1962年の主演映画『三百六十五夜』は、岡田茂がなかなか芽の出ない高倉をスターにするため、江利・美空ひばり・雪村いづみの三人娘と鶴田浩二の共演で企画された作品だった[12][21][129]。岡田は江利に「亭主の高倉主演で『三百六十五夜』を撮りたい。当てて高倉に実績を残すためにも、三人娘で色どりを添えたいんだ」とオファーしたが、「いやです。わたしは仕事と私生活を混同したくないんです。亭主は亭主です。そういう映画には出たくない」と即座に断られた[12][21][129]。高倉は岡田から「おまえ、女房になめられてるじゃないか。今後ウチでは、チエミは一切つかわんからな。チエミごときになめられて、勝手なことをやられているようでは一人前になれないぞ。おまえが大スターになって見返さんと駄目だよ」と発破をかけられ、奮起を促されたという[12][21][129]。 『レイジング・ブル』のロバート・デ・ニーロを「あんな芝居はもう二度とできない。非常に大きな衝撃を受けた」と語っている。デニーロ以外ではヘンリー・フォンダやマーロン・ブランド、クリント・イーストウッド、ジャン・ギャバンを好きな俳優に挙げている。フォンダは特にジョン・フォードの監督作品が好きで、ブランドは『波止場』や著書『旅の途中で』によれば『ゴッドファーザー』も絶賛している。イーストウッドとは会ったことがあり、会話もしている。食事の芝居が絶品と言われているギャバンの作品を見て勉強したと語っている[130][131][132]。京都のいきつけのカフェに「いつも迷惑を掛けているので」とギャバンの特大ポスターをプレゼントしており、そのポスターは今も店のカウンターに貼られている[133]。 『運動靴と赤い金魚』『初恋のきた道』、『L.A.コンフィデンシャル』ではヒロインのキム・ベイシンガーの目の芝居、『モンタナの風に抱かれて』『プライベート・ライアン』を気に入っており[134]、インタビューで「映画は残る!」として「『ローマの休日』とか『アラビアのロレンス』みたいな強烈な作品に、みんながもう一回しびれるときが来るんじゃないですかね。」と発言した[135]。谷充代の著書『「高倉健」という生き方』によれば『モロッコ』『哀愁』『世界残酷物語』も評価している[136]。高平哲郎のインタビューで『ワイルドバンチ』や『ゲッタウェイ』で知られるサム・ペキンパー作品のファンであり、子供のころから映画が好きで特に洋画を見ていた、高校時代に見たジョン・ウェインの思い出に、『ロッキー』は3回見た、『スラップ・ショット』が面白い、ニューマンやスティーブ・マックイーン、ヘンリー・フォンダは好きな役者と発言。『キラー・エリート』への出演オファーがあったという[137]。マーロン・ブランド主演ベルナルド・ベルトルッチ監督によるイタリア映画の問題作『ラストタンゴ・イン・パリ』のような作品にでてもいいと発言[138]。山田宏一の高倉追悼記事によれば、『狼は天使の匂い』が大好きであり、ロバート・ライアンが演じた老ギャングのような役を演じてみたいと語っていた[139]。高倉が主演した『冬の華』には高倉が好きなアラン・ドロン主演のフランスの犯罪映画の名作『サムライ』の影響があるという[140]。 中村努の前述の『冬の華』には『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』の影響も見られるという[141]。沢木耕太郎の発言によれば高倉はジョン・フォードの『長い灰色の線』やリチャード・ギア主演の『愛と青春の旅立ち』も好き[142] で、NHKのインタビュー番組によれば笠智衆を尊敬しており、リドリー・スコットの『グラディエーター』が好きだという[143]。『網走番外地』シリーズでは、共演した由利徹[注釈 11]と高倉のコミカルなアドリブ演技がシリーズの見せ場の一つとなった。一部のマスコミからは、「高倉は“最も信頼を置く俳優”として由利を終生敬愛した」とも言われている[144]。 黒澤明は自身の「映画ベスト100」的な企画で『遙かなる山の呼び声』と『あ・うん』の2本を入れている[145]。 三島由紀夫は、高倉や鶴田浩二主演の任侠映画を好み、特に『昭和残侠伝 死んで貰います』を高評価していた[146]。三島事件当日も、事件現場となった市ヶ谷駐屯地へ向かう車内で他の「楯の会」メンバーと『唐獅子牡丹』を歌ったという[147]。 美輪明宏は『スポーツニッポン』の連載で高倉を尊敬しているという記事を書いた[148]。
敬愛している映画人や作品
高倉ファンの著名人や高倉を尊敬している役者たち