髄膜炎
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ワクチン未接種時は、おたふくかぜ患者全体の15%がムンプス髄膜炎を発症していた[12]

髄膜炎菌A、C、W135およびY群に対しては髄膜炎菌ワクチンが存在する[39]。髄膜炎菌C群に対する予防接種を実施している国では、この細菌による症例数が大幅に減少している[37]。また、現在は4種を混合した4価ワクチンが存在する。ハッジ(イスラム世界におけるメッカ巡礼)に参加する際には髄膜炎菌4価ワクチン(ACW135Y)接種がビザ取得の要件とされている。[40]

一方、B群レンサ球菌ワクチンの開発は困難を極めている。これは表面蛋白質(通常ワクチン開発に使用される)から得られる免疫系からの応答が弱く、また正常なヒトの蛋白と交差反応するためである[37][39]。とはいえいくつかの国(ニュージーランドキューバノルウェーチリ)ではB群レンサ球菌の地方種に対するワクチンが開発されており、そのいくつかは予防接種計画に組み込まれ良好な成績を収めている[39]

アフリカでは最近まで、髄膜炎菌性髄膜炎の流行の予防とコントロールを早期発見とリスクのある集団を対象とした2価(A/C)または3価(A/C/W135)多糖体ワクチンの集団予防接種による緊急対応に依ってきた[41]。しかし、若年者を対象としたMenAfriVac (髄膜炎菌A群ワクチン)が効果をあげ、医療資源の限られた環境での開発協力モデルとして取り上げられている[42][43]

肺炎レンサ球菌の7種類の血清型に効果のある肺炎球菌ワクチン (PCV)のルーチン接種により、肺炎球菌性髄膜炎の発症数が著明に減少している[37][44]。23価肺炎球菌多糖体ワクチンは特定の集団(脾臓摘出術を施行した患者など)に限り投与されている(日本も承認済み)が全接種者から有意な免疫応答が得られているわけではない[44]。乳幼児(2歳未満)にはこの23価ワクチンが無効であるため、乳幼児の肺炎球菌性髄膜炎の予防には多価(最も知られているのは7価)蛋白結合肺炎球菌ワクチンが必要である(国内未承認)。7価の肺炎球菌ワクチンも、輸入ワクチンを取り扱っている医療機関において接種可能である。

小児へのBCGワクチン投与は結核性髄膜炎発症率を有意に減少させると報告されているが、成人に対する有効性には疑問があり、さらに効果の高いワクチンの開発研究が試みられている[37]
抗生物質

抗生物質による短期間の予防も、特に髄膜炎菌性髄膜炎にはひとつの手段である。髄膜炎菌性髄膜炎の場合、抗生物質による予防的治療(例:リファンピシンシプロフロキサシンセフトリアキソン等)で発症リスクを減少させることができるが、将来の感染に対する予防効果はない[26][45]。リファンピシンは投与後に抵抗性が増加することが知られており、別の抗生物質の使用が推奨されることもある。[45]

頭蓋底骨折患者に髄膜炎の予防目的で抗生物質を使用することが多いが、これが有益であるか有害であるかを判断するための科学的根拠は充分とはいえない[46]。脳脊髄液漏出の有無についても同じことがいえる[46]
治療

髄膜炎は生命にかかわる疾患であり、もし治療せず放置すれば死亡率が高く[3]、治療の遅れが転帰不良につながる[4]。そのため、検証的試験を行うと同時に広い抗菌スペクトルを有する抗生物質を用いて速やかに治療する必要がある[28]。ガイドラインでは、プライマリケアの段階で髄膜炎菌性髄膜炎が疑われる場合、病院へ搬送する前にベンジルペニシリンを投与することが推奨されている[7]低血圧ショック症状がみられる場合、点滴を行う[28]。髄膜炎は早期に重度の合併症を惹き起こすため、合併症を早急に見極め[28]、必要に応じて集中治療室に収容する[4]ことが推奨されている。

意識レベルが非常に低い場合や呼吸不全の所見がみられる場合は人工呼吸が必要である。頭蓋内圧上昇の徴候があれば、頭蓋内圧測定器によってモニタリングする。同時に脳灌流圧の最適化や頭蓋内圧を低下させるための薬品(マンニトール等)を用いたさまざまな治療が可能である[4]。てんかん性発作には抗てんかん薬を用いる[4]。水頭症(脳脊髄液の流出が阻害された状態)には一次的または長期的に脳室シャント等によるドレナージが必要となる場合がある[4]
細菌性髄膜炎 第三世代セファロスポリン、セフトリアキソンの構造式。細菌性髄膜炎の初期治療に推奨されている。詳細は「細菌性髄膜炎」を参照

腰椎穿刺およびCSF分析の結果が出る前であっても即座に抗生物質による経験的治療を開始するべきである。

小児の細菌性髄膜炎では、難聴を予防するためにステロイド薬のデキサメタゾンを併用することもある。

頭蓋内圧亢進症状が強い場合や、意識障害が見られる場合には、グリセリンマンニトールなど多糖類の投与で脳浮腫の改善を図る。


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