妊娠中に起こる産科合併症のほとんどが年齢依存性に上昇し、高齢妊娠だと妊娠初期の流産率が上昇する[18]。これには加齢による卵巣機能や子宮機能の低下とダウン症候群を始めとした染色体異常の頻度が増すことが関与する[18]。また、妊娠糖尿病・妊娠高血圧症候群・前期破水・切迫早産・前置胎盤・常置胎盤早期剥離や胎内死亡といった産科合併症も年齢依存性に発症頻度が上昇する[18]。さらに、高齢では慢性高血圧症や2型糖尿病、肥満などの内科合併症を持つ女性の頻度も増加し、妊娠中の内科合併症の悪化や妊娠高血圧症候群などの産科合併症が高率に出現する[18]。このように高齢妊娠では母体の罹病率の上昇のみならず胎児の罹病率も上昇させ、双方の健康障害が危惧される[18]。 高齢分娩のリスクはその妊産婦死亡の高さである。2004年の米国の報告[19]によると、妊産婦死亡は10万分娩につき8.6であったが、35-39歳で2.5倍、40歳以上で5.3倍と上昇していた。日本での妊産婦死亡については、40歳を過ぎると20?24歳の妊婦の実に20倍以上にまで高まるとの報告がある[20]。また、高齢分娩の場合、母体が危険なだけではなく、流産・早産する危険性が増加する[21]。危険因子は、遷延分娩・分娩停止、分娩時出血量の増加、産道損傷、帝王切開率の上昇などが挙げられる。 初産、すなわち第一子出産が高齢出産である場合は、母体の健康が損なわれる危険性や、流産・早産の可能性が増加する。経産婦が高齢出産を行う場合は、非経産婦の場合と比べて母体の健康に対するリスクは相対的に低くなる。 2013年の日本での統計では、自然死産率は出産千対で「20歳?24歳」が9.6、「25歳?29歳」が8.1と最低で、「30歳?34歳」が9.3、「35歳?39歳」が12.8、「40歳?44歳」が21.5、「45歳?49歳」が35.2となり、母体を考えると「25歳?29歳」が最も死産率が低く、35歳の高齢出産時には1.5倍に、40代では2倍以上に上昇する[22]。 高齢出産では、遺伝子疾患の発生率は上昇し、特に新生児のダウン症の発症率が増加する[23][24]。母親の出産年齢が高いほど発生頻度は増加し、25歳未満で1/2000、35歳で1/300、40歳で1/100となる[23][24][25]。40歳で単胎妊娠の場合,児がダウン症候群となるリスクはおよそ1/100であり、20歳でのダウン症の発症リスク(1/1700)に比べて著しく高い[18]。
高齢分娩のリスク
高齢出産のリスク
脚注^ “「子供が欲しい気持ちに抗えなかった」53歳で超高齢出産坂上みきの今
^ a b c ⇒「分娩時年齢高齢化 現状と問題点」日本産婦人科学会2012
^ a b c d e f “【医師に聞く】「高齢出産」を難しくしているモノの正体とは?(Medical DOC)
^ a b https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/07/dl/s0723-17b_0013.pdf