高分子
[Wikipedia|▼Menu]
一方ラクトン環状エーテルなどのや環状化合物を単量体とする開環重合では、開裂が起こる場所によって頭-尾結合と頭-頭結合の起こる割合も変わる。
立体規則性

プロピレンなどの重合において、重合することによってできた四級炭素不斉炭素原子であり、重合法によってはこの不斉炭素の絶対配置に規則性が現れる。これを立体規則性(タクティシティー、tacticity)という。すべての不斉炭素が同じ絶対配置を持つような構造をイソタクチック(アイソタクチック)といい、絶対配置が交互に並ぶものをシンジオタクチックという。また、全くランダムになった構造をアタクチックという。立体規則性はNMRを用いることで評価ができる。

チーグラー・ナッタ触媒によって合成されたポリプロピレンはイソタクチックであるが、通常のラジカル重合で合成したポリプロピレンはアタクチック構造である。
幾何異性体

ジエン系モノマーの重合では、1,2-構造、シス 1,4-構造、トランス 1,4-構造といった異性体構造が生じる。
共重合体の構造

共重合体には、ランダム共重合体(―ABBABBBAAABA―)、交互共重合体(―ABABABABABAB―)、周期的共重合体(―AAABBAAABBAAA―)、ブロック共重合体(―AAAAAABBBBBB―)、の4種類の構造がある。また、ブロック共重合体の一種にグラフト共重合体と呼ばれるものがあり、これは幹となる高分子鎖に、異種の枝高分子鎖が結合した枝分かれ構造をしている。

多数の枝からなる樹木状(多分岐高分子)のデンドリマー、ハイパーブランチポリマー、ロタキサン、高分子カテナン水素結合静電気力配位結合のような弱い結合力で結びつけた自己集積型高分子、などの新構造高分子の合成も近年注目されている。
大きさ

ミクロブラウン運動により形が常に変化するため、高分子の大きさ(分子量ではない)も変化する。高分子の大きさはある瞬間の特定の立体構造での大きさではなく、可能性のあるすべての立体構造の大きさを平均した値(高分子鎖の広がり、: average chain dimension)で評価される。高分子鎖の広がりは平均二乗両端間距離や平均二乗回転半径などで計算される。これらに加えて、分子内や溶媒との相互作用の平均力ポテンシャル、さらには排除体積効果も考慮されることがある[4]
分子量

この節は検証可能参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。出典を追加して記事の信頼性向上にご協力ください。(このテンプレートの使い方
出典検索?: "高分子" ? ニュース ・ 書籍 ・ スカラー ・ CiNii ・ J-STAGE ・ NDL ・ dlib.jp ・ ジャパンサーチ ・ TWL(2017年5月)

分子が懸濁: suspention)した状態を分散相という。このとき分子の大きさが揃っている相を単分散(単分散系、: mono-disperse system)、不揃いなものを多分散(多分散系、: poly-disperse system)という。

合成高分子の分子量は多分散を示す。つまり合成高分子は、同一の組成を持つが分子量は異なる分子の混合物であり、その分子量は通常、数平均分子量あるいは重量平均分子量で表される。分子量分布は、応用上分子量そのものと同様に重要であり、物性面では通常分子量分布が狭いことが望ましいが、加工の容易さからは分子量分布が広いことが有利になる場合も多く、分子量のみならずその分布も用途に応じて設計する必要がある。平均分子量の算出方法には分子1個あたりの平均の分子量として算出される数平均分子量や、重量に重みをつけて計算した重量平均分子量等がある。重量平均分子量と数平均分子量の比を分散比と呼び、これが1に近いほど分子量分布が狭いことを示す。

