魏書
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本紀冒頭に置かれる「序紀」に、北魏朝創建以前の拓跋部の記事を記している点(古田武彦は、この書法が日本書紀に影響を与えたとしている)

北斉において編纂されたため、東魏北斉を正統な後継者としている点

正統王朝を曹魏 - 西晋から北魏に直接繋いでおり、南朝はもちろん一時的に華北を統一した前秦の正統性も認めていない。むしろ、匈奴の漢劉淵後趙石勒は、西晋の天下を乱した元凶として槍玉に挙げられている[1]

劉裕の漢王朝の末裔とする主張を認めない。国号「宋」も認めずに「夷楚」と蔑称で呼ぶ点。[2]

南朝の人物は愚か者ばかりであると口を極めて罵倒しており、列伝第八十五の末尾の史評では「(夷楚たちは)窮凶極迷にして天下の笑いと為る。其れは夷楚の常性か?」と人種差別的な主張まで行っている。

列伝には、五胡の諸国や、南朝の伝も立てる点(東晋以下南朝諸王朝の正統性を認めないため「列伝」での扱いとなる)

仏教・道教関連の記事を収める釈老志を立てている点

などを挙げることができる。

ただ、魏書は編纂当時より、敵国を著しくけなしていることに定評がある。

西魏の三帝の本紀を立てない。

南朝を「田はやせている。島夷が着飾っているようなものだ。中原の人々はみんな江東の連中のことを「貉子」(タヌキ)といっているが、まあ狐や狸の類には相違ない」とけなしている。

南朝の君主の劉裕は劉氏の成りすましであり、「本来の姓は「項」で、どこの出身かも分からない、劉氏系図にも彼の名はない」[3]と貶めている。

などなど、敵国には罵声の限りを浴びせている。作者の私怨を晴らすために公正を欠いた記述がなされているという非難を浴びており、「穢史」(汚れた歴史)という呼ばれ方もされている。

また、西魏北周を正統とする魏澹撰の『魏書』(92巻)や、の張大素撰の『後魏書』(100巻)も存在したが、散佚しており今日には伝わらない。また、西魏単独の史書としては時代が下っての謝啓昆撰の『西魏書』(24巻)がある。
現存の状態について

魏晋南北朝時代の正史は三国志晋書以外は欠落部分が往々にしてあり、宋書などのように北宋時代に北史南史や他の野史を元に復元されたものが多いが、魏書もそうである。現存する魏収の魏書も、四庫全書総目提要によれば北宋代に校訂されたときに29編の散佚が発見され、『北史』によって欠を補ったという記録がある。テキストにも補足部分が明記されている。[4]
版本

宋・蜀大字本(
百衲本

中華書局評点本(1974年

内容
本紀
帝紀第一
序紀 成帝(拓跋毛)・節帝(拓跋貸)・荘帝(拓跋観)・明帝(拓跋楼)・安帝(拓跋越)・宣帝(拓跋推寅)・景帝(拓跋利)・元帝(拓跋俟)・和帝(拓跋肆)・定帝(拓跋機)・僖帝(拓跋蓋)・威帝(拓跋?)・献帝(拓跋鄰)・聖武帝(拓跋詰汾)・始祖神元帝(拓跋力微)・文帝(拓跋沙漠汗)・章帝(拓跋悉鹿)・平帝(拓跋綽)・思帝(拓跋弗)・昭帝(拓跋禄官)・桓帝(拓跋猗?)・文平帝(拓跋普根)・穆帝(拓跋猗盧)・太祖平文帝(拓跋鬱律)・恵帝(拓跋賀?)・煬帝(拓跋?那)・烈帝(拓跋翳槐)・高祖昭成帝(拓跋什翼?

帝紀第二 太祖道武帝

帝紀第三 太宗明元帝

帝紀第四上 世祖太武帝

帝紀第四下 世祖太武帝・恭宗景穆帝

帝紀第五 高宗文成帝

帝紀第六 顕祖献文帝

帝紀第七上 高祖孝文帝

帝紀第七下 高祖孝文帝

帝紀第八 世宗宣武帝

帝紀第九 粛宗孝明帝

帝紀第十 敬宗孝荘帝

帝紀第十一 廃帝前廃帝後廃帝出帝

帝紀第十二 孝静帝

列伝
列伝第一 皇后
神元皇后竇氏・文帝皇后封氏・桓帝皇后祁氏・平文皇后王氏・昭成皇后慕容氏・献明皇后賀氏道武皇后慕容氏道武宣穆皇后劉氏明元昭哀皇后姚氏明元密皇后杜氏太武皇后赫連氏太武敬哀皇后賀氏・景穆恭皇后郁久閭氏・文成文明皇后馮氏文成元皇后李氏献文思皇后李氏孝文貞皇后林氏孝文廃皇后馮氏孝文幽皇后馮氏孝文昭皇后高氏宣武順皇后于氏宣武皇后高氏宣武霊皇后胡氏孝明皇后胡氏孝静皇后高氏

列伝第二 神元平文諸帝子孫 上谷公?羅(襄城王題)・建徳公嬰文・真定侯陸(拓跋軌)・武陵侯因・長楽王寿楽・望都公頽・曲陽侯素延順陽公郁宜都王目辰穆帝長子六脩・吉陽男比干・江夏公呂・高涼王孤(元那・華山王鷙元萇元子華元子思上党王天穆)・西河公敦・司徒石・武衛将軍謂(東陽王丕)・淮陵侯大頭・河間公斉扶風公処真・文安公泥

列伝第三 昭成子孫 拓跋寔君秦明王翰常山王遵陳留王虔?陵王順遼西公意烈窟咄

列伝第四 道武七王 清河王紹陽平王熙河南王曜河間王脩長楽王処文広平王連京兆王黎

列伝第五 明元六王 楽平王丕安定王弥楽安王範永昌王健建寧王崇新興王俊

列伝第六 太武五王 晋王伏羅東平王翰臨淮王譚広陽王建南安王余

列伝第七上 景穆十二王上 陽平王新成京兆王子推済陰王小新成汝陰王天賜楽浪王万寿広平王洛侯

列伝第七中 景穆十二王中 任城王雲任城王澄

列伝第七下 景穆十二王下 南安王中山王英)・城陽王長寿章武王太洛楽陵王胡児安定王休

列伝第八 文成五王 安楽王長楽広川王略斉郡王簡河間王若安豊王猛

列伝第九上 献文六王上 咸陽王禧趙郡王幹広陵王羽高陽王雍北海王詳北海王

列伝第九下 献文六王下 彭城王?

列伝第十 孝文五王 廃太子恂京兆王愉清河王懌広平王懐汝南王悦

列伝第十一 衛操(衛雄・箕澹)・莫含(莫題)・劉庫仁劉眷劉顕・劉奴真)

列伝第十二 燕鳳許謙張袞張白沢崔玄伯崔寛崔衡崔模崔道固崔僧淵ケ淵ケ羨


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