ8フィート、重量3.5トンの大石。魔女が我が子の墓を守るために置いた。ルーン文字が刻まれており、墓を侵す者に呪いがふりかかることを警告している。

5『ニトクリスの鏡』

ニトクリスのかがみ、原題:: The Mirror of Nitocris。

1968年6月に執筆された[2]。タイタスが登場せず、アンリが主人公・語り手となっている。

ニトクリスは、古代からの記録にはあるものの、実在が疑問視されている人物である。ラヴクラフトは彼女を題材にして『ファラオとともに幽閉されて』を創作しており、その影響を受けてロバート・ブロックは『暗黒のファラオの神殿』を書いており、続くラムレイの本作は先2作品のパスティーシュである。『ファラオとともに幽閉されて』時点ではクトゥルフ神話ではなかったが、ラムレイの本作によってニトクリスはクトゥルフ神話の人物になった。

東雅夫は「古代エジプトの魔女王ニトクリスにまつわる呪物ホラー」[8]と解説している。
5あらすじ

エジプトの女王ニトクリスは、呪いの鏡を用いて政敵を処刑していたという。やがて鏡は副葬に供される。

カイロの市場で、アブーという男が、あまりにも高価な品物を扱っていたうえ入手元を公開するのを頑として拒んだために、怪しまれて逮捕される。彼は留置所内で、官憲に「ニトクリスの呪いが降りかかる」とわめきちらす。探検家ブラウン-ファーレイはニトクリスと呪物について調べ上げ、さらにアブーを探し当てて薬物や現金を握らせて墓所を暴露させることに成功する。旅は難航するも、ついに探検家は墓所にたどり着き、アブーが盗掘し損ねた鏡を持ち帰る。帰宅後、彼は悪夢にうなされるようになり、錯乱した思考で、夜に鏡を布で覆わなければならないなど迷信と断じ、布を剥がして深夜0時を迎えようとする。そして突然失踪する。

ブラウン-ファーレイが所持していた「ニトクリスの鏡」と彼の日記が、競売にかけられ、アンリ-ローラン・ド・マリニーが落札する。アンリは日記を読み進め、鏡の危険性を察し始める。ふと気が付けば、深夜0時を迎えつつあり、鏡に目をやると、怪物が映っており、しかも鏡面からせり出しつつあった。怪物は、不定形の胴体に、2人の人物が混在したような顔を備えており、半々の顔は、ニトクリスの肖像画と、新聞に載っていたコレクターの顔写真にそっくりであった。

目撃したアンリは、咄嗟に抽斗から破魔の拳銃を取り出し、鏡を破壊する。破片はテムズ川に投棄し、青銅製の枠縁は高熱で溶かして埋める。恐怖を鎮めるために、睡眠薬を飲んで無理やり眠りにつく。
5登場人物・用語

エティエンヌ-ローラン・ド・マリニー - アメリカ
ニューオリンズの高名なオカルティスト。アンリの亡父。

アンリ-ローラン・ド・マリニー - 主人公。アメリカで生まれ、10代のころに英国に移住してきた。呪物コレクター。

ネフレン-カ - エジプト史から記録を消された、暗黒のファラオ。ニトクリス以前の、鏡の所有者。

ニトクリス - エジプト第6王朝の女性ファラオ。


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