生体高分子、天然高分子には、単一の分子量からなる単分散を示すものも多い。

分子量の測定法には以下のものがある。
分子排斥クロマトグラフィー法(GPC法)
GPC(: gel permeation chromatography)法とはゲル状の粒子を充填したカラムに高分子の希薄な溶液を流し、分子の大きさによって流出するまでの時間が異なることを利用した分子量の測定法。分子の溶液中での大きさは分子量以外の要因(溶媒との相互作用の強さなど)によっても影響されること、また固定相と被測定高分子との各種の相互作用によっても保持時間は影響を受けることにより、絶対的な分子量の測定はできないが、分子量分布が容易に得られる利点がある。
粘度
高分子の溶液の粘度 η が以下のような平均分子量の関数であることを利用した測定法。この方法により求められる平均分子量を粘度平均分子量と言う。η = kMα (k および α は高分子に固有の定数)
末端基定量法
高分子の末端に何らかの官能基が存在する場合には末端基定量法を用いることが可能なことがある。例えば末端がカルボン酸の高分子であれば水酸化ナトリウムなどの塩基で中和滴定を行うことにより、存在する高分子の個数が分かる。これと全体の質量およびモノマーの分子量とから高分子一個あたりの質量、すなわち数平均分子量が分かる。また、近年ではNMRスペクトルの積分比から末端基の割合を測定することが可能である。
束一的性質を利用した方法(蒸気圧法・浸透圧法・沸点上昇法)
溶液の蒸気圧・浸透圧・沸点がそのモル濃度および質量モル濃度に依存することを利用した測定法。これらの方法により求められる平均分子量は数平均分子量である。
光散乱法
溶液中の分子に光が衝突すると光の散乱が起こり、散乱強度がその分子の質量に比例することを利用した分析法。この方法により求められる平均分子量は重量平均分子量である。
沈降速度法(超遠心法)
大きな重力場の中ではわずかな比重差でも重い粒子が沈むことを利用した分析法。非常に高速で回転する遠心分離機を用い、セル内部の分子の分布状態を光学的に検出することで分子量を測定する。この方法により求められる平均分子量は重量平均分子量である。
合成法

分子内にあらかじめ反応点を2つ以上持たせておく方法と、反応中に活性点を連鎖的に発生させる方法がある。詳細は「重合反応」を参照

連鎖重合

付加重合

ラジカル重合

カチオン重合

アニオン重合

配位重合


開環重合

ラジカル重合

カチオン重合

アニオン重合

配位重合


連鎖縮合重合


逐次重合

重縮合

重付加

付加縮合


リビング重合

高分子に関するノーベル賞

鎖状高分子化合物の研究(
ヘルマン・シュタウディンガー 、1953年)

新しい触媒を用いた重合法の開発と基礎的研究(カール・ツィーグラージュリオ・ナッタ、1963年)

高分子化学の理論、実験両面にわたる基礎研究(ポール・フローリー、1974年)

固相反応によるペプチド合成法の開発(ロバート・メリフィールド、1984年)

単純な系の秩序現象を研究するために開発された手法が、より複雑な物質、特に液晶や高分子の研究にも一般化され得ることの発見(ピエール=ジル・ド・ジェンヌ、1991年)

DNA化学での手法開発への貢献(キャリー・マリスマイケル・スミス、1993年)

導電性高分子の発見とその開発(白川英樹アラン・ヒーガーアラン・マクダイアミッド、2000年)

生体高分子の同定および構造解析のための手法の開発(ジョン・フェン田中耕一クルト・ヴュートリッヒ、2002年)

出典^ “IUPAC Gold Book, macromolecule (polymer molecule)”. IUPAC. 2017年4月16日閲覧。
^ “IUPAC Gold Book, polymer”. IUPAC. 2017年4月16日閲覧。
^ a b “ ⇒国際純正応用化学連合(IUPAC)高分子命名法委員会による高分子科学の基本的術語の用語集”. 公益社団法人高分子学会. 2017年4月17日閲覧。
^ 倉田道夫「高分子鎖の広がりと排除体積効果」『高分子』第32巻第1号、1983年、26-29頁、doi:10.1295/kobunshi.32.26。 

関連項目

重合体

スマートポリマー


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:27 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef