魔人ドラキュラ
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その折、ブロードウェイ版舞台でドラキュラを演じたハンガリー出身の俳優ベラ・ルゴシが、別の舞台に出演するためにロサンゼルスを訪れていた[2]。ルゴシは俳優として長いキャリアを持っていたが、ハンガリー訛りが強く英語下手のため、アメリカでは大役に恵まれずにいた。ユニバーサルは最終的に週給500ドルを提示し、7週間3,500ドルの契約でルゴシを起用した[2][3]

制作にあたってストーリー展開やドラキュラ像はほぼ舞台版が踏襲された。イギリスに渡航する際の嵐のシーンは、1925年公開のサイレント映画『The Storm Breaker』のシーンを流用している。流用するに際して、トーキー映画用の毎秒24フレームの撮影速度で編集し、ドラキュラとレンフィールドのシーンを新たに加えている[2]。また、映画の効果を高めるために長時間の無音シーンと文字のクローズアップを用いるなど、サイレント映画の手法を一部で採用している。ジェームズ・ベラーディネリは俳優の演技について、サイレント映画のものだと指摘している[4]

ユニバーサル・スタジオ・ジャパン内にあるハリウッド・エリアユニバーサル・モンスター・ライブ・ロックンロール・ショーの建物内には、ベラ・ルゴシが実際に着ていた[Dracula]のコスチュームと、杖、帽子、手袋が飾られている他、ヘレン・チャンドラーが着用した[ミナ・セワード]の衣装が展示されています。

評価ベラ・ルゴシ

完成した本作はスローなテンポで荘厳なゴシックホラーの世界を映像で再現、ロキシー劇場(英語版)では公開48時間で5万枚のチケットを売り上げ、ユニバーサル製作の1931年の映画の中で最高額の70万ドルを売り上げた[3][5]。本作の大ヒットを受けてユニヴァーサルは、同年中に『フランケンシュタイン』を製作、本作以上の大ヒットと高評価を得て更に多くのホラー映画(ユニバーサル・モンスターズ)を量産した。

ニューヨーク・タイムズのモルダント・ホール(英語版)は、トッド・ブラウニングの創造性とヘレン・チャンドラーの演技を称賛し、「多くのミステリー映画の中で最高の作品」と批評した[6]。The Film Daily(英語版)は「素晴らしいメロドラマ」と批評し、ベラ・ルゴシの演技を「映画の中で最もユニークで強力な役」と称賛した[7]

当時49歳であったルゴシはドラキュラ俳優として絶大な名声を得て、怪奇の大スターとなった。原作でのドラキュラは冒頭のトランシルヴァニアのシーンでは人前に現れるが、イギリスに渡ってからはほとんど影のような存在となる。しかし、本作でルゴシの演じたドラキュラは、イギリスに渡って後も夜会服を身に纏い、全編に渡って風格と妖気を見せ付け、貴族的な二枚目であるドラキュラ像を作り上げた。またルゴシのハンガリー訛りはドラキュラの代名詞となった。
後継作品

本作の続編的作品として、1936年公開の『女ドラキュラ』(原題:Dracula's Daughter)、1943年公開の『夜の悪魔』(原題:Son of Dracula)があり、これらを合わせてユニバーサル映画のドラキュラ三部作とする場合がある。『女ドラキュラ』は本作の直後から始まるストーリーを描いており、エドワード・ヴァン・スローン演じるヘルシング教授も引き続き登場する直接の続編である。一方、『夜の悪魔』では舞台をアメリカに移している。その後、ユニバーサルホラーはフランケンシュタイン・モンスターや狼男、ドラキュラらが同時に登場する怪物エンターテインメント的路線となる。ユニヴァーサルのドラキュラ作品は以下の通り。

魔人ドラキュラ(1931年 本作)

魔人ドラキュラ スペイン語版[8](1931年 ドラキュラ役:カルロス・ヴィリャリアス)

女ドラキュラ1936年

夜の悪魔1943年 ドラキュラ役:ロン・チェイニー・ジュニア

フランケンシュタインの館1944年 ドラキュラ役:ジョン・キャラダイン

ドラキュラとせむし女1945年 ドラキュラ役:ジョン・キャラダイン)

凸凹フランケンシュタインの巻1948年 ドラキュラ役:ベラ・ルゴシ

リメイク

ユニバーサル・ピクチャーズは79年にフランク・ランジェラ主演の『ドラキュラ』として今作をリメイクしている。また、リメイクではないが、ユニバーサルは、2004年の『ヴァン・ヘルシング』と、2014年の『ドラキュラZERO』で、ドラキュラを登場させている。
脚注^ Michael Brunas, John Brunas & Tom Weaver, Universal Horrors: The Studios Classic Films, 1931-46, McFarland, 1990 p11
^ a b c d DVD Documentary The Road to Dracula (1999) and audio commentary by David J. Skal, Dracula: The Legacy Collection (2004), Universal Home Entertainment catalog # 24455
^ a b Vieira, Mark A. (1999). Sin in Soft Focus: Pre-Code Hollywood. New York: Harry N. Abrams, Inc. p. 42. .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 0-8109-4475-8 
^Review (2000) by James Berardinelli at ReelViews.net
^ Vieira, Mark A. (2003). Hollywood Horror: From Gothic to Cosmic. New York: Harry N. Abrams, Inc.. p. 35. ISBN 0-8109-4535-5 
^ Hall, Mordaunt (1931年2月13日). “The Screen; Bram Stoker's Human Vampire”. The New York Times (New York: The New York Times Company). https://www.nytimes.com/movie/review?res=950DE7D61F3AEE32A25750C1A9649C946094D6CF 2014年12月7日閲覧。 
^ “Dracula”. Film Daily (New York: Wid's Films and Film Folk, Inc.): 11. (February 15, 1931). 
^ 本作の吹き替え映画ではなく、本作と同じ脚本で本作撮影後のセットをその日のうちに再使用しているが、役者や撮影スタッフが異なる作品。
(『ハリウッド・ゴシック』デイヴィッド・J・スカル 著、仁賀克雄 訳、国書刊行会、1997年、ISBN 978-4-336-03924-8、第6章「スペイン語版『魔人ドラキュラ』」。)

外部リンク.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}ウィキメディア・コモンズには、魔人ドラキュラに関連するカテゴリがあります。


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