CSF内の好酸球(白血球の一種)優位が認められる場合、寄生虫が原因である可能性が考えられる。最もよくみられるのは広東住血線虫、顎口虫、住血吸虫であり、嚢虫症、トキソカラ症、アライグマ回虫症、肺吸虫症の諸症状や、さらに稀な症状、非感染性の症状が同時に認められることが多い[21]。 髄膜炎は非感染性の原因によっても発症することがある。髄膜に広がる癌(悪性または腫瘍性髄膜炎
非感染性髄膜炎
このほか、類表皮嚢胞や類皮嚢胞もクモ膜下腔に刺激性物質を放出して髄膜炎を誘発することがある[2][24]。
モラレ髄膜炎は再発を繰り返す無菌性髄膜炎の一症候で、単純ヘルペスウイルス2型が原因であると考えられている。まれに偏頭痛が髄膜炎を惹き起こすことがあるが、これは他の原因が除外されて初めて診断できるものである[2]。 髄膜は3層の膜によって構成されており、脳脊髄液と共に脳および脊髄(中枢神経系)を包み保護している。軟膜は非常に繊細な不浸透性の膜であり、細かい輪郭に沿って脳表面に密着している。クモ膜(蜘蛛の巣のような見た目に由来している)は軟膜の外側をゆるやかに覆う嚢である。クモ膜と軟膜の間にはクモ膜下腔があり、脳脊髄液で満たされている。一番外側にある硬膜は厚い丈夫な膜で、クモ膜および頭蓋骨に接している。 細菌性髄膜炎では、細菌が2つの主要な経路(血流を介する経路と、鼻腔または皮膚のいずれかと髄膜との接触による経路)のいずれかを通って髄膜に到達する。多くの場合、鼻腔等の粘膜表面に存在する微生物が血液内に侵入することが髄膜炎の引き金となる。そしてこれは、ウイルス感染によって粘膜の通常の防御機能が破壊されることが原因となることが多い。細菌は血流を介してクモ膜下腔に侵入し、脈絡叢にある血液脳関門を通過しやすくなる。B群レンサ球菌に血行性感染した新生児の25%が髄膜炎を発症するが、この現象は成人ではあまりみられなくなる[1]。留置器具や頭蓋骨骨折、クモ膜下腔につながる鼻咽頭または副鼻腔の感染が脳脊髄液の直接汚染につながることがある。時折、硬膜の先天性欠損がみられることがある[1]。 髄膜炎にみられるクモ膜下腔の大規模な炎症は細菌性感染の直接的な結果ではないが、大部分は中枢神経系への細菌の侵入に対抗する免疫反応に帰するものであると言える。脳の免疫細胞(アストロサイトおよび小膠細胞)が細菌の細胞膜の成分を検知すると、サイトカイン(他の免疫細胞を誘引し各組織に免疫応答を促すホルモン様の伝達物質)を大量に放出して応答する。血液脳関門の透過性が増し、"血管原性"脳浮腫 (血管からの血液漏出による脳の容積拡大)が生じやすくなる。また、大量の白血球がCSF内に入り、髄膜の炎症を惹き起こし"間質性"脳浮腫(間質液による脳の容積拡大)を誘発する。さらには血管壁自体も炎症を起こし(脳血管炎)、血流の減少を招いて3つ目のタイプの脳浮腫、"細胞障害性"脳浮腫を惹き起こす。この3つの脳浮腫はいずれも頭蓋内圧を上昇させる。急性の場合、これに血圧の低下が重なることが多く、血液が脳に供給されにくくなる結果、脳細胞が酸欠状態に陥ってアポトーシス(自動的な細胞死)に至る[1]。 抗生物質の投与が、始めのうち上記のプロセスを悪化させる場合があることが知られている。これは細菌破壊時に細菌細胞膜からの生成物を増加させるためである。免疫系応答を弱めるため副腎皮質ホルモンの投与等の措置を実施する場合がある[1][4]。 髄膜炎が疑われる場合、血液培養
機序
診断
急性細菌性低高PMN,
しばしば > 300/mm3
急性ウイルス性標準標準 または 高単核球,
< 300/mm3
結核性低高単核球および
PMN < 300/mm3
真菌性低高< 300/mm3
腫瘍性
単核球
血液検査および画像診断