高揚力装置
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やがて空戦時の使用を前提に、全開にまで至らない中間的なポジションを予めとっておく空戦フラップが開発され多くの機体で用いられた。しかし、旋回に最適なフラップ角度は速度と旋回にかかるGによって逐次変わるものであり、これら固定空戦フラップでは開度の過剰または不足を招いていた。フラップが過剰に開くことは速度を必要以上に失うことに繋がるうえ、フラップ開度が不足な場合には旋回に必要な揚力を賄えずに失速へと至ってしまう。理想の空戦フラップとは、パイロットの手をわずらわせること無く、開度を連続的に制御できるもの、ということになる。

そこで、空戦フラップの動作を自動化した、自動空戦フラップが開発された。構造そのものはファウラーフラップと同じだが、速度を測るためのピトー管からくる動圧と、Gを計るために水銀を入れた容器とを組み合わせることにより、旋回時に必要なフラップの自動稼働を可能とした。太平洋戦争時の日本海軍機の紫電改烈風に搭載された。

現代のジェット戦闘機では、操縦装置のコンピュータが常時速度や迎え角などを計算しては必要性に応じて必要量のフラップの出し入れを自動で行う機能を持つことが普通となっており、そのコンセプトとしては空戦フラップと共通するものであるが、空戦フラップとあえて呼称する事はなくなっている。
ジェットフラップ

ジェットエンジンの推力方向を下に傾けることにより上向きの力を発生させるもの。
フラップの操作速度

高速でフラップを展開すると、フラップ自体の破損のほか、主翼付け根部分に過大な応力を生じ危険であるため速度上限(フラップ操作速度)が設けられる。
フラッペロン詳細は「フラッペロン」を参照

フラップとエルロンを兼ねたもの。アメリカ海軍機などではドループエルロンとも呼称する。

フラップとして使用しない水平飛行中は左右のフラッペロンは上下逆方向に動作してエルロンとして働き、離着陸時にフラップとして使用する場合は左右が同調して下向きの角度に動作してフラップとして働く。フラップ動作をしている場合はエルロンとしての効果を発揮できないが、戦闘機であれば昇降舵が左右差動させられるテイルロンであることが多く、また大型民間旅客機は内翼部に独立したエルロンを別個に持っていることが多いため、エルロンとしての効果はそれらが受け持つ。

F-16以降に開発された戦闘機ではフラッペロンが使用されていることが多い。F/A-18シリーズやハリアー IIなどは、外翼部がフラッペロン・内翼部が単純フラップやスロッテッドフラップとなっていてより高い揚力を得られるようになっている。B777A380など最近の旅客機のエルロンも高揚力を得るためにフラッペロンが採用されている。コンコルドのようにカナードを持たない無尾翼デルタ翼機の場合は後縁の動翼をフラップとして使用することができないため、エルロンエレベーターを兼ねたエレボンと呼ばれフラッペロンとは呼べない。
ブロウン・フラップ詳細は「en:Blown flap」を参照

ブロウンフラップとは離着陸時の低速時の航空機の揚力を増やす目的でイギリスで考案された高揚力装置である。その行程は境界層制御とも呼ばれる。1960年代には一般的だったが複雑な整備が必要なので廃れた。現在は類似の構造が軍用機等で散見されるが普及はしていない。更に、初期の概念が現代的な技術で乱流制御翼としてより効果的な高揚力装置として使用される。

従来のブロウンフラップでは少量のタービンエンジンの圧縮空気を抽出したブリードエアを配管で主翼の後部へ送った。特定の角度のフラップの隙間から高エネルギーの空気を境界層に噴射することで境界層剥離を遅らせ、揚力を増やす。
境界層制御装置詳細は「境界層制御」を参照

進行方向に対して翼の角度が大きすぎるとき、翼上面の気流(空気の流れ)は、空気の粘性の影響で運動エネルギーを失い翼に沿いきれずに剥がれてしまい(境界層剥離)、翼上面の圧力が下がらず揚力が発生できなくなってしまう。これを解決するため、前縁フラップ・後縁フラップ・スラットなどの機械的なメカニズムを使用することで、翼上面の気流の剥離を防いでいるが、それを使用した際の最大揚力係数は3.36程度が限界であり、飛行機の高速化に伴なって翼面荷重や離着陸速度が大きくなり滑走距離も長くなっていった。そこで境界層に運動エネルギーを人工的に与えることにより気流の剥離を防ぐとともに最大揚力係数を飛躍的に高める装置が境界層制御(Boundary Layer Control BLC)装置である。前述のスロッテッドフラップやファウラーフラップも境界層制御をしている。
種類

種類として以下のものがある。
層流制御 (Laminar Flow Control) 翼

主翼上面に設置された吸い込み穴(スロット)から、翼上面の離れた運動エネルギーを失った気流を吸込む吸い込み翼、翼上面の離れたところを流れる気流に運動エネルギーを失っていない気流を翼上面に流す吸出し翼があり、アメリカ航空宇宙局X-21A実験機により実現させたが経済的な理由から実用化はされていない。
インターナリーブロウンフラップ (Internally Blown Flap)

エンジンで圧縮した空気を翼上面に吹き出して、吹き出した空気の速度で層流を作り出し境界層に運動エネルギーを与える方法。F-104F-4バッカニアなどのような小型機では主エンジンの圧縮機から抽気するのが一般的であるが、US-1US-2などのように専用エンジンによる圧縮機を設けるものもある。
エクスターナルーブロウンフラップ (Extarnally Blown Flap)

エンジンからの排気ガスを多重スロッテッドフラップにあて、フラップの隙間から排気の一部を翼上面に流す方法。原理はスロッテッドフラップと同じ。YC-15で用いられ、これを元にしたものがC-17で実用化されている。フラップにジェット排気を直接当てるのでフラップそのものやそれを支持する部分には高い強度と耐熱性が求められる。フラップは出している間だけ排気の中にあり、収容すると排気は通常と変わらない形で噴射されるので、巡航中は排気に対してこれといった影響を与えないという利点がある反面、フラップを出している時はジェット排気の中なので耐衝撃性も必要とされる。
アッパーサーフェスブローイング (Upper Surface Blowing)詳細は「アッパーサーフェスブローイング」を参照


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