合計特殊出生率
厚生労働省と世界保健機関は、合計特殊出生率を算出する定義として、15?49歳の女性を母集団としている。50歳過ぎても閉経していない女性の場合は、50歳以上で出産したケースも非常に少数の例外としては存在する[7][8][10]。このように15歳未満と50歳以上の出産も存在自体はするが、統計の精度に影響を与えるほどいないことから、15歳未満と50歳以上の女性の人口は合計特殊出生率を算出するための統計の母集団には含んでいない。出産・出生統計の便宜上、15歳未満の出産は15?19歳に含み、50歳以上の出産は45?49歳に含んで表記する[3][4]。 厚生労働省の出産統計によると、1920年代?1940年代前半には、30歳以上の出産は年間80万人以上、35歳以上の出産は年間40万人以上、40歳以上の出産も年間10万人以上、出生数が260万人台で史上最も多かった1946年?1949年には、30歳以上の出産は100万人以上、35歳以上の出産は年間50万人以上、40歳以上の出産も年間10万人以上、出産総数に対する高齢出産の比率は20%前後であった[7][8]。なぜなら、20世紀前半までは、感染症や生活習慣病の予防法も治療法も実現される以前であり、妊産婦死亡率、周産期死亡率[11]、新生児死亡率[12]、乳児死亡率[13]、乳幼児死亡率、成人死亡率
高齢出産統計
戦後
1940年代後半の戦後の混乱期は、戦争中に軍隊に入っていた多くの青年層男性が家庭に戻って結婚したことにあり、日本の歴史上最大の出産数を記録し、この時代にも40歳以上の出産も年間10万人以上あり、出産総数に対する高齢出産の比率は20%前後であった[7][8]が、戦後の混乱期が過ぎると出産数は減少し1961年には史上初の合計特殊出生率が2.00人未満を記録し、感染症の予防法や治療法が実現され、妊産婦死亡率、周産期死亡率、新生児死亡率、乳児死亡率、乳幼児死亡率、成人死亡率は著しく低下し、合計特殊出生率は2人台前半から、2.00前後、1人台後半へと漸減し、少産少死の人口動態に変化した[15]。20世紀後半の1980年代までは女性の平均初婚年齢及び第1子平均出産年齢が20代半ばだったので[16]、出生率の低下の結果、高齢出産は著しく減少し、1960年?1995年の国勢調査の期間は、出産総数に対する高齢出産の比率は10%未満だった[7][8]。とりわけ人口の多い団塊の世代の女性の出産適齢期とも重なった1960年代後半から1980年代前半にかけての期間では、高齢出産の比率は5%未満で最も少なかった。また、団塊の世代自体も20代半ばで結婚して20代のうちに子供を産み終えるという傾向が強かったため、高齢出産をした者は少なく、40歳以上で子供を産んだ者はほとんどいなかった。1995年以降は合計特殊出生率は1人台前半に低下した状態が継続しているが、女性の晩婚化が進行したことの影響で、高齢出産は増加傾向になり、出産総数に対する35歳以上の出産比率は2000年は約12%、2008年は約21%、2015年は約28%に増加しているが、実数としては、20世紀前半までと比較すると少ない[7][8]。しかし、1995年以降は晩婚化の進行に伴って35歳以上での初産(第1子出産)も増加しており、早婚多産傾向であった20世紀前半までとは事情が異なる面もある。 高齢出産の中でもおよそ50歳以降の出産を、特に「超高齢出産」と呼ぶこともある。この年齢になると大部分の女性は排卵が終了して、自然妊娠が出来なくなっていることが多いが、非常に少数の例外として自然妊娠して出産する事例はあり、過去に自分の卵子を凍結しておいたり他の人の卵子を使うことによって妊娠して出産する事例もある。 2008年と2016年には、インドの不妊治療院の発表で72歳の年齢の女性が出産したことが、インド国内のみならず世界各国のニュースとして報道された。いずれも体外受精によるものであった。70代での超高齢出産は世界的に見ても極めて少ない事例である[17]。 妊娠中に起こる産科合併症のほとんどが年齢依存性に上昇し、高齢妊娠だと妊娠初期の流産率が上昇する[18]。これには加齢による卵巣機能や子宮機能の低下とダウン症候群を始めとした染色体異常の頻度が増すことが関与する[18]。また、妊娠糖尿病・妊娠高血圧症候群・前期破水・切迫早産・前置胎盤・常置胎盤早期剥離や胎内死亡といった産科合併症も年齢依存性に発症頻度が上昇する[18]。さらに、高齢では慢性高血圧症や2型糖尿病、肥満などの内科合併症を持つ女性の頻度も増加し、妊娠中の内科合併症の悪化や妊娠高血圧症候群などの産科合併症が高率に出現する[18]。このように高齢妊娠では母体の罹病率の上昇のみならず胎児の罹病率も上昇させ、双方の健康障害が危惧される[18]。 高齢分娩のリスクはその妊産婦死亡の高さである。2004年の米国の報告[19]によると、妊産婦死亡は10万分娩につき8.6であったが、35-39歳で2.5倍、40歳以上で5.3倍と上昇していた。日本での妊産婦死亡については、40歳を過ぎると20?24歳の妊婦の実に20倍以上にまで高まるとの報告がある[20]。また、高齢分娩の場合、母体が危険なだけではなく、流産・早産する危険性が増加する[21]。危険因子は、遷延分娩・分娩停止、分娩時出血量の増加、産道損傷、帝王切開率の上昇などが挙げられる。 初産、すなわち第一子出産が高齢出産である場合は、母体の健康が損なわれる危険性や、流産・早産の可能性が増加する。経産婦が高齢出産を行う場合は、非経産婦の場合と比べて母体の健康に対するリスクは相対的に低くなる。 2013年の日本での統計では、自然死産率は出産千対で「20歳?24歳」が9.6、「25歳?29歳」が8.1と最低で、「30歳?34歳」が9.3、「35歳?39歳」が12.8、「40歳?44歳」が21.5、「45歳?49歳」が35.2となり、母体を考えると「25歳?29歳」が最も死産率が低く、35歳の高齢出産時には1.5倍に、40代では2倍以上に上昇する[22]。 高齢出産では、遺伝子疾患の発生率は上昇し、特に新生児のダウン症の発症率が増加する[23][24]。母親の出産年齢が高いほど発生頻度は増加し、25歳未満で1/2000、35歳で1/300、40歳で1/100となる[23][24][25]。40歳で単胎妊娠の場合,児がダウン症候群となるリスクはおよそ1/100であり、20歳でのダウン症の発症リスク(1/1700)に比べて著しく高い[18]。
超高齢出産
高齢出産のリスク
高齢妊娠のリスク
高齢分娩のリスク
高齢出産のリスク
脚注^ “「子供が欲しい気持ちに抗えなかった」53歳で超高齢出産坂上みきの今
^ a b c ⇒「分娩時年齢高齢化 現状と問題点」日本産婦人科学会2012
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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