髄膜炎
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てんかん性発作には抗てんかん薬を用いる[4]。水頭症(脳脊髄液の流出が阻害された状態)には一次的または長期的に脳室シャント等によるドレナージが必要となる場合がある[4]
細菌性髄膜炎 第三世代セファロスポリン、セフトリアキソンの構造式。細菌性髄膜炎の初期治療に推奨されている。詳細は「細菌性髄膜炎」を参照

腰椎穿刺およびCSF分析の結果が出る前であっても即座に抗生物質による経験的治療を開始するべきである。

小児の細菌性髄膜炎では、難聴を予防するためにステロイド薬のデキサメタゾンを併用することもある。

頭蓋内圧亢進症状が強い場合や、意識障害が見られる場合には、グリセリンマンニトールなど多糖類の投与で脳浮腫の改善を図る。
成人細菌性髄膜炎の経験的治療

市中発生では数年前まではアンピシリン(ビクシリン)とセフトリアキソン(ロセフィン)であったが耐性菌の増加に伴いカルバペネム系が用いられる傾向がある。この場合はカルバペネム系の単剤療法となる。

パニペネム・ベタミプロン(カルベニン)1回1g、1日4回、合計4g/day(保険適用は2g/dayまで)

メロペネム(メロペン)1回2g、1日3回、合計6g/day(保険適応は2g/dayまで)

院内発生や免疫抑制下(50歳以上やアルコール依存者)ではMRSAやリステリアもカバーするため以下の3剤併用とすることがある。なおセフトリアキソン(ロセフィン)はセファチキシム(クラフォラン)1回2g、1日4回、合計8g/day(保険適応は4g/dayまで)に変更可能である。感受性結果で仮にバンコマイシン以外に感受性がなかったとしても、バンコマイシンの単独治療は避ける事が推奨されている。

セフトリアキソン(ロセフィン)1回2g、1日2回、合計4g/day(保険適応は4g/dayまで)

バンコマイシン(バンコマイシン)1回0.5g、1日4回、合計2g/day(保険適応は2g/dayまで)

アンピシリン(ビクシリン)1回2g、1日6回、合計12g/day(保険適応は4g/dayまで)

また抗生物質投与前10?20分または同時投与でデキサメタゾンを投与することがガイドラインでは推奨されている。

デキサメサゾン(デカドロン)0.15mg/Kgで1日6回(36mg/60Kg/day)を2?4日投与

抗菌薬による細菌の融解で細菌の壁産物が放出される。これにより惹起される炎症性メディエイターによるサイトカイン、ケモカイン、酸化窒素の放出を副腎ステロイド薬が抑制することで神経障害が軽減すると考えられている。

抗菌薬の治療中止はガイドライン上は髄液所見が正常化後さらに1週間の投与をしたら終了とされている。髄液細胞50/mm3以下で血清CRP正常化で投与を中止しても再燃しないという報告もある。再発予防としては原因となった疾患(中耳炎副鼻腔炎、脊椎硬膜下膿瘍、脳室シャント、カテーテル、手術創)などを可能なかぎり治療、除去するといったことである。
ウイルス性髄膜炎

ウイルス性髄膜炎には通常補助的治療のみを行う。髄膜炎の原因となるウイルスのほとんどには特定の治療法が存在しないためである。ウイルス性髄膜炎は細菌性髄膜炎よりも良好な経過をたどる傾向にある。単純ヘルペスウイルスおよび水痘・帯状疱疹ウイルスにはアシクロビル等の抗ウイルス薬が奏効するとされているが、この治療法の有効性を個別に検討した臨床試験はない[12]。軽度のウイルス性髄膜炎は補液、安静、鎮痛剤などの保存的療法を用いて在宅療養が可能である[47]
真菌性髄膜炎

クリプトコッカス髄膜炎をはじめとする真菌性髄膜炎はアムホテリシンBフルシトシン等の抗真菌薬を高用量、長期間投与して治療する[33][48]。真菌性髄膜炎では頭蓋内圧亢進がよくみられ、頭蓋内圧を下げるために頻繁に(理想的には毎日)腰椎穿刺を実施することが望ましい[33]。腰椎ドレナージでも代用可能である[30]
予後2004年における10万人あたりの髄膜炎における障害調整生命年 [49]

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細菌性髄膜炎は治療しなければほとんどが死に至る。他方ウイルス性髄膜炎は自然に軽快する傾向があり、死亡例はほとんどない。加療した場合、細菌性髄膜炎による死亡率(死亡リスク)は患者の年齢や起炎菌に左右される。新生児の場合、細菌性髄膜炎によって20 - 30%が死亡する。それより成長した小児では死亡率が大きく下がり、約2%であるが、成人ではふたたび19 - 37%に上昇する[1][4]。死亡リスクは年齢以外にも、病原体が脳脊髄液から取り除かれるまでに要する時間[1]、全身疾患の重症度、意識レベル低下やCSF内白血球数の異常低値など、様々な因子から予測される[4]。インフルエンザ菌および髄膜炎菌による髄膜炎は、B群レンサ球菌や大腸菌群、肺炎レンサ球菌を原因とするものよりも予後が良好である[1]。成人でも髄膜炎菌性髄膜炎は肺炎球菌性よりも死亡率が低い(3 - 7%)[4]

小児の場合、神経系へのダメージによって知能低下のほか突発性難聴てんかん学習障害および行動面の困難などの障害を負う可能性があり[1]、生存者の約15%に発生する[1]。難聴には改善可能なものもある[50]。成人では、全例の66%が後遺症なく回復する。最も大きな問題は難聴 (14%に発現)および認知障害 (10%に発現)である[4]


